石田ゆり子さんと成宮寛貴くんが共演するちょっとエッチでせつないラブ・ストーリー。予想をはるかに上回る良作でした!お時間のある方はぜひ!当日券も毎公演あるようです!
でも、座席によってかなりの温度差があると思います。なんと私、最前列中央の席だったんです・・・!成宮くんのおっかけファンですか?!と言わんばかりですよっ(笑)。本当にありがたいお席でした。かぶりつきで演技も美術も堪能いたしました。
アメリカ人男性カール(成宮寛貴)が、15才の時の悲しい恋の思い出を語る追想劇。父親の仕事でアメリカからフランスに移り住んできたカールはアメリカンスクールに通い始め、そこで文学教師のマダム・メルヴィル(名前はクローディー)に出会う。美しくて知的な大人の女性クローディーに、思春期のカールはどんどん惹かれ、クローディーもまた若くて聡明なカールに魅せられる。
ここから、読んでから観に行っても支障はない程度に、ネタバレします。
15歳の少年と女教師が「一夜をともに」してしまう状況が、とてもリアルで良かったです。少年:「帰らなきゃ、だけど、まだ帰りたくない」、女教師:「とにかく今日は誰かにそばに居てほしい」というのが重なっちゃったんですよね。ドキドキの夜をすごした翌日は、そのままルーブル美術館にデートなんて・・・理想ですよっ、理想!「私も連れてって!」って思っちゃったよ!!あ、違うか、連れて行かなきゃダメなのね、この場合(笑)。
文学教師のクローディーは小説、戯曲、絵画、音楽等について博識ですので、カールの質問にどんどん答えてくれます。その、クローディーとカールの会話のキャッチボールがすごく面白いんです。ホメーロスの詩とか、ボナールの絵画とか、ビスコンティの映画とか・・・アート知識のシャワーを浴びているような感覚!そういえば開幕の第一声はカールが朗読するシェイクスピア『夏の夜の夢』のパックのセリフでしたね。
でも、なぜクローディーはカールを家に帰さなかったんでしょう・・・疑問です。親に嘘をついてまでも彼を引き止める必要はあったでしょうか?別にその日で2人はお別れというわけじゃなかったですし、第一、クローディーは教師ですから、こんなことがバレたらクビになるかもしれないですよね。そんなリスクを負ってまでも彼と一緒にいたいと思っているようには見えませんでした。でもそのシーンだけですね、納得できなかったのは。後はずっと楽しく、微笑ましく観ていられました。
美術(松井るみ)と衣裳(関けいこ)が素晴らしいです。フランス人女教師のクローディーの部屋が舞台で、何から何までリアルに作られています。スフィアメックスであんなリアルな装置は初めて見ました。シーツの柄がすごく派手で、しかも全然違う種類の布をソファー・カバーとして何枚も重ねているのも素敵。1960年代のフレンチ・スタイルのお洋服は色鮮やかで乙女チックで、やはり基本的にエレガント。ルーブル美術館デートの時のクローディーのお洋服の可愛らしいことったら!欲しい!可愛すぎて着られないけど!!
音楽および音響(井上正弘)が非常に凝っていて、演技とぴったりでした。選曲が素晴らしくて、音楽だけに聞きほれることもしばしば。レコードの音や街の喧騒など室内外の音がアパートの部屋を適度に満たし、BGMに収まらない存在感でした。
ここから更にネタバレします。観に行かれる方はお読みにならない方がいいです。
2人が密会していたことがカールの父親にバレて、カールはアメリカのおばさんの家に無理やり預けられることになります。最後の最後にカールがクローディーの部屋を訪れるシーンで、鈴木裕美さんの演出が冴えました。オペラ『魔笛』のパパゲーナ&パパゲーノの歌を静かに聞き入る2人は美しかったです。あのシーンで2人が本当に愛し合っていることがわかりました。
クローディーが彼を置いて去った直後、彼女がその数年後にガンで死ぬということをカールが独白で観客に告げます。そして「もう一度、最後の彼女を見てもいいですか?」と言うと、なんとクローディーがまた部屋に戻ってきて、さきほど見せた「カールを置いて去っていく」演技をそのまま繰り返すんです。それを見つめるカールはさっきに増してボロボロ涙を流します。いや~・・・これには泣かされました、これはきっと脚本でしょうね。う~ん、思いっきりストレートでベタなのに、ヤラれちゃいました(苦笑)。
成宮くんのことは『浪人街』で拝見したのが最近で、蜷川さん演出の『お気に召すまま』は見逃しています。実は宮本亜門さん演出の『滅びかけた人類、その愛の本質とは・・・』に出演されていたんですね。懐かしいなぁ。あの時は増沢望さんのかっこ良さにしびれてたんで(笑)、成宮くんのことは全然覚えてないんですよね、残念ながら。
で、今回。彼が初めて登場した時は・・・はっきり言って怖かったです。だって照明が顔を真上から照らすので、目がギラギラしたガイコツみたい・・・(ごめんなさい)。あぁ、このお顔は私の好みじゃないわぁっ!というところから始まってしまいました。でも、そこからすぐに始まった成宮くんの独白で、完全に心奪われてしまったのです。演技がすごく上手いっ!『浪人街』でのお子ちゃま振りは一体どこへ??観客に向かって告白するようにしゃべる時に、照れ笑いとか自分で思い出すようにボソっと話したりするのを挟むのですが、それもすごく自然なんです。フランス語でホメーロスの詩の暗唱をされたのも素晴らしかったですね。
ミニスカートからあらわに伸びたクローディーの足に生唾ゴックンのお顔や、「子供だからわからない」時のあどけない、少し心細そうなお顔など、ものすごく生き生きしていました。思春期の少年の無垢で開かれた心が、無理なく全身で表されていました。相当深く役作りされていると思います。
石田ゆり子さん。美しい方だなぁと思います。色白で声もきれいです。きっと礼儀正しくて親切な方なんだろうなぁ。なので、この役にはちょっと合わないと思いました。「カーマ・スートラ(古代インドの“愛の辞典”)」を参照してセックスの体位をふざけて試してみるとか、クローディーはフランス人女性らしい人ですよね、日本人女性にしてはちょっと破天荒すぎます(笑)。基本的にわがままなんですよ。数学教師ポールとの不倫が続いていて、彼にあてつけするように衝動的にカールと関係を持ってしまったわけだし(最後はカールを本当に愛していたと思いますが)、そういう自由気ままで闊達な感じが、石田ゆり子さんからは感じられませんでした。何をしても上品で優雅だったのはさすがだと思います。
うーん・・・成宮くんがうますぎたから石田さんの緩さが見えてしまったのかも。自分をさらけ出せてないし、言葉が完全に自分のものになっていないのが、あらわになってしまいました。成宮くんがそれを出来てたんですよね。驚きました。そういえば彼の長い独白の時、蜷川芝居の色香を感じられた瞬間があったんです。蜷川さんとのお仕事ですごく成長されたのかもしれませんね。
村岡希美さん。クローディーの隣に住むアメリカ人女性ルース。気性の激しい役でしたね。確実に大爆笑を生み出していました。紫色の服、ちょー可愛いかった。
※パンフレットが1500円と非常に高いのですが、とても充実したものでした。松井るみさんによる舞台模型の写真もありますし、役者とスタッフのインタビューもたっぷり。中でもクローディーの部屋にある本や美術書、レコードについての解説はうれしいです。読めば作品をさらに楽しめます。マコーレー・カルキンのカール役、めちゃくちゃ観たいなぁ!
※毎公演、当日券を販売する予定あり(私が観に行った回は、開演直前でも残席ありでした)。各公演の前日朝10:00より予約を受付けし、当日公演会場にて代金支払い。予約→チケットスペース 03-3234-9999
11月17日@大阪ドラマシティ、11月25日・@名古屋市民会館
出演:石田ゆり子 成宮寛貴 村岡希美 五森大輔
作:リチャード・ネルソン 演出:鈴木裕美 脚本:鈴木早苗/翻訳:吉岡裕一 美術:松井るみ 照明:吉岡ひろ子 衣裳:関けいこ 音響:井上正弘 ヘアメイク:川端富生 演出助手:森さゆ里 振付指導:奥山桃子 舞台監督:二瓶剛雄 小澤久明 演出部:田中絵里子 大道具:C-COM 小道具:高津映画装飾 舞台製作:加賀谷吉之助 プロデューサー 江口剛史 版権コーディネイター:マーチン・R,P・ネイラー 主催・制作:テレビ朝日・シーエイティプロデュース
チケットスペース内:http://www.ints.co.jp/melville/madamemelville.htm