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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年10月26日

シアター・ドラマシティ・博報堂DYメディアパートナーズ『夜叉ヶ池』10/14-31パルコ劇場

 映画やテレビに出てらっしゃる有名スターが出演する公演です。
 三池崇史監督(演出)というと『殺し屋1』等かなり激しいバイオレンス映画を撮ってらっしゃる方で、会田誠さん(美術)というと私が超苦手な現代画家さんですので、このチケットを取るかどうかは非常に迷いました。でも結局豪華キャストに心動かされちゃったんですよね。私は松田龍平さんと松雪泰子さんが観たくてチケットGETしました。

 で、拝見したのですが・・・うーん・・・・。つまらなかったですね。脚色が長塚圭史さん(阿佐ヶ谷スパイダース)なので、アサスパ風の軽快なセリフのキャッチボールや、スカっとする笑いが来るはずだと期待しちゃうんですが、全然来ないし・・・。見せ場がしっかりと組み込まれている脚本なのがよ~くわかるので、体現できていないのが寂しかったです。
 役者さんが下手だと言ってしまえばそれまでなんですが・・・。基本的な演技のバリエーションが少ないと思うんです。また、役者さん同士が舞台上であまりコミュニケーションしていません。

 オープニングとラストシーンの感覚は映画の人ならではだなぁと思いました。なんとな~くポツポツと始まって、知らないうちに盛り上がっていき、なんとな~く意味ありげなシーンで終わります。映像だったらかっこいいかもしれません。
 お芝居にルールがあるわけではないんだけど、必勝ポイントというのはどんな世界にもあるもので、それを押さえていないのが痛かったんじゃないかしら。ひやっとしていて硬質な空気があったのは良かったと思います。

 美術(会田誠)はすごくシンプルだったのでホッとしました。予想に反してこの作品で私が一番楽しんだのは美術だったように思います。舞台のど真ん中に白い流線を数本重ねて描かれただけの細い川があります。下手に鐘楼(しょうろう)、上手に鐘楼守(武田真治)の家があり、ステージは下手奥が一番高く、上手手前が一番低くなっているツルっとした八百屋舞台で、特に派手な舞台転換はありません。
 上手奥から流れてくる川が、舞台へと続く花道のような役割を果たしていました。ステージは舞台面(つら)から舞台中ほどまでの大きさなので、中ほどから上手奥までは、手すりのないキャットウォークのような道(川)が空中に浮かんでいるように見えます。真っ黒い空間の中に細い坂道が灯っているのです。これがきれいでした。役者さんが横に落ちちゃわないかしら?と心配にもなりましたが、それくらいの危うさが良かったと思います。

 衣装(堂本教子)はお魚の世界の赤いドレスが豪華で美しかったです。それを男性が着ているのもいいですね。松雪さんは白いドレス(前半では黒いベストあり)がすごくお似合いでした。

 泉鏡花の作品というと私は『婦系図(おんなけいず)』と『天守物語』を拝見したことがあります。『夜叉ケ池』って素敵な作品ですね(あらすじは こちら )。池の主の恋心とかすごく可愛いし。まだどこかで上演されることがあったらぜひ観たいと思いました。最近、花組芝居でも『夜叉ケ池』ありましたね。私は行けなかったんですが。

 キャストでは松雪泰子さん(池の主・白雪姫役)が一番がんばってらした感がありました。走り回って大きな身振りで激しい感情を表現されていて好感が持てました。夜叉ヶ池から流れてくる川の上流から静かに降りて来る姿は美しかった。
 武田真治さん。鐘楼守の萩原役。言葉がはっきり聞こえてくるのは良かったんですが、ご自分の中で処理しちゃってる感じでした。妻をいけにえにされそうになって激昂し、カマを振り回していても、なんだか小っちゃい。
 松田龍平さん。萩原の友人・山沢役。セリフの語尾が必ず息声になってしまっていて残念。でも、初めに登場してきた時の存在感がすごかったし、静かに立っている姿はやっぱりかっこいい。
 田畑智子さん。萩原の妻・百合役。NHK大河ドラマ『新撰組!』で近藤勇の妻役の方です。カワイコちゃんですからね、どーしょーもにゃーです。
 丹波哲郎さんが、死んでしまう鐘楼守のおじいさん役と魚の世界の乳母役の2役を演じられていましたが、乳母役では座って脚本を朗読し続ける状態でした。これには驚いた(笑)。「出ていることに価値がある」のでしょう。

 開演前に劇場に入って驚いたのは、ロビーにお花が全然なかったことです。もう公演も終盤だからかなと思ったのですが、それにしても贈った方々のお名前の札が展示されていません。帰りに意味がわかりました。おそらくですが、あの水槽を見せるためだったのではないでしょうか。終演後、パルコ劇場の入り口付近ロビーの、いつもは物販をしている所に、巨大な水槽が置かれていたんです。水槽の中には物語の中で沈んだ鐘と少年、少女の石像(素材は石じゃないと思います)が入っていました。
 そういえば公演HPにも「劇場空間に一歩入った瞬間から物語がはじまる」って書いてありますね。うーん・・・そこまでではありませんでしたね。だって皆さん、下に降りるエレベーターに早く乗りたい一心で、水槽があることにさえ気づかないご様子でしたから。でも私はこういうアイデアは大好きです。またどこか個性的な会場でやってもらえたらなぁと思います。 
 
演出:三池崇史 脚色:長塚圭史 美術:会田誠(原作:泉鏡花「夜叉ケ池」より)
出演: 武田真治×田畑智子×松田龍平/松雪泰子 遠藤憲一 きたろう 綱島郷太郎 涼平 鈴木ユウジ 森川涼 蛭子直和 萩原聖人 丹波哲郎
ビジュアルスーパーバイザー:堀尾幸男 照明:小川幾雄 衣裳:堂本教子 音楽:遠藤浩二 音響:長野朋美 ビューティー・ディレクター:柘植伊佐夫 舞台監督:矢野森一 企画・製作:シアター・ドラマシティ 博報堂DYメディアパートナーズ
パルコ劇場『夜叉ケ池』公式サイト:http://www.parco-city.co.jp/play/yashagaike/

Posted by shinobu at 2004年10月26日 17:37 | TrackBack (1)