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しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年11月30日

青年座 下北沢5劇場同時公演『空』11/25-12/05本多劇場

 作:福島三郎&演出:宮田慶子の必見コンビ作品。
 メルマガ号外を出しました♪12/5(日)の昼公演で千秋楽です。どうぞお見逃しなく。
 【チケット予約・お問い合わせ】
  →劇団青年座 03-5478-8571

 下北沢の駅近くの5つの劇場すべてにおいて青年座の演劇が上演されているって、ものすごいことだと思います。下北沢がひとつの家のようなイメージ。幸せだな~。

 2054年の春から冬への四季が、それぞれ第1幕、第2幕となる4幕劇です。舞台の設定を聞いた時はなんだか暗そうだな~と思っていたのですが、蓋を開けてみると笑いが沢山の近未来SFメルヘンでした。
 大人の大らかさと優しい笑いで観客を包み込んでくれますが、実は作品自体のテーマから何から全部が社会風刺となっています。

 日本政府は日本中のホームレスをすべて社会復帰させたのだが、そこからも脱落していく人々がいた。彼らはライフ・ドロッパーと呼ばれ、多くは政府の手が及ばない地下に潜って生活をし始めた。
 舞台は東京の地下の元・永田町駅。住み着いているのは女ばかり十数人のライフ・ドロッパーたち。約50年にわたって老いも若きも互いにいたわりあい、平和に暮らしてきたが、ある日、ボランティアだと名乗る若い女がやってきて、彼女らの生活に異変が起こり始める・・・。

 暗くて、小難しくて、殺伐としていて、グロテスクな作風が多くなっている今の演劇界で、ストレートな愛情が溢れる脚本を、非常にわかりやすい演出で上演すること自体に、福島さんと宮田さんの意志を感じずにはいられません。

 うまくいき過ぎだと感じる展開や、やや予定調和かと感じる対話シーンがありますが、そのような誰もが容易に理解できる物語の中から、福島さんの切なる憂国の心が伝わってきます。宮田さんは、天まで続く長~い階段を一段ずつ確実に踏みしめて、めげずに上っていくような、根気のあるきめ細やかな演出をされます。ひょっとすると軽く受け止められそうなお話が、宮田さんの力で、嘘臭くない、一本筋の通ったコメディーになっていました。

 私達は「好き」「愛してる」「気持ちいい」など、心をそのままに表す言葉をなかなか話さないようになっています。この作品では、聞いている方が照れくさくなるぐらいに率直で優しいセリフがいっぱいでした。舞台の登場人物(特にライフ・ドロッパー役)が余計なものを加えず、かといって何も省くことなく、心そのままの言葉を語ることが、観客の心を癒してくれます。

 私が最近観た『ピローマン』『イケニエの人』『喪服の似合うエレクトラ』は皆、“家族および身近な人々の間の不信(裏切り)”を描いています。上述の作品とは作風が違いますが、この作品でもテーマは同じでした。演劇は世相を敏感に反映しますよね。勇気を出して、心のままの言葉を口にしたいと思いました。なかなか難しいかもしれませんが、それが平和への一歩のような気がします。

 ここからネタバレします。

 仲間を確認するための合言葉が「空」→「見たことない」から「空」→「見てみたい」に変わったことで、ライフドロッパーたちの心の変化を表したのは、見事な仕掛けだと思いました。このセリフ、実はちょっとダサイというか、あからさますぎて照れちゃう展開になりかねないですよね。でもじーんとしたんですよね~。他にもそんなシーンが沢山ありました。脚本はもちろん、演技と演出の力でしょう。

 青年座の女優の演技合戦を堪能いたしました。役者さん一人一人が、自分の演じるキャラクターをきちんと自分で解釈し、作り出していることがわかりました。ダッシュ役の緒方淑子さんだけちょっぴりおぼつかなかったかな。

 一歩も外(上)に出たことがなく、両親のことも知らず、男にも出会ったことがないという人物を演じるのは大変なことです。その役のリアリティを求めるのはヤボなことで、役の心を伝えることができれば、それがリアルなのだと思います。総理大臣キヨ役の高畑淳子さんとオトメ役の増子倭文江さんがその役でしたが、お二人とも文句なしでした。

 佐野美幸さん。ボランティア団体「神様のちょっかい」のメンバー役。レースふりふりのぶりっこルックが超ウザくて最高(笑)。くせになるキャラクターで、会場中を虜にしてらっしゃいました。

 ロボットの“スズキ”はキュートでしたね。あれはリモコンで動くラジコンカーが仕込まれているのかな?首はどうやって動いているんでしょう?

 青年座HPのキャスト一覧に出演者のトリビア情報が載っていて、こまめに読むと結構面白いです。女医役の五味多恵子さんが「52歳の今、人生で初めての婚約中」というのが素敵!

出演:高畑淳子 長谷川稀世 増子倭文江 小林さやか 椿真由美 松乃薫 五味多恵子 緒方淑子 片岡富枝 佐野美幸 那須佐代子 津田真澄
作:福島三郎 演出:宮田慶子 装置:加藤ちか 照明:中川隆一 音楽:いがり大志 音響:高橋巌 衣裳:前田文子 舞台監督:福田智之 製作:紫雲幸一
青年座:http://www.seinenza.com/

Posted by shinobu at 23:22 | TrackBack

2004年11月28日

SePT独舞vol.12『白井剛ソロダンス「質量, slide , & .」』11/26-28シアタートラム

 白井剛(しらい・つよし)さんは、Study of Live works 発条ト(バネト)というダンスグループでも活動している振付家・ダンサーです。何度かイベントで拝見して、その度に素敵だなーと思っていました。
 今回は1時間強のダンス・パフォーマンスで、最初はとっつきにくかったのですが、徐々に引き込まれていって、終わったときはすごく感動していました。
 11/28(日)の15:30の回で千秋楽です。残席あるそうですので、お時間のある方はぜひ!ルックスも非常に美しい若い男性ですので、女性は特に必見かも(笑)。

 タイトルが「質量, slide , & .」ということで、モノの重さ、およびそのモノ自体、モノと自己との係わり合い、そしてその後に見える何か・・・が表現されました。

 ここからネタバレします。

 しょっぱなに突然、背中から床にバタっ!っと倒れたのには驚きました。あんなに普通に人が倒れるの、初めて見た(笑)。歩いたり座ったりしゃがんだり、普通の動きが多い前半はちょっとわかりづらかったですが、まずは白井さんに重さがあるってこと、つまり白井さんが目の前に存在しているということを表現しているのかなと思いました。

 キューピー人形を取り出して天秤ばかりで重さを量り始めてからは、単に面白くって引き込まれました。他にも分銅を使ってティーカップ&ソーサー、財布、お金、ボーリングの玉などを量り、最後には片方にボーリング、もう片方に白井さんの頭を乗せました。白井さん以外の全てのモノにも重さがあることがそこで分かり、さらにそのモノたちを舞台上に並べて置くことで、世界中のモノや人、動物や植物などの全ての存在が、私(観客)と同様に確かに存在していることがわかりました。

 一番の目玉は角砂糖の映像だったと思います。白井さんが白い角砂糖に紅茶(おそらく紅茶。もしかするとコーヒー)を数滴したたらせるのですが、その角砂糖の様子をビデオカメラで撮影して、木製の大きな壁のようなオブジェに映写するのです。紅茶をかけられた角砂糖は一瞬にして紅茶色に染まり、少しずつ溶け出して、形が崩れていきます。ヒトがモノに影響を与えて、モノが変化したのです。そこに確かな関係が存在したことを舞台上の白井さんと客席の観客が同時に目撃しました。次には映像が逆送りされて、茶色いベタっとした物体がむくむくと四角いビルのように育っていく様子が映し出されます。紅茶と角砂糖が力をあわせてきれいな立体に育っていくように思えました。次はまた角砂糖がくずれていく様子が早送りで映し出されます。その繰り返しを見たことで、角砂糖と紅茶、白井さん、そして観客が、劇場内でそれぞれに確かに存在することと、それらが互いに関係し、影響しあっていることを実感できました。

 すっかり白井さんと意気投合した(気持ちになった)私は、激しく踊る白井さんを眺めながら、まるで自分の姿を見ているような気持ちになってきました。重力に引っ張られてステージの板から逃れられない様子、壁にぶつかって跳ね返る動作は、地球の上のこの社会での我々人間の様子を表しているようです。誰も皆、どんな瞬間も体中で何か・誰かと関係しあって存在してるのです。そして白井さんは徐々に舞台中央の一箇所に留まって踊るようになります。あらゆるモノとぶつかり、反応しあって、とどのつまりはただ一つの場所、つまり自分に帰っていくのです。この宇宙に確かに存在する「ひとつ」になった白井さんは、最後の暗転の後の白いフラッシュで美しい残像となり、私の心と体に刻まれました。

 照明と音楽とダンスが、まるで楽しくおしゃべりをし合っているようにコラボレートしている作品だったと思います。もちろん舞台上にあったオブジェや小道具も、すべてが同等の価値(質量)で作品世界を作り上げていました。

 三夜連続のポストトークで、本日は伊藤キムさんでした。白井さんは大学2年生の頃(1996年)に“伊藤キム+輝く未来”にダンサーとして参加されていたので、キムさんとは親しいのですね。キムさんの今作品についての感想は、まず「かっこいい」でした。私もそう思いました。ルックスが良いのもあるかもしれませんが、それよりもダンサーとしての在り方(スタイル)がかっこ良いと感じました。
 キムさんが『あなた』(白井さんが初めて出演した輝く未来の公演)の終演後の飲み会で、白井さんに「お前は俺よりも上手くなる」と言っていたそうで(白井さんは冗談だと思っていたらしい)、まさに今、そうなりつつあるということがわかるパフォーマンスだったそうです。キムさんって衝撃的に謙虚で正直な方ですね。それにも感動しました。

 来年6月にはキムさんと白井さんのデュオ公演が世田谷パブリックシアターで上演されるとの告知がありました。演目は三島由紀夫の「禁色(きんじき)」。必見ですね。

構成・演出・振付・出演:白井剛
音楽:イノウエユウジ a.k.a Dill 照明:関口祐二 森規幸(balance, inc. DESIGN) 音響:伊東尚司 衣裳:笹嶋麻由(CLOCKWORKs) 映像操作:佐藤美紀 舞台監督:遠藤幸男 宣伝美術:清水俊洋 制作:Study of Live works 発条ト クリエーション・マネジャー:村上克之 プロダクション・マネージャー:根木山恒平
主催:Study of Live works 発条ト 提携:世田谷パブリックシアター 制作協力:ハイウッド
世田谷パブリックシアター内:http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/jouhou/04-2-4-46.html

Posted by shinobu at 02:06 | TrackBack

2004年11月27日

松尾スズキ作・演出ミュージカル『キレイ』キャスト募集

 「2000年6月、ミュージカル界に巨大な一石を投じた「キレイ」が待望の再演決定!!」
 募集要項はこちらをご覧ください。

 最低限必要な情報を下記に貼り付けました。

<活動内容>
 【7月】東京 Bunkamuraシアターコクーン
 【8月上旬~中旬】大阪 MBS劇場 
 Bunkamura製作 松尾スズキ作・演出ミュージカル「キレイ」に出演

<応募資格>
 ①高校卒業以上
 ②2005年5月下旬~6月末稽古、7~8月中旬公演に参加可能な事

<応募締切>
 2005年3月25日(金)必着。
 書類審査の上、4月5日(火)迄に結果を郵送いたします。
 ※どんな書類が必要なのかは募集要項をお確かめください。

<1次審査>
 2005年4月中旬 東京都内(詳細は書類審査通過者に郵送します)
 審査内容:ダンス(動き)、歌唱、演技

<2次審査(最終審査)>
 1次審査後にご連絡します。

<お問合せ>
 Bunkamura「キレイ」係
 TEL 03-3477-3244(10:00~19:00)

Posted by shinobu at 17:10 | TrackBack

大人計画『イケニエの人』11/11-12/05世田谷パブリックシアター

20041126 ikenie-no-hito.gif
画像元はこちら

 鬼才・松尾スズキさん率いる劇団・大人計画の3年半ぶりの新作本公演です。阿部サダヲさんも宮藤官九郎さんも出演されてます。
 チラシからもわかるように今回の主役は皆川猿時さんでした。まあ、誰が主役でもあまり関係ないかもしれないですけど。とにかく大人計画のメンバー勢ぞろいの舞台というだけで嬉しいですよね。

 舞台は緑色の温泉が出ることが売りの温泉旅館。すぐ隣りにスペースシャトルの発射台が出来ることになり、その建設工事が始まってから、名物の温泉が出なくなってしまった。そのことも原因で経営不振になったため、旅館はバビロン(?)という巨大レストランチェーン会社に乗っとられてしまう。
 旅館の従業員は、新たにバビロンの研修を受けることになった。その厳しい研修には、色んなトラブルをわざと起こす“バスター”と呼ばれるニセの研修員が紛れ込んでおり、バスターを見つけたものが支店長になれるというルールもあった。

 荒唐無稽な設定で、出てくるのは奇想天外な人物ばかり。次の展開が非常に予想しづらいストーリーです。エロティックでサディスティックなネタを簡単にやってのける大人計画の役者さんは、いつもながら魅力的なのですが、早口すぎてセリフが聞こえないことが多かったですね。
 回想シーンや同時進行する複数シーンなど、構成が複雑でわかりづらかったからなのか、それとも単なるパワー不足なのか、『エロスの果て』『業音』などと比較すると全体的に凄みに欠けました。

 役者さんがきわどいネタをやりながら、あたふた動いているのを眺めている内に、サラっと終わってしまいました。観た後でよ~く考えたら作品に込められた意味がわかるかも・・・という程度です。今、レビューを書きながらやっと少し気づいてきました。

 ここからネタバレします。

 現代の病的な事件は、その主たる原因や犯人の動機があまりに不謹慎なため、発覚した時は異常なほど大きく取りざたされるのですが、その後すぐに起こる同様の事件によって、すばやく姿を消していっています。
 ここでは乙骨(オツコツ:皆川猿時)という男が、遺跡発掘現場に違う遺跡の出土品を埋めて新発見だと偽った事件と、温泉に入浴剤を入れて緑色の湯を作り出した事件の犯人だという設定でした。

 最近、モーニング娘。のサインを真似して写真に書いてブロマイドを作り、それをネット販売して稼いだお金でモーニング娘。のコンサートに行っていたという女子中学生が捕まりましたね。彼女達は警察の取調べの時に「やってみたら結構簡単だった」と言っていたそうです。私が中学生だった時代はこういうことは考えられませんでした。

 この10年弱のまたたく間に、大人も子供も誰もがありとあらゆる情報を手に入れ、また自ら発信することのできるインターネット社会になりました。私達は、TVやPCのディスプレイから毎日、毎秒あふれ出す情報の中に自分の情報が見つけられなかった時、自己の存在が希薄になってきているように感じるのではないでしょうか。その影響で、「常識的にはこうでなければならない」「世間ではこれが当たり前だから」という自分の外側を満たそうとする欲求と、「私はこれがしたい」「誰にも邪魔されたくない」という自分の内側を満たそうとする欲求の両方が、昔より強くなっているのではないかと思います。

 最近すごく便利だと思ったのは、新潟中越地震のための義援金を振り込むことがとても簡単だったことです。反対に、私達の善意がチェーンメールという巨大な暴力になることもあります。モーニング娘。ファンの女学生たちも「(ブロマイドを買った)皆んながすごく喜んでくれた」と思って、続けてしまったのではないでしょうか。
 ドキュメンタリー映像を撮る女、日鰯(田村たがめ)は、良かれと思ってやったことが、とんでもない事件になってしまった頭の弱い男、乙骨(皆川猿時)の“笑顔”を追いかけています。彼はまさに私達のことです。望めば何でも知ることができる世界において、反対に大切なことが何もわからなくなった私達は、自らの善行が悪行となっていることに気づかずニヤニヤと笑っています。彼こそがモラルが欠如しているこの世界の、我々の代わりのイケニエなのではないでしょうか。

 現代に入ってがん患者が増え続けていますが、環境汚染や生活習慣の変化が影響していることは明らかです。乳がんで若くして乳房を失った日鰯(田村たがめ)も、私達がともに暮すこの世界のイケニエと言えるでしょう。

 ラストシーンでは、「何の肉だかわからないけど」と言いながら冷蔵庫に入ってた肉を焼いて食べます。これも端的に今の世界を現していますよね。スーパーで売っている子持ちシシャモって、実はシシャモじゃないことがあるらしいですよ。

 『ドライブイン カリフォルニア』でも鮮やかでしたが、今回もオープニングがかっこよかったです。暗転して光がつくと突然、舞台中央にいる女装をした宮藤官九郎さんのお腹から、真っ赤なテープが5本、放射線状にまっすぐ天井に向かってシューーーッ!と伸びていくのです。宮藤さんが「ぎゃー」と叫び声を挙げているので、お腹から血が吹き出ている様子を表しているとわかり、びっくりします。でもその後すぐに、血まみれのナイフを持って、顔も血だらけになった阿部サダヲさんが「血のりだ」と言ってしまうので、「あれ?嘘なんだ(笑)」と安堵して笑えました。まあ、嘘なのか本当なのかよくわからなかったんですが、強烈なインパクトでした。

 田村たがめさん。ドキュメンタリー映像を撮る女役。どアップでスクリーンに映るお顔がとても可愛らしかったです。

(東京公演→大阪)
[作・演出・出演]松尾スズキ
[出演] 阿部サダヲ/宮藤官九郎/池津祥子/伊勢志摩/顔田顔彦/宍戸美和公/猫背椿/宮崎吐夢/皆川猿時/村杉蝉之介/田村たがめ/荒川良々/近藤公園/平岩紙
舞台監督:青木義博 照明:佐藤啓 音響:藤田赤目 舞台美術:加藤ちか 衣裳:戸田京子 写真撮影:田中亜紀 宣伝美術:吉澤正美 演出助手:大堀光威 佐藤涼子 衣裳助手:伊澤潤子 梅田和加子 制作助手:河端ナツキ 北條智子 制作:長坂まき子 企画製作:大人計画、(有)モチロン
大人計画:http://www9.big.or.jp/~otona/
世田谷パブリックシアター内:http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/jouhou/04-2-4-45.html

Posted by shinobu at 15:49 | TrackBack

2004年11月26日

ジンガロ「11/26(金)朝日新聞朝刊 全面広告」

 騎馬オペラ「ジンガロ」とうとう明日11/27(土)10:00より一般発売開始です!

 先行予約では高額にもかかわらずプレミアムシート(24000円)が一番人気。やはり間近で観たいと思われる方が多いんですね。

 さて、11/26の朝日新聞朝刊に「ジンガロ」の全面広告が出ました。「ジンガロ」について、各界著名人からのコメントが掲載されておりますので、こちらにもご紹介いたします。

【宇津井健さん(俳優)】
サーカスの曲乗りしか知らなかった我々の目に、バルタバスが創り上げた『ジンガロ』は驚異的に映りました。馬をあやつる技術もすごいのですが、それ以上に馬と人の一対一の関わりを、あれほどにも美しく見事に芸術の域にまで高めている。かねがね乗り手も、そして見る人も楽しめる乗馬があればいいのにと思っていたんですが、『ジンガロ』を観た瞬間に、これだっと思いました。『ジンガロ』一座の皆さんの素晴しい技術と表現力は圧巻です。


【小林薫さん(俳優)】
数年前、ベルギーで『ジンガロ』を観た。街外れの森の中にミステリアスに張られたテント。パーキングエリアから点々とたいまつの灯をたどるエントランス。幻想的な演目。バルタバスの演出の巧みさに感心しつつ、少しだけ嫉妬した。来日公演では、演目も新しいと聞く。東京という大都会で、バルタバスがいったいどんな新しい演出を見せるのか。今から楽しみなのである。


【宮本亜門さん(演出家)】
あのピーター・ブルックが、あのピナ・バウシュが、そしてスティーブン・ソンドハイムが愛してやまないジンガロとは?私が初めてみたのは5年前だった。その馬と人との見事な調和に、私は美しさを越えて戦慄さえ覚えた。それは全く詩的であり、実にスピリチュアルな体験だった。ジンガロはフランスという国でしか生まれない、人類史の中の貴重な芸術の輝きと言えるだろう。


【緒形拳さん(俳優)】
パリの郊外にジンガロと呼ばれる馬の一座がいた。馬の劇場があり、馬の住居があり、人間と馬が共調して艶やかな時間を過ごしていた。表情豊かに風に舞い、靜止して彫刻になる。みごとな馬達のみごとな藝、至福の時を過ごした。


【武豊さん(JRA騎手)】
あの『ジンガロ』の来日公演が実現するとお聞きし、僕も今から大変楽しみにしています。


【山本容子さん(銅版画家)】
サーカスではないなと思う。人馬、馬人、人と馬、馬と人。土をかく蹄の音とチベット僧の声は、テントの中の通底音となり、チベットカラーの衣装や美術は、人と馬を異形の神々に変化させるだろう。これはコンサートでも演劇でもないなと想像する。アポロン、エロス、パン、ヘラそしてゼウスなどギリシアの神々の名前を持った馬が二十五頭、そして二十五名の人々の愛ある関係を体験したい。恋焦がれていた『ジンガロ』と日本で会える幸せに感謝している。


【小沢昭一さん(俳優)】
フランスで、ジンガロの第一公演を観た時の感動は忘れられません。興奮して眠れなかったとは私としては珍しいこと。それは何と言ったらいいか、一種、哲学的な感動で、深い思索を強いられました。主催者バルタバスの創り出す、あの魔術的な幻想の世界が、日本でやっと観られるのです。ありがたい。こればっかりは自信を持ってご観覧、お薦めいたします。


【檀ふみさん(女優)】
バルタバスが手綱を引いている気配はないのに、馬たちがぴったりと彼に寄り添って踊る様子は神聖にすら感じられた。狭い舞台の上を馬が疾走する。風を巻き起こす。その風を感じて、私の中の太古の記憶みたいなものも、ザワザワと音をたてていた。馬が天才なのか、人間が天才なのか。ジンガロには百の言葉をもってしても語り尽くせない何かがある。


【岸谷五朗さん(俳優)】
優れたエンターテイメントショウは、その発想力にある。そして虚構に近いその無理を具現化する挑戦者という無鉄砲な演者が存在する。
ジンガロの凄さは、そこにある。まず優れた発想、それを実現するための過酷な稽古、そして、そのショウの手段に甘えない各々の作品へのこだわりと独創性。己を極限に追い詰めた、甘えの無い作品創りが世界を納得させたのです。
劇団員に馬がいるんですよー。個性溢れる、わがまま男優女優だけでも大変なのに主演が…馬…。
オソレイリマシタ!


【長友啓典さん(アートディレクター)】
『ジンガロ』のうわさを聞いたのは、何年前になるだろう。何人もの人たちからスゴイ、感動、信じられないと聞いた。そんな話を聞くたびに、くやしくてしょうがなかった。アメリカ西海岸で、カンヌで、イタリアで、僕も何回か見る機会があったんだが旅の都合でニアミスばかりだった。今回いろいろな障害を乗り越えて日本にやって来る。何年振りかの恋人に会う気分でそわそわしている。


【楠田枝里子さん(司会者)】
ある日忽然と、巨大なテントが街に現れる。異世界を運んできたのは、サーカス?劇場?それともー。
バルタバス率いる、噂の「ジンガロ」がやってくる。馬は人の言葉を解し、人は馬の心を読む。馬と人間が共に生き、一体となって描き出す、摩訶不思議な美の舞台。私たちはテントに潜りこんで、その壮大なるスペクタクルに、ただもう驚嘆するしかない。


 演劇ファンの私としては、やはり宮本亜門さんの「あのピーター・ブルックが、あのピナ・バウシュが、そしてスティーブン・ソンドハイムが愛してやまないジンガロ」というフレーズにビビッときます。
 日本で観られるこの機会を、どうぞ逃さないでください!

Posted by shinobu at 11:30 | TrackBack

メルマガ号外 青年座『空』

 青年座下北沢5劇場同時公演『空』
 11/25-12/05本多劇場
  http://www.seinenza.com/performance/shimokita/

 ※号外のとおし番号を間違えました。Vol. 12です。
  ごめんなさい。
  こちらでは正しい番号に直しています。

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 “しのぶの演劇レビュー” 号外 Vol. 12  2004.11.26  336部 発行

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   今、面白い演劇はコレ! 年200本観劇人のお薦め舞台♪


★★ 号 外 ★★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 青年座下北沢5劇場同時公演『空』
 11/25-12/05本多劇場
  http://www.seinenza.com/performance/shimokita/
  ☆青年座下北沢5劇場同時公演のひとつ。
   福島三郎さんの脚本を宮田慶子さんが演出するというだけで目玉。
   青年座の著名女優が勢ぞろいしているのも魅力です。

 ◎観劇後のコメント◎
  近未来の東京。地下にもぐって生活をしている女たちのお話。

  気恥ずかしくなるほどストレートな愛と、遊び心のある脚本が
  一本筋の通っていて、隅々まで気持ちが行き届いた演出によって
  優しさ溢れるSFメルヘンになりました。大人の心を癒してくれます。
  青年座の女優さん、皆さんすばらしいです。
  特に高畑淳子さんの、朴とつさの中に技の光る演技に涙、涙。

  下北沢5劇場同時公演の最初に観た作品でこれだけ感動しちゃったら、
  他の4作品も観たくなりました。

 *レビューはまだUPしていません。
  

 《チケットについて》
  一般 5,000円
  特定日割引 3,500円 (11/25、26、29、30[各日限定20席])
  ゴールデンシート (65歳以上) 4,000円
  ユニバシート (大学・各種学校生) 3,500円
  チェリーシート (高校生以下) 2,500円

  ※土日は完売です。他の回も残席わずかのよう。
  ※未就学児童入場不可。

  ◎チケット購入・お問い合わせはこちらへ
    青年座 03-5478-8571
    (当日券情報もこちらで聞いてみてください)


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 ◆ 【編集後記 & ジンガロ(ZINGARO)情報】
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 ◎もう11月も終わろうというのに、すごく暖かくありませんか?
  最高気温19℃なんて、嬉しい限り。
  でもクリスマスの準備もそろそろ始めなきゃ、ですよね♪
  気の早い私は年賀状にも手を付け始めました(笑)。

 ◎ジンガロ日本公演実行委員会事務局に勤務しています。
  明日11/27(土)10:00AMより、とうとう一般発売開始です!

  ジンガロ『Loungta(ルンタ・風の馬)』
  3/12-5/8木場公園ジンガロ特設シアター
   http://www.zingaro.jp/

  イープラス
   http://eee.eplus.co.jp/s/zingaro/
  電子チケットぴあ
   http://t.pia.co.jp/news/ad/zingaro/zingaro.jsp
  ローソンチケット
   http://www2.lawsonticket.com/pc/P40/WM80.asp?SI=ZIN
  CNプレイガイド
   http://www.cnplayguide.com/evt/cttop.aspx
  楽天
   http://ticket.rakuten.co.jp/zingaro_r/
  チケットスペース
   http://www.ints.co.jp/zingaro/zingaro.htm
   予約・問合わせ:03-3234-9999

☆本日発売の朝日新聞(東京版)朝刊にジンガロの全面広告が載ります。
  充実した内容ですので、ぜひチェックしてください。
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2004年11月25日

ニッポン放送/サードステージ『KOKAMI@network「リンダ リンダ」』11/16-12/05シアターアプル

 ザ・ブルーハーツの楽曲を使った音楽劇です。作・演出は鴻上尚史さん。
 NHK大河ドラマ『新撰組!』の土方役で大人気の山本耕史さん、ロックバンドSOPHIAのヴォーカルの松岡充さん等、大スターが出演しています。

 ロックバンドのお話で、バンド名が“ハラハラ時計”だという時点で脚本には期待していませんでしたが(あらすじはこちら)やはり予想通りというか、残念なことに予想よりも面白くなかったですね。上演時間は15分の休憩を挟んで3時間10分ぐらい(アンコール含まず)でしたが、とにかくストーリーにもブルーハーツの音楽の使い方(入り方)にも疑問満載。さすがに2時間も経つと慣れたのか、後半の45分間ぐらいは楽しめました。クライマックスはしらけちゃいましたけど。

 子供向けにしてはストーリーが難しいし、下ネタが多すぎるし。決して大人向けにはなりえないし。これでチケット代が8400円なんですよねー・・・豪華キャストでブルーハーツの曲を使っているからなのかな。割に合わないと感じました。大スターがやるから笑える(普通の人がやっても引く)ネタが多いのもすごく悲しかった。

 ここからネタバレします。

 基本的には主人公達のバンドのお話なのですが、環境破壊の原因となっている堤防を爆破しようとするのがストーリーの軸であり、学生運動時代からの革命家(大高洋夫)が登場するなど、内容が意外に社会派です。「ロックといえば時代への反発」というのはわかります。「堤防を爆破すれば仲間(ヴォーカルとドラム)が戻ってきてくれる」と考えるまでは可愛らしいとしても、本当に爆弾を作りだして、バンドメンバーもそれにすんなり同意して付いて来るのには納得できません。喫茶店で“偶然に”爆弾作りの名人に出会うのも出来すぎです。

 ブルーハーツの曲についてもそう感じました。ファンならこれはマストだろうと思う曲(大ヒット曲含む)、隠れた名曲、そして特殊なことを歌っている曲を選んで、それを物語に当てはめて使うということでしたが(「せりふの時代」でのインタビューより)、曲に合わせて無理やりにストーリーを作り込んだように感じる場面が多々ありました。

 演出は子供向け、なのかなぁ・・・。わかりやすすぎる説明ゼリフが言い訳がましく聞こえました。歌を歌っている時のバックダンサーの振付はNHKのこども向け番組みたい。傘をくるくる回して使うダンスは『幽霊はここにいる』でもありましたね。『幽霊は・・・』ではまだ衣裳ともリンクしていたので気になりませんでしたが、今回はすごく時代遅れに感じました。

 舞台装置の色使いについて、雰囲気は『ピルグリム』に似てました。緑、赤、ピンク、オレンジ、青など、絵の具の原色をそのまま使ったようなカラフルな配色、というと聞こえがいいのですが、壁やドアは枠だけが原色で、内側は黒幕が透けて見えるようになっていました。さらに装置にところどころ黒い汚しが入ってますから、全体的にはドス汚い印象なのです。また、若いバンドをイメージさせるチラシがベタベタと壁に貼ってあるのも薄汚い。結果、たくさんの色が舞台全体にあふれすぎて、俳優が美術の中に埋もれてしまっていました。2幕に入って目が慣れてからは普通のお芝居のように観られるようになりましたけど。

 毒々しい下ネタが多いのも疑問です。下ネタ自体が悪いわけじゃないと思いますよ、でもね、なんであんなに下品なのかなぁ。「バー(パブ?)・ソーセージ」とかひどいですよね。
 脇に不必要なものが多すぎると思います。児童向け劇団の中にレズ関係を入れるのは余計でしょう。警官同士のアドリブ(であろう対話)は面白かったですけどね。全体的に遊びが過ぎて、すごく散漫でちゃちい印象を受けました。

 女の子の方から男の子に言い寄るスタイルの恋愛は、男の願望の表れなのかな?2つも重なるとみっともないんですよね。しかも男の方から断るしね。「ああいうこと(男の部屋に乗り込んでいく、2件目に誘う等)をするとモテない」という良い例です。

 ここに挙げた全てのマイナス方面の印象は、どうしても押さえられない衝動や爆発力があれば、そっくり裏返すことができます。それがあれば、何もかもうまく成立したかもしれません。でもこの作品にはなかったです。昔の鴻上さんにはあったのかもしれません。
 
 ここまで酷評していてもやはり私はブルーハーツのファンですし、ところどころ聞きほれたところはありました。山本耕史さんの「TOO MUCH PAIN」、SILVAさんの「ラブレター」、松岡さんの「チェインギャング」は良かったな~。大高さんの「英雄にあこがれ」の静かな弾き語りは素晴らしかった。演出についても2箇所じ~んときたところがあったのですが、どこだったか忘れちゃいました。

 山本耕史さん。バンドのリーダー役。歌も上手いし、ギターも弾けるし、体もよく動くし、ルックスはきれいだし、非の打ち所のないエンタメ系舞台スターだと思います。でもちょっとあっさりしすぎかな。
 松岡充さん。リモコン作りが得意なバンドメンバー役。熱くって可愛らしかったです。やっぱり音楽界のスターって基本的にロマンチックで華がありますね。歌い方が演歌みたいだったのは意外でしたけど(笑)。馬渕英里何さんに告白するシーンは素敵でした。
 SILVAさん。バンドのリーダーの長年の恋人役。すっごく優しくていい人だな~って思いました。彼女がソロで歌う時は、上手いし心もこもっているので聞き入りました。
 北村有起哉さん。バンドに参加する警官役。観てる方が恥ずかしくなるほどの三枚目役で超キュートでした(笑)。この方も眺めているだけで「本当にいい人だな~」って嬉しくなるんです。

 パンフレットにありました。
 linda (スペイン語・形容詞)かわいい、愛らしい、すばらしい、すてきな、
 
※12/01朝日新聞夕刊に掲載された、新聞記者・藤谷浩二氏の『リンダ リンダ』の劇評に対して、鴻上尚史さんが抗議されています(週刊StagePower「2004.12.07 鴻上尚史が朝日新聞劇評に抗議!」より)。【2005年1月3日追加】

このことについて書かれたブログです。

 ・RClub Annex 鴻上氏の抗議について外野から
 ・stage note archives [雑談]劇評と観客

 stage note archivesのぴーとさんの気持ちに共感します。下記、引用します。
 「あなたの芝居の評価を決めるのは劇評家ではない。そういったアンケートも書かない、ネットに感想も書かないただの「観客」ひとりひとりだし、なにより鴻上さん自身なのだということが、あの抗議文からは感じられなかった。」

 私が観に行った日はまだ、階段の壁に抗議文章が貼り付けられたりはしていませんでした。新聞の劇評は確かに影響力が大きいかもしれません。でも、一人一人の観客が劇場の中で見たこと、感じたことが全てだと思います。それでいいと思います。
 あと、観る側は、どうやったって作る側には敵わないんですよ。鴻上さんはもっとドッシリと構えていてくださっていいんじゃないかなって、えらそうですが、そんな風に思いました。

(東京→大阪、福岡)
作・演出: 鴻上尚史
出演: 山本耕史 松岡充 馬渕英里何 北村有起哉 田鍋謙一郎 生方和代 林和義 根田淳弘 浅川稚広 赤座浩彦 大高洋夫 SILVA
MUSICIANS:中村Jimmy康彦(Guitar) 古池孝浩、関根安里(Guitar,Keyboard) 泰輝(Piano,Keyboard) えがわとぶを(Bass) 土屋敏寛(Drums)
音楽監督:後藤浩明 振付:上島雪夫 照明:坂本明浩 音響:堀江潤 美術:小松信雄 衣裳:加藤昌孝 ヘアメイク:西川直子 舞台監督:森聡 演出助手:佐藤万里 歌唱指導:山口正義 稽古ピアノ:佐藤拓馬 映像制作:佐藤敦紀 ファイト:廣哲也 制作:中嶋隆裕 高田雅士 森田友規子
主催:ニッポン放送/サードステージ 後援:シティリビング
サードステージ内公演ページ:http://www.thirdstage.com/knet/lindalinda/pre.html

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2004年11月23日

テレビ東京・アトリエダンカン・プロデュース『8人の女たち』11/19-12/12アートスフィア

 ロベール・トマの戯曲を江守徹さんが演出。
 なんといっても目玉は日本の舞台女優の大盤振る舞いです。とにかく華やか!

 舞台は1950年代のフランスの田舎の大邸宅。クリスマス間近で家族が全員集まっている中、一家の主が殺された。家にいたのは妻(木の実ナナ)、娘2人(佐藤江梨子・ソニン)、妻の母(喜多道枝)、妻の妹(安寿ミラ)、家政婦2人(岡本麗・毬谷友子)、殺された主人の妹(山本陽子)の合計8人の女たち。雪に閉ざされた邸宅の中で互いを探り合う内に、女たちそれぞれの秘密が明かされていく。犯人は一体誰なのか?

 2002年に映画化されたフランソワ・オゾン監督の『8人の女たち』はかなり脚色されたミュージカルでしたが、本作は戯曲に忠実に作られたようです。
 とにかく豪華絢爛な女優にうっとりし通しでした。衣装は映画のイメージをそっくりそのまま持ってきていましたね。
 

20041122 8femmes movie.jpg

映画のビジュアルです。画像元はこちら

 車イスに座っている祖母マミー(喜多道枝)と太った衣装を着けている家政婦シャネル(岡本麗)以外は、体の線がはっきりわかるデザインの衣装ばかりでしたので、皆さんのスタイルの良さが際立ちました。ほんっっとにキレイなの!席が最前列だったので衣装の生地や細かいデザイン、胸の谷間など(笑)、存分に味わわせていただきました。

 非常にわかりやすい演出で、奥様方がお友達と一緒にマチネを観るには最適だったと思います。どうしても映画と比べてしまいますしね。映画の方がセクシーで刺激的なんですよ。だから私にはちょっぴり物足りませんでした。

 ソニンさんは声がすごく大きくて、ハッスルしてましたね。観客も共演者も置いてきぼりになるほど一人で発散してた感じで、最後の方はちょっと観てられなかったです。初舞台だそうなので、これからまた頑張ってくださるといいですね。

演出:江守徹 原作:Robert Thomas(ロベール・トマ) 翻訳:和田誠一
出演:木の実ナナ 山本陽子 安寿ミラ 毬谷友子 佐藤江梨子 ソニン 岡本麗 喜多道枝 (加藤治子は降板)
美術:和田平介 照明:勝柴次朗 音響:高橋巌 音楽:笠松泰洋 衣裳:原まさみ ヘアメイク:角田和子 かつら:スタジオAD 演出助手:水谷勝 舞台監督:津田光正 宣伝美術:xenon 仲介:(㈱)フランス著作権事務所 宣伝:る・ひまわり 製作助手:島袋佳 制作:吉田由紀子 プロダクションマネージャー:小池義圓 プロデューサー:池田道彦
主催:アートスフィア 朝日新聞社 テレビ東京 協賛:TOSHIBA 製作:スフィア 企画製作:アトリエ・ダンカン
アトリエ・ダンカン内公演ページ:http://www.duncan.co.jp/play/8femmes/
映画「8人の女たち」:http://www.gaga.ne.jp/8femmes/

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2004年11月22日

NHK芸術劇場「ロシア国立アカデミー・マールイ劇場『かもめ』」11/21放送(22:00~01:00)

 噂には聞いていたのですが、B席が満席で高いA席しか残っていなかったため、チケットをあきらめた公演です(ケチですみません)。NHKで放送されたのでビデオ録画して母と一緒に観ました。もー・・・・最初っからずっと涙が流れ続けて止まりませんでした。
 ※レビューの日付は放送日翌日です。観たのはもうちょっと後だったと思います(2007/06/02)。

 ここからネタバレします。

 はじめてトレープレフの自殺に納得できました。あれじゃあ生きていられなくて当然だって思えたんです。
 ニーナの一人芝居のシーンで、はじめてトレープレフの作品の意味が伝わってきました。確かに彼には才能があったんだと思いました。そしてニーナにも。

作: アントン・チェーホフ
出演: イリーナ・ムラヴィヨーヴァ、ユーリー・ソローミン他、モスクワ・マールイ劇場
http://www.nhk.or.jp/art/yotei/2004/20041121.html

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2004年11月21日

bird's-eye view『nu』11/19-21シアターサンモール

 内藤達也さんが構成・演出を手がけるbird's-eye view(バーズ・アイ・ビュウ)は、本公演とSecond Line(セカンドライン:短編コント集形式)という2種類の公演を打っていますが、今回は前回の三鷹公演に引き続きSecond Lineでした。

 今までと同じスタイルの作風ですが、演出の精度が高くなって、役者には余裕を感じられて、明らかに洗練されていました。
 きれいで、かっこよくて、楽しくて、笑えて、うっとりできたら言うことないですよね。改めてbird's-eye viewの原点を見たような気がしました。やっぱり可愛い女の子っていいな、おしゃれな男の子っていいな、きれいな衣裳っていいな、ハっとさせられる美術っていいな、笑えるって気持ちいいなって。最初から最後まで、すっかり安心して楽しませていただきました。そして、ちょっと笑い疲れた(笑)。

 舞台は2方向から客席に挟まれた真っ白の正方形。平たい舞台上にまんべんなく、縦4本×横4本で計16本の白い三角コーンが等間隔に置かれています。コーンの先端と先端をつなぐ棒を使って空間を区切り、また、照明が仕込まれた白いコーン16本が役者の動作・演技、舞台転換にあわせてそれぞれに点滅するのは見事です。衣裳は舞台の白に映える黒で、空ける素材を使ったグランジ系ドレススタイル。役者一人ずつデザインが変えられています。ポイントにショッキングピンクを加えているのもキュート。ヘアメイクも凝っており、観ているだけで嬉しくなります。そういえば今までよく使われていた映像はありませんでしたね。

 具象的なものが何もない舞台で、あるルール(架空のナンセンスな設定)を決め、その範囲内および外で、匿名の若者たちがそれぞれに主張しあい、短編ごとに独特の世界が作り上げられます。観客が感じる情報の大部分が抽象的なので、観ているだけでもけっこう想像力を使いますね。笑い満載の短編の間に挟まれる身体表現のみのシーン(ダンスも含む)はとても美しいです。

 ピエールこと杉浦理史さんのお馴染みキャラ“まーくん”は完全にひとつのイメージとして確立された感がありました。Second Line常連の櫻井智也さん(MCR)のドスの利いたつっこみはいつもながらスカッと爽快です。人気コーナー“ポスト・ポンキッキーズ”の客演役者いじりも嫌みがなく、いじられる方もアドリブが非常に上手いので存分に笑えました。

 岸田健作さん というテレビに出てらっしゃる俳優(タレント?)さんが出演しているのですが(山本卓(アフロ13)とダブルキャスト)、bird's-eye viewのメンバーとは明らかに毛並みが違いました。異物が混入しているとも言える状態が、さらに作品の幅を広げていたと思います。これもbird's-eye viewという集団の作り出す世界が、ひとつの確かなものとなってきたからでしょう。

 岩渕敏司さん(くろいぬパレード)は今まで観た中で一番魅力的でした。ブラジルで観たときよりも良かったのは意外でしたね。
 山中郁さん。マイクで舞台上の人物のセリフを朗読するのですが、きちんとした発声とかつ舌でとても気持ちよかったです。

構成+演出:内藤達也
出演:杉浦理史 小野ゆたか 山中崇 宮本拓也 日栄洋祐 明石修平 松下好 金崎敬江 山中郁 中村早千水 後藤飛鳥 有川マコト(絶対王様) 岩渕敏司(くろいぬパレード) 櫻井智也(MCR) 小松田あこ 岸田健作/山本卓(アフロ13) (ダブルキャスト)
舞台美術/秋山光洋 照明/榊美香(I's) 音響/佐藤春平(SoundCube) 舞台監督/田中政秀(TEAM COWBOY) コスチューム/伊藤摩美 宣伝美術/草野リカ(alon) プロデューサー/赤沼かがみ 制作/眞覚香那子 保田佳緒 熱海静恵
バーズ・アイ・ビュウ:http://www.b-ev.net/

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2004年11月19日

劇団ジャブジャブサーキット『しずかなごはん』11/17-21サンモールスタジオ

 もう何年も行こう、行こうと思って見逃し続けていたジャブジャブサーキット、やっと観に行けました。
 ジャブジャブサーキットは岐阜県出身の名古屋の劇団で、作・演出の はせ ひろいち さんの脚本は「テアトロ」や「せりふの時代」にも載っています。
 名古屋、大阪、東京の3箇所のツアーです。

 さまざまな依存症の患者が通院・入院している山音クリニックの、フリースペース(だったかな?)と呼ばれる談話室が舞台。
 依存症といってもこの作品では特に摂食障害について描かれていました。摂食障害というとすぐに思いつくのは過食症や拒食症ですが、単に食べ過ぎたり食べられなかったりするだけではないんですね。山盛り食べて、そして全部吐くということを繰り返し、激やせしてしまう等の症状があるそうです。心の状態に深く関係している病気であることは言うまでもありません。

 山音クリニックでは、摂食障害に苦しんでいる患者たちに非常にきめ細やかな診療をしている。数ヶ月前、摂食障害で一時期クリニックに通っていたことのある女優(岩木淳子)が自殺するという事件があった。その女優の個人ウェブサイトに、死んだはずの彼女の書き込みがあることがわかり、同時期に医院の中でも幽霊が出ると噂になっていて・・・。

 良い脚本でした・・・ところどころ涙しちゃいました。登場人物は皆さん基本的に良い人ばかりで、セリフをきちんと聞かせるお芝居でした。

 院長先生(荘加真美)が「ここ(に来る患者さん、および治療方法)は例外ばっかりだから」と言うセリフに感動です(セリフは完全に正確ではありません)。病院ってそうあるべきじゃないでしょうか。患者一人一人についてその人に合った治療法をほどこせるなら、それが理想ですよね。院長先生や分室長の桜井先生(小山広明)を見ていると、覚せい剤・麻薬・少年犯罪撲滅に尽力してらっしゃる“夜回り先生”こと水谷修さん のことを思い出しました。

 現代の医療は、患者の症状を既にある症例に当てはめて、前例に従うことで終わることが多い気がします。だから私は大病院が苦手なんですよね・・・って好き勝手言ってますけど、そんな対応が一朝一夕にはできないのはよくわかっているつもりです。ただでさえお医者さんって激務ですしね(でもやっぱり病院はつらい)。

 病院を舞台にした患者と医者の人生の静かなドラマとして、とても見ごたえがありましたし、作られた方の心の優しさが胸に沁みました。女優のBBSに書き込まれた「しずかなごはん」という文字が謎の鍵ではないか・・・という推理劇になっているのも楽しめました。

 でも・・・全体的に地味ですよね。役者さんは演技がちょっとおぼつかないです。対話シーンの演出も甘いところがある気がします。「ええ、ああ」っていう相槌をつくのが非常に多いのですが、ちゃんと言えてる役者さん、いなかった気がするなぁ。あと、笑いについては不満でした。もっともっと笑える脚本だと思います。通院している女子高生役の永見一美さんは、きれいだし華もありました。

 チラシビジュアルもホームページも、もうちょっとパっとしてれば、きっともっと早く観に行ったと思います。前売2700円のお芝居ですのでそこまで求めなくてもいいのかもしれないんですが、いかんせん脚本の質と比べると全てがワンランク下に見えちゃうんですよね。この脚本を文学座のアトリエ公演とかでやったらどうかしら?青年団の役者さんが演じるとすごく良いんじゃないかしら?あと、NHKの連続ドラマにも合うのでは?うわっ、観たくなって来たっ!

 車イスに乗った営業マン役がダブルキャストで、私が見た回は、はしぐちしん(コンブリ団)ヴァージョンでした。車椅子の背もたれの後ろに付いている天使の羽は面白いですね。※はしぐちさんは、もともと車イスに乗っている俳優さんだそうです。教えてくれた方、ありがとうございました。

 はせさんがパンフレットに書かれている言葉を引用します。
 「むしろ僕は今、摂食障害の人達の方がマトモに見えている。人生に対し「食」という側面から、自分を見直し、裸の戦いを挑んでいる姿において。」

 ※この作品はこころネットKANSAIという大阪の団体とのコラボレーションです。
 《こころネットKANSAI》引用元はこちら
 社会全体が不安・不信・不透明感であふれる現代において、心身に問題を抱え、精神科・神経科に入院・通院する当事者と、その援助者、そして意思ある市民によって設立。一人一人が持つ生きる力と能力を交流させ、共に生きることで学び、そして楽しめる活動をじっくりと根付かせ、心の健康問題の改善とこことろからだのバリアフリー社会の実現を目指す。

作・演出:はせひろいち
出演:はしぐちしん(コンブリ団、T) 荘加真美 小山広明 江川由紀(T) 中杉真弓 岡浩之 岩木淳子 高木美千代 永見一美 小関道代 村松綾(客演) 栗木己義(T) T=トリプルキャスト
照明:松野弘 選曲:はせひろいち 舞台美術:栗木己義 宣伝美術:奥村良文(ワークス) 写真:岡本佳子(スタジオメイプル) 舞台監督:岡浩之 制作:JJC企画
劇団ジャブジャブサーキット:http://www.owari.ne.jp/~iku/template.html

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2004年11月17日

新国立劇場演劇『二人の女兵士の物語』11/08-11/21新国立劇場小劇場

 “THE LOFT~小空間からの提案~”という企画の第3弾(第1弾は『胎内』、第2弾は『ヒトノカケラ』)です。
 燐光群の坂手洋二さんの作・演出で小島聖さんと宮島千栄さんが出演するオムニバス形式の二人芝居でした。

 美女2人がじゃんじゃん着替えて出てきてくれるコスプレ・ショーとして存分に楽しみつつ(笑)、坂手さんの硬質で壮大な舞台空間を味わえました。エンターテインメント色の強い作品でしたね。でもスズナリでの燐光群公演と同じ空気があったと思います。タッパが高いので音の響き方はちょっと違いましたけど。

 ステージは鋭角に尖った三角形で、長い辺の両側に客席がしつらえられています。客席に挟まれた舞台面はかなり細いので、対面の観客の顔がはっきり見えます。THE LOFT企画の最後にして初めて小さな空間を味わえた気がします。

 舞台面は黒鉛色のアスファルトのような質感で、巨大な“棒”が斜めに突き刺さっています。装置としてはそれだけなので極シンプルな造りなのですが、この“棒”がクセモノです。
 計8話のオムニバス形式ですので、話の内容によって見え方さまざまに変化します。棒といっても真っ直ぐのポールではなく、表面がウロコのようだったり、階段になっていたり、さらには長い鉄の棒が何本も刺さっていたりします。また、エピソードごとに回転して傾斜の角度が変わりました。私には船の帆、木(時に神木)、男性器、地球の自転軸、等に見えましたね。また、あの棒はかなり重たいもののようです。女優さんが横に刺さった鉄の棒にぶらさがって逆上がりが出来るぐらい頑丈でした。美術は種田陽平さんです。映画界でもご活躍だそうで(『KILL BILL vol.1』プロダクション・デザイナーなど)、スタッフのコラボレーションとしても面白いですね。

 最初は1960年代の学生運動の自称・革命戦士が「総括」をしている場面から始まります。雪の降る寒空の山中で、妊娠8ヶ月の女(宮島千栄)を木に縛り付けて(小島聖)が攻め立てます。「うわー、ハードだなぁ~、さすが坂手戯曲」と思いながら2人の女優のガチンコ演技バトルを見ていたのですが、次に来たのが「運動場」というタイトルの短編。なんと小島聖さんがトライアスロン(話の中ではキング・アスロン)のユニフォームを着ています。足ほそ!手なが!・・・悩殺!!そして赤いジャージ姿の宮栄さんとほとんどレズ芝居!観ててすっごく緊張しちゃいましたっ。オタク言葉だと「萌えー」って言うのでしょう(笑)。

 燐光群でもよく取り上げられる現代の社会問題(不倫、保険金殺人、虚偽報道など)をテーマにした短編が多かったですが、いつもに比べると軽やかで笑いも多く、予想外の気楽さで観られました。でも、最後のエピソードで一気にシリアスになりました。
 ラストも学生運動の女戦士のエピソードなのですが、最初のエピソードではしっかり妊娠8ヶ月の頃の大きさだった女(宮島千栄)のお腹が小さくなっているのです。そして「子供は消えてしまった」と言い出します。ここからの急展開は難解で私には細かいところまで解釈しきることはできませんでした。
 突然すべてが夢の中の物語のようになり、一つ一つ独立していたエピソードが一体化して、宇宙の中の地球に生きるすべての「女」を表しているように感じました。舞台は地球という名の船になり、観客もその乗客になりました。
 そうなるとやはりあの“棒”は、船の帆でもあるけれど、男性を表してると思います。

 エピソードとエピソードの間には役者が着替えるための時間であろう、かなり長い暗転があります。その間に流れる音は役者の声をサンプリングしたものでした。「愛してる」「愛してない」、「好き」「嫌い」など、二極対立を表す言葉がラップ・ミュージックのように連呼されます。ゴゴゴゴーっという低い爆発音のようなノイズ音とも重ねられますので、音楽ではなくて効果音、もしくはセリフとして受け止められました。新しいような古いような、けっこう冒険している演出だと思いました。

 ※最前列の観客には青いバスタオルが置いてありました。水がかかるのかな?と思ったのですが、対面の観客の視線対策なんですね。スカートを履いた女性のための心遣いです。さすが新国立劇場!

作・演出 :坂手洋二
出演:小島聖 宮島千栄
美術 :種田陽平 照明 :小笠原純 音響 :島猛 衣裳 :前田文子 ヘアメイク :林裕子 演出助手 :大江祥彦 舞台監督 :森下紀彦
新国立劇場内:http://www.nntt.jac.go.jp/season/s243/s243.html

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劇団鳥獣戯画『3人でシェイクスピア』11/16、11/17、12/8、12/9~(とびとびロングラン)プーク人形劇場

 シェイクスピア全37作品を90分でやってしまうという荒業。原題は“The Complete Works of William Shakespeare(abridged)”です。5月からプーク人形劇場でとびとびロングラン公演をしています。来年の3/11までありますね。

 ものすごくがっかりしました・・・。なんか・・・やる気ないんだなーって思って、途中休憩で帰りました。だから『ハムレット』だけ観てません。(前半だけで36作品終わったので)
 
 前売り3,000円のお芝居ですよね。そういう自覚あるのかなぁ。役者さんが明らかに疲れている様子でした。セリフも何もかもいい加減。慣れてダレるならロングランなんてしたらダメだと思うんですけど。男優さん(赤星昇一郎・ちねん まさふみ)、ちゃんとヘアメイクして欲しいです。えと、白髪染めぐらい普通の人でもするんじゃないでしょうか?女優さん(石丸有里子)はさすがにメイクしてらっしゃいましたが、あのピンク色の頬紅は・・・人形をイメージ?昭和の匂いがするようでした。
 全体的にかなり子供向けでした(なのに子供に向かって「できちゃった結婚」とか「エッチする」とか色々言ってましたけど)。プーク人形劇場だからでしょうかね。これを下北沢ザ・スズナリでやってたかと思うと驚きです。
 
 そもそもPLAYNOTE.NETでこの戯曲の存在を知り、絶対観たい!って思ったらちょうど東京でやってたんです。ラッキーだと思ったんですけどねぇ、その時は。

 演出はほとんど戯曲のままやっているようですね。残念ですが日本では意味不明なものもありました。客いじりもしらじらしくて痛かったです。タイタス・アンドロニカス料理番組は面白かった。

作:Jess Winfield, Adam Long and Daniel Singer
訳:小田島雄志/長谷川仰子 演出:知念正文 音楽:雨宮賢明
出演:赤星 昇一郎/石丸 有里子/ちねん まさふみ
公演サイト:http://www.linkclub.or.jp/~giga/3_file/3.html
劇団鳥獣戯画:http://www.linkclub.or.jp/~giga/

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青年団リンク・地点『三人姉妹』11/10-21アトリエ春風舎

 噂の三浦基(みうら・もとい)さんの演出を初体験しました。
 「今までにない」とか「斬新だ」等の当たり前の表現だけでは言い表せない衝撃でした。チェーホフの『三人姉妹』を観たこと(読んだこと)がある人は、絶対に観た方が良いです。両方とも経験のない人は、戯曲を読んでから観るとめちゃくちゃ面白いと思います。私も一度読み直してから行けば良かったな~。

 私、『三人姉妹』は悲しすぎるからちょっと苦手なんです。数種類の『三人姉妹』を拝見してきましたが(松本修演出@世田谷パブリックシアター、岩松了演出@シアターコクーン、等。あなざ事情団演出@アトリエ春風舎は例外?)、寒々しくて息苦しい上にすごく共感するから、観終わった後に暗い気持ちになって疲れるんです。
 でも、チェルフィッチュの岡田さんの日記ブログで「この演出でジェイムス・ジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』も舞台化できちゃうよ」的なことが書いてあったので、観に行く決心をしました。先日、栗山民也さんが一番お好きな戯曲だとも耳にしましたしね。

 劇場に入った時から3人の女優が舞台上にいました。3人とも台や机、箱の上に乗っています。静かに暗くなっていき、最初の第一声が聞こえた時に何かがはじけました。セリフ、ではないのです。音、声、言葉、歌、叫び、そしてまた音。日本語の発音ルールを守らない発声で、しかしあいうえおの音としてははっきりと聞こえる、今までに聞いたことのない生の日本語でした。早口になったり、ささやき声になったり、オペラ歌手ばりに歌いあげたり。言葉のニュアンスもセリフの意味どおりではありません。少なくとも私が知っている『三人姉妹』の中に出てくるセリフとはかけ離れた感情が載せられていました。バカにしたり、威張ったり、あきれたり、愚痴ったり・・・etc.。

 ストーリーは時系列のとおりに進んでいきました。舞台上には上手からオーリガ(長女:安部聡子)、マーシャ(次女:兵藤公美)、三女(イリーナ:角舘玲奈)。皆、ほぼその場所を動きません。アンドレイ(長男:島田曜蔵)がすごいおデブさんで(青年団のお馴染みの俳優さんですが)、下手客席前の猫足のバスタブの中から出てきたのには爆笑。彼もまた姉妹と同じようにその場所から離れられません。モスク“バ”に行けなかった家族。

 私は何度か涙が溢れ出すのを止められませんでした。一箇所明白に覚えているのは、アンドレイのバスタブを妻のナターシャ(申瑞季)がお買い物用カートで容赦なくガンガンと叩きつけるシーン。そうなんだよね、ナターシャはものすごい暴力を振るったんだよね、彼に。

 どう表現したらいいのかわからないので、私の知る範囲の比ゆをしてみます。ク・ナウカの謡うような語りもあるし、青年団(平田オリザ)の死をまとう静けさもあるし、岩松了の内向的な不条理もあるし、大人計画(松尾スズキ)の限界を超える生々しさもあるし。
 難解なことを大胆にやりきって、決め細やかな優しさもあります。お説教もしません。全然えらそうじゃないです。凄いです。ただ、全てを味わうには私の心と脳みそにもうちょっと余裕が必要でした。

 2003年9月にソウルで初演、その後11月に東京、2004年5月に京都と、この短い期間にもう4演目ですね(あれ?もう一回東京でやってなかったかな?)。それほどの話題作であり人気作なのでしょう。私も時間があったら戯曲を読み直してからもう一度観たいぐらいです。

 劇作家兼演出家のAshleycatさんの、この作品についての素晴らしい劇評が読めます。これを読めばわかる!!
 → Ashleycat's Eternal Second banana.

演出:三浦基 原作:アントン・チェーホフ 翻訳:神西清
出演:安部聡子 太田宏 大庭裕介 奥田洋平 角舘玲奈 島田曜蔵 申瑞季 兵藤公美 山内健司
舞台美術:杉山至×突貫屋 照明:吉本有輝子 照明オペレーター:伊藤泰行 音響:田中拓人 音響オペレーター:大竹直 衣装:すぎうらますみ 宣伝美術:京 制作:田嶋結菜 総合プロデューサー:平田オリザ 主催 :(有)アゴラ企画・青年団
青年団:http://www.seinendan.org/

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2004年11月16日

ジンガロ「アスパラクラブ会員限定 先行予約」

 朝日新聞社の会員制サービス“アスパラクラブ”で『ジンガロ』の先行予約が始まります。イープラスもチケットぴあでも先行予約は終了していますので、まだチケットをご予約でない方はぜひご利用ください。
 ※アスパラクラブ(入会金、会費は無料)の会員番号が必要です。

 アスパラクラブ内「騎馬オペラ ジンガロZINGARO」サイトへどうぞ♪

 先行予約期間:11/19(金)~21(日)10:00-18:00
 お申し込み先:チケットスペース 03-3234-9999

 ★ジンガロ日本公演ホームページもオープンしています!

Posted by shinobu at 15:25 | TrackBack

佐藤佐吉演劇祭参加・パラドックス定数『5seconds』11/1,2,8,9,16,17王子小劇場

 パラドックス定数は、名前は見たことあったかな?程度で作風についても何も知らなかったのですが、口コミで評判を聞いて観に行きました。「笑いのない『笑いの大学』です」と紹介されて、よくわからなかったのですが(笑)、要するに机を境に2人の男が対話するだけのお芝居、しかも超真面目で笑いなし、ということでした。

 とても面白かったです。大人のお芝居をじっくり堪能できました。
 受付も前説もしっかりしていて気持ちの良い観劇になりました。これなら50代以上のお客様でも大丈夫だと思います。

 本日の20:00の回が千秋楽です。
 全席自由で早い者勝ちになるようですので、観に行かれる方は早めに劇場に向かってください。昨日は遅れてきた方は数人が立ち見でした。
 受付開始:19:00 開場:19:30 料金:前売・当日共通1300円(全席自由)
 問合せ:パラドックス定数研究所 080-5509-5033
 ※劇団ホームページはありません。

 作品についての説明は王子小劇場のHPに書いてある文章が素晴らしいので引用します↓
 『「5seconds」は1982年に起こった羽田沖日航機墜落事故を扱った作品。生存者である機長の元に一人の弁護士が訪れる。事故について口を閉ざす機長と執拗に追う弁護士。墜落直前の空白の五秒間、コックピットの中では何が起きていたのか。1999年初演の作品を大幅改訂しての再演。四方を客席に囲まれた、真っ向勝負の二人芝居。』

 飛行機事故を扱った演劇というと燐光群の『CVR』が最も有名ですが、『5seconds』は事故の後のお話で、墜落機の機長と彼の弁護団の若い弁護士との対話劇です。
 2人芝居ならではの緊張感に加えて男同士の机上の戦いはゾクゾクします。役者さんも達者です。ただ、最後に謎が解けるところはちょっと説明が多すぎるかな~と思いました。また、出来ればスカッと笑える演出も加えたらより深みが増すんじゃないかと思いました。
 パラドックス定数はこれまでにも実際に起こった社会問題や事件を題材に作品を作ってきたそうで、これからもその路線が続くようです。次回もぜひ観に行こうと思います。

 この作品は王子小劇場の佐藤佐吉演劇祭に参加しており、1(月) 2(火) 、8(月) 9(火) 、15(月)16(火) と3週間に渡って月曜日と火曜日の夜に上演しています。これがすっごく助かったんです。私のところまで「あれ、面白いよ」という口コミが届いてくれたので観に行けました。開演が20:00だったのも嬉しいですね。
 毎週月・火はこういうお芝居をシリーズ化して常に上演するとか、いいんじゃないでしょうか?この作品を朗読劇にして色んなキャストで上演するのでも面白いと思います(王子小劇場のスタッフさんたちは既に色々お考えのようです)。

 ★制作面でのことですが、前売りチケットが「期間中有効」というのは早く辞めた方がいいですね。この作品がこれだけ好評なのですから、きっとお客様も増えます。日時指定にしないと安心してチケットを売れないと思います。詳しくはfringe(ナレッジ→若いカンパニーのために→当日精算券から前売券への移行)で勉強してくださいね!

作・演出 / 野木萌葱
出演 / 植村宏司・十枝大介
照明:木藤歩 照明操作:服部巧 音響:福田真由美 宣伝美術:山菜春菜 舞台監督:栗山佳代子 佐藤貴之 制作:パラドックス定数研究所 企画製作:FCCA PARADOX
料金:前売・当日共通1300円(期間中有効・全席自由)
問合せ:パラドックス定数研究所 080-5509-5033 劇団ホームページはありません。
王子小劇場:http://www.en-geki.com/
佐藤佐吉演劇祭:http://www.en-geki.com/sakichi/

Posted by shinobu at 00:07 | TrackBack

2004年11月14日

フジテレビジョン『ハンブルボーイ』11/07-28東京グローブ座

 ジャニーズ事務所が東京グローブ座を常打ち小屋にしてから初めて伺いました。ので、入り口を間違えた(笑)。今までとは反対側が豪華なエントランスになっていたんですね。
 シャーロット・ジョーンズのこの戯曲は2001年初演で、その後イギリスで数々の賞を受賞しています。G2さんが海外戯曲を演出するのは『ヴァニティーズ』以来で、これで2度目だそうです。
 かなり感動して、涙がボロボロ流れてしまいました・・・!ジャニーズ・ファンの女の子で埋まってしまっている客席ですが、演劇ファンももちろん感動できる素晴らしい作品だと思います。当日券のお求め方法はこちら
 レビューは後ほどアップします。

Posted by shinobu at 21:18 | TrackBack

シベリア少女鉄道『VR』10/29-11/10下北沢駅前劇場

 土屋亮一さんが作・演出するシベリア少女鉄道、略してシベ少。もう有名すぎてどうしましょ?!って感じの小劇場劇団です。
 とにかく仕掛けが天下一品!見逃せないんですよね~。でも今回はそれほど感動しませんでしたね。なんか物足りなかった。

 公演が終わっていますので基本的に(全面的に)ネタバレします。

 舞台の両袖の面にテレビが計4台(だったかな?)設置されていましたので、今回も画像でやるんだなぁと、ちょっとがっかりな感じでの始まりでした。でも幕が開いて装置を見たとたん、私は爆笑(笑)。
 『VR』って何?と思ってたんですが、アメリカのTVドラマ『ER』と掛けてたんですね。きれいな病院の一室に医者がいて、吹き替えドラマにそっくりの話し方でリアルに『ER』の世界を演じるんです。こういうネタとしては何度か観たことがありますが、ここまで立派に長々とやられると圧巻です。

 そして『VR』は、Virtual Realityの略になってます。そろそろ『ER』のうさんくさい世界も飽きてきたなぁと思った頃に、実は今までの全てがネットでつながった対戦型のテレビゲームであったことがわかるのです。両脇のテレビでは、いまどきの普通の若者が「じゃぁ30分休憩ね~」と言って、それぞれに好きなことをしはじめる映像が流れます。コンビニに買い物に行ったり、ビデオレンタル屋に行ったり、壷を打ったり(笑)。皆がマイク付きイヤホンをつけたままでいるために、それぞれの声が画面(舞台)上の『ER』の世界でも流れてしまうというのが仕掛けです。

 舞台上では若い医師たちが、予想外の事態に追い込まれて必死で働いているのですが、口から出るセリフは「巨乳」とか「弁当温めてください」とか「『タッチ』全巻、果たして読み終えられる?」とかなんです。演技とセリフのアンマッチが不謹慎な方向に行くほど面白かったですね。
 こんなに内と外が乖離した演技をするのは大変だと思います。役者さん、ありがとうございます。でも面白いのでもっとやってもらいたい(笑)。

 ただ、今回はそれだけで終わっちゃっいましたね。シベ少というと、こういう凝りに凝った仕掛けがあるだけではなく、真面目で前向きな主張もしっかりと差し挟まれている所が好きだし、凄いと思っているので、今回は残念だったな。

 舞台装置は床をスライドさせて場面転換するのが秀逸です。下北沢駅前劇場でこういうのが観られるのってすごく嬉しいですね。

 終演後に「すごいでしょ!映像は使ってるけど、これってテレビではできないよね、舞台だからできるんだよね!」って興奮気味に帰っていく観客がいましたが、そうは思わなかったですね。今回のアイデアは、やり方次第ではテレビでも実現出来るんじゃないかな。というか、ぜひぜひシベ少にはテレビでも活躍してもらいたいです。

 こんなものを買った。-ムダ遣い日記- にレビューおよび関連サイトなどまとめてリンクが張ってあります。これほどネットでレビューが書かれる劇団って少ないんじゃないでしょうか。しかも皆さんめちゃくちゃ早くUPされてましたよね。

作・演出:土屋亮一
出演:藤原幹雄 横溝茂雄 前畑陽平 秋澤弥里 水澤瑞恵 篠塚茜 佐々木幸子 白井暁子 出来恵美 木田ゆう子 ほか
舞台監督/谷澤拓巳 音響/中村嘉宏(atSound) 照明/伊藤孝(ART CORE design)映像/冨田中理(Selfimage Produkts) 宣伝美術/土屋亮一 音源製作/霜月若菜制作/渡辺大 制作助手/保坂綾子・安元千恵 製作/高田雅士
シベリア少女鉄道:http://www.siberia.jp/

Posted by shinobu at 20:27 | TrackBack

佐藤佐吉演劇祭参加・乞局『汚い月(陰漏改訂版)』11/12-14王子小劇場

 “乞局(こつぼね)”はいつもチラシが暗くて怖そうなのと、タイトルが難しい漢字で読めないことが多かったため観に行っていなかったのですが、王子小劇場の佐藤佐吉演劇祭に参加されていて、さらに知人が出演していたので観に行くことにしました。

 過去に上演した『陰漏(かげろう)』という作品の改訂版だそうですが、両方を観た方から聞いたところによると全然違うお話になっていたそうで、ほぼ新作と言って良いようです。

 空港にほど近いこぎれいなマンションの最上階の一室。子供のいない若夫婦が暮らしている。夫は靜(せい:田中則生)、妻は真琴(まこと:酒井純)。飛行機のもの凄い騒音で、日中は声が聞こえなくなるほどの轟音が何度も鳴り響く。その音が来る度に、外に出て大声を出して憂さ晴らしをする住民もいる。真琴もその一人。
 ある日、知らない女が真琴のところに訪ねてきた。「あなたのご主人が通勤途中の満員電車で立ったまま亡くなりました。」夫が死んだことも衝撃だが、わざわざそれを知らせに見ず知らずの女が家までやって来るのはおかしい。また、夫は臓器移植提供意思カードを持っていて“全ての臓器の移植に同意”していることも告げられた。

 「静かな演劇」とまでは行きませんが、かなり自然な演技で作られたドラマでした。私は「静かな演劇」はあまり得意ではないので、リラックスして楽しく拝見できました。

 登場人物はみんなちょっとコミュニケーション不全な感じの、どこか欠けている大人です。飛行機の騒音への反対運動をしようとしている中年のおばさんや引きこもりの青年、靜の勤める会社の同僚・部下たち、靜の妹2人など、とりあえずちゃんと挨拶できない輩ですね、基本姿勢が無礼(笑)。
 「知らない女」というのは靜の会社に勤めている若い女・深波留(みはる:石井汐)で、彼らはプラトニックではあるけれどお互いを「同士」と呼び合う仲でした。この2人の関係がわかりづらかったです。靜は本当に「似たもの同士」と思っていて、深波留は恋愛感情を抱いてしまっていたようなのですが、セリフからは気づけませんでした。「もしかしてこの人たち、臓器を介して地球人を侵食していく宇宙人なの?」ぐらいに思っちゃってたよ、私(笑)。

 靜の臓器を移植された人たちの中に靜が生き残っていて、時々彼らの体を通して靜が出てくるのはすごくロマンチックです。私は血や肉にもその人の心が入っているのではないかと普段から信じている人間なので、なんだか嬉しかったし、じ~んと来ました。でも、面白いと思えたのはそこまでだったかも。

 1階の住人で空港に勤めるちょっぴりヘンな男ツヅキ(アッサム)が、しゃべっている時に股間をいじります。その仕草で「コイツ、相当おかしいんだな(笑)」ってことがわかりました。細かいところまでキャラクターを作り込まれていて良いなぁと思いましたが、他の、特に主要登場人物についても、それぐらい掘下げて欲しかったですね。

 最後は真琴と深波留の戦いのようになっていましたが、真琴が深波留を客人として丁重にもてなす態度だったのはおかしいと思いました。口論めいた会話の中でも、なぜか真琴が深波留にへりくだってもいましたよね。
 真琴が「勝負には負けたけど~云々」と空に向かって大声で叫ぶセリフでラストでしたが、真琴のそれまでの演技では深波留(靜の浮気相手)に対して敵対心を持っているようには見えなかったです。実は真琴ってツヅキ以上にちょっとヘンな人ですよね。見合い結婚とはいえ、ずっとセックスレスで、夫がだてメガネをしていることにも気づかなかったなんて、異常でしょう。その異常さ加減を演技でしっかり見せていただけたら、より面白くなって、説得力も増したのではないでしょうか。

 美術は王子小劇場の高い天井をしっかり使ってきれいな部屋を作ってくれていました。真ん中の中庭が見えるように窓を多用してくれていたので、見切れが少なかったと思います。照明も効果的でした。選曲も結構好きです。飛行機の音がちゃんとリアルで大音量で良いですね。

【脚本・演出】下西啓正
【出演】秋吉孝倫 アッサム 柴田洋佑 下西啓正 田中則生 馬場一嘉 三橋良平 石井汐 酒井純 鈴木享 古川祐子 松木美路子
【舞台美術】丸子橋土木店 【照明】椛嶋善文 【照明操作】谷垣敦子 【音響効果】木村尚敬 【音響操作】平井隆史(末広寿司) 【舞台監督】谷澤拓巳 【衣装】飯田かほり(蜷曲美人) 【宣伝美術】石井淳子 【WEB管理】柴田洋佑 【制作】阿部昭義 【制作協力】玉山悟石 原美加子 【協力】田村雄介 中西瑞美 王子小劇場 【製作】乞(コツボネ)局
乞局(こつぼね):http://kotubone.hp.infoseek.co.jp/
王子小劇場:http://www.en-geki.com/

Posted by shinobu at 19:23 | TrackBack

2004年11月13日

少年社中『アサシンズ-THE VALLEY OF ASSASSINS』11/06-14中野ザ・ポケット

 毛利亘宏さんが作・演出する少年社中は早稲田大学出身の劇団です。折込チラシがめちゃくちゃ厚くって、東京の小劇場界で有数の有名劇団であることがよくわかります。でも、もう「小劇場」と呼ぶ必要はないかもしれません。

 メルマガ号外にあと一歩の傑作でした!

 なんと明日が千秋楽、しかも14:30開演の回だけで終わりです。もっと早く観に行っていれば良かったな~っ。空席あるそうですので、ぜひぜひ観に行ってください!(当日券は13:30から劇場受付で発売開始)

 おもちゃ会社に勤務しているOLのアサコ(大竹えり)は、同棲しているワタル(井俣太良)が1週間も家に帰ってこないので、大学時代の友人のユウイチ(森大)とヒロノブ(小林至)にワタルを探して欲しいと頼む。アサコの父親も数年前に行方不明になっており、アサコは自分が愛する人がまたいなくなってしまうという奇妙な偶然を不安に思っていた。
 世間では無動機殺人症候群(ノンモチベーションキラーシンドローム)と呼ばれる殺人事件が相次いでおり、それには大流行しているボードゲームの「アサシンズゲーム」が関係しているとの噂が立っている。実はアサコこそがそのゲームの開発者なのだ。
 一方、行方不明になったワタルは、なぜか砂漠の戦士のような格好で異世界にいた。そこで出会ったアジダハーカ(太古の竜)と名乗る老人(大佐藤崇)に「お前は楽園を追放されたのだ。戻りたければアサシン(暗殺者)になれ」と言われる。

 少年社中はアクション中心芝居とストーリー重視芝居の2種類の作品を交互に上演していると聞きました。今回は後者の方です、そう、私好みの方(笑)。

 テレビゲーム、大した動機もなく起こる殺人、テロリズム、家庭(夫婦)崩壊、そして中近東(の衣裳ビジュアル)等、まさに「今」のトピックをふんだんに取り上げながら、言葉と心、愛といった人間の普遍的なテーマを語ります。少年社中が得意とする複数の世界が交錯していく構成も、この作品では特に重要で巧みに作用していました。

 『ハイレゾ』@青山円形劇場でもオープニングのあまりのカッコよさにしびれましたが、今回も然り。ゾゾって鳥肌立ちましたね。アクション・エンタメ系の劇団だと劇団☆新感線、少年社中、innocentsphereが確実に面白いオープニングを見せてくれると思います(他にもあるかなぁ?)。

 音響・音楽ともに聞き応えがあるし、シーン毎に非常にこだわりの有る選曲だったと思います。一曲、すごく感動して私一人でノリノリになった音楽があったのですが(笑)、関係者に伺ったところ、POLICEの“マーダー・バイ・ナンバーズ”(アルバム"SYNCHRONICITY"に収録)でした。たしか殺人シーンの時にかかるんです。超クールですよ!終演後に気づいたのですが生演奏もされているようですよね。

 衣裳はいつもながら凝っていて見ごたえがあります。特に今回は女の子が美しく、可愛らしく見えたのが嬉しかった。

 役者さんについては、客演の方々がすごく自然なのに対して劇団員さん達がちょっと型にはまった演技をしてらした印象です。これは少年社中のオリジナルテイストなのかもしれませんけど。

 大竹えりさん。アサコ役。これまで拝見してきた中で一番美しい大竹さんを観られました。演技も品があって女らしく、色気も感じらる素晴らしいヒロインでした。男勝りだったり、おばさんチックだったりするイメージが私の中で固まっていたのですが、それが一新されました。
 井俣太良さん。アサコの彼氏ワタル役。素直な瞳が美しかったです。白いズボンがすっごくお似合いでカッコ良かった。
 大佐藤崇さん(ロリータ男爵)。アジダハーカ老人役。超面白いってば、ほんと!大佐藤さんが出て来るたびに何か笑わせてくれるだとうと待っていました(笑)。
 白坂英晃さん(はらぺこペンギン)。学生相手に大麻売買をしている大学教授のタジリ役。この方も自然な感じが面白かったです。

 無料でいただけるパンフレットがすごく充実しています。すっごく大変だろうと思いますが、ぜひぜひ次もこのレベルのを頂けると嬉しいですね。

 ここからネタバレします。

 アジダハーカは「『ここが楽園だ』という奴がいるが、私は自分の楽園を作りたい」と言いました。まさに世界中で起こっている戦争の原因の一つですよね。

 あいこにすると得点が入る嘘つきジャンケンゲームがしばしば出てきます。最初に自分が何を出すのかを互いに宣言してからジャンケンし、あいこになったら両方に得点が入るのです。ただし、宣言したのと違うのを出してもOK。その場合は宣言したとおりに出した方よりも、宣言と違うのを出した方に高い得点が入ります。つまり嘘をついた方が勝つゲームなのです。
 携帯電話の普及やイラク戦争など、今、私達が経験している社会的な事象は、「嘘」がどんどん増幅してそれが「事実」に取って代わることを当たり前にしてきました。でもそれが生んだのは連鎖的に広がっていく不信、そしてそれによって生じる不安です。
 ラストシーンでは、関係が壊れかけていたヒロノブとミユキ(加藤妙子)の夫婦が、この嘘つきジャンケンゲームをします。2人とも「グーを出す」と言い合って、そのまま2人ともがグーを出してあいこになるのに感動。欲を持たず、言葉のとおりに行動すればそこに信頼関係が生まれ、その場所こそが楽園になるのですね。

 「人間に最低限必要なものは衣・食・住と、郷愁だ」というのは名言だと思いました。郷愁はここでは楽園を意味します。

作・演出 毛利亘宏  
CAST 井俣太良 加藤妙子 大竹えり 田辺幸太郎 堀池直毅 廿浦裕介 森大 加藤良子 長谷川太郎 佐野素直 杉山未央 + 他 
GUEST 大佐藤崇(ロリータ男爵) 白坂英晃(はらぺこペンギン) 小林至(双数姉妹)
照明:斉藤真一郎(A.P.S.) 音楽・音響:YODA Kenichi 衣装:村瀬夏夜 舞台監督:杣谷昌洋・棚瀬巧 舞台美術:松本翠・毛利亘宏・廿浦裕介 演出助手:岸京子  音響・PA:佐藤春平(Sound Cube) ヘアメイク:沖島美雪 振付:右近貴子 スチール:金丸圭 ビデオ撮影:Y.P.K.  宣伝美術:武田和香・真野明日人  WEB:田中ユウコ 企画:佐藤春平 脚本協力:渡辺良介 制作助手:亀山紗来 制作:吉野礼・加藤良子 製作:少年社中the entertainment prison 協力:東京都文化活動への都施設の開放事業
『アサシンズ』公式サイト:http://www.shachu.com/assassins/
少年社中:http://www.shachu.com/

Posted by shinobu at 22:55 | TrackBack

パルコ・プロデュース『ピローマン(原題:THE PILLOWMAN)』11/06-11/23パルコ劇場

 阿佐ヶ谷スパイダースの長塚圭史さんが演出するマーティン・マクドナーの2003年度ローレンス・オリヴィエ賞新作最優秀賞受賞作品です。
 劇場に着いて上演時間を知ってビックリ。1幕120分、休憩15分、2幕75分という長丁場です。観劇後の予定をキャンセルしました(涙)。
 ・・・観た後にいろいろ考えるところのある複雑な戯曲でした。こういう作品が賞を取るイギリスってやっぱりすごいなと思います。
 ※ものすごく長いレビューになってしまいました。ネタバレ表示もしていますので、そこまでお読みいただけたらと思います。

 子供の虐待がテーマです。それだけでも観ているのがつらいのですが、達者な役者さんの演技と、子供のためのおとぎ話のように語る軽やかな演出によって、残酷で悲しすぎるストーリーの中から石ころのようにちっぽけな、でも確かに形のある愛がこぼれ落ちてきました。

 【あらすじ1】
 自称作家のカトゥリアンは突然警察に拘束された。なんと自分が書いた物語の通りに子供が惨殺されたという。身に覚えのないカトゥリアンは2人の刑事(トゥポルスキ:近藤芳正と、アリエル:中山祐一朗)に必死で身の潔白を表明しようとするが、一緒につかまっていた知的障害のある兄ミハイルが、あっさりと全ての罪を自白したというのだ。

 暗くて汚い尋問室のシーンから始まります。これから解けていく謎のネタふり段階であり、空気も停滞気味だったので退屈しました。先が長いというのもちょっとブルーな気持ちになる原因でしたね(笑)。初日だったので役者さんの演技がちょっと固かったのもあるかもしれません。

 ここからネタバレします。推理劇でもあるので何を書いてもネタバレになるのよね。

 【あらすじ2】
 この兄弟の家庭環境は普通ではなかった。両親は、2人の息子のうち兄のミハイルを虐待し、弟のカトゥリアンを溺愛するという実験的な子育てをしたのである。自分に兄がいることを知らないまま、何不自由なく愛されて育ったカトゥリアンは、のびのびとその才能を発揮し、幼くして小説を書くような優秀な子供に育った。しかし、隣りの部屋で両親がミハイルを肉体的に虐待する音(鞭で叩く音など)を毎日聞いていたために、彼が書く物語は暗くて残酷なものばかりになっていった。
 14歳の時、カトゥリアンは初めて兄の存在に気づき、しかも両親に虐待されていたことがわかると、彼は両親を殺して兄を助け出した。その時すでに兄(ミハイル)は知的障害を持つ人間になっていたのだ。

 カトゥリアンの書く物語は子供が虐待されるものばかりです。いくつか劇中劇と朗読で紹介されるのですが、それがほんとに怖い(苦笑)。子供の脚の指をナイフでガスッと切り取っちゃったりとか、剃刀入りのリンゴを食べさせちゃったりとか、タイトルの『ピローマン』もカトゥリアンの作品で(あらすじはこちら)、これもまた子供に自殺を促すという暗いお話です。

 ミハイルがカトゥリアンの物語(『川のある町の物語』『(忘れちゃった。剃刀入りリンゴのお話。)』『小さなキリスト』)になぞらえて3人の子供を殺したことがはっきりした所から、断然に面白くなってきました。子供のように無垢に見えるミハイルが、自分が実際にやった殺人の方法をサクサクと説明するのには奇妙な凄みがありました。
 殺人罪に問われて刑事に射殺されるよりは、寝ている間に死んでしまう方がミハイルにとって幸せだろうと思い、カトゥリアンは両親を殺した時と同様に、枕(ピロー)をミハイルの顔に押し付けて殺してしまいます。ここまでで第1幕なんですよね・・・・濃い!


 第2幕は『小さなキリスト』の劇中劇から始まります。カトゥリアンが書いた残酷な物語の中でも群を抜いて陰湿なので、子役が虐待されるのがつらいのなんの。でもアメリカのB級スプラッター・ホラー・アニメみたいな演出なので、ちょっと笑えちゃうところもアリ。

 カトゥリアンは刑事の望みどおりに、兄ミハイルと一緒に自分も3人の子供の殺害に関わったと嘘の供述をします。その見返りに、自分を処刑しても作品だけは焼かずに50年保管してほしいと懇願するのです。ここからは刑事2人の人物像が明らかにされていきます。頭が弱くてすぐに暴力を振るう刑事アリエルが、実は少年時代に父親から性的虐待を受け、その父親を自分で殺したという悲惨な経験の持ち主であり、子供を虐待死させたカトゥリアンを許せないのだということがわかります。
 『ピローマン』は、不幸な大人を子供時代に戻して子供のうちに自殺をさせるという、ぶっちゃけ超後ろ向きな話です。でも刑事のトゥポルスキが「お前の書いた作品の中で『ピローマン』だけには思うところがある」と言います。というのも、彼の息子は幼い頃に溺死していました。「息子は将来不幸な大人になる運命だったのだ。だからピローマンが息子が不幸を体験する前に来て、助けてくれたのだ。そして息子が死ぬ瞬間も、そのフカフカの体で息子のそばにいてくれたのかもしれない」と解釈できるんですね。『ピローマン』は不幸な大人を助けるだけでなく、幼い子供を亡くした親を助けるヒーローでもあったのです。これにはヤラれました。涙出そうになった。

 一人の人間が死ぬことで残すメッセージは、とてつもなく重大なのだと思います。死んだと思われていた少女が緑色のペンキでべったべたに全身を塗られた姿で出てきたことで、ミハイルは「弟が書いた『小さな緑の豚』というお話が大好きだった」という遺言を残したのです。『ハンブルボーイ』(レビューはまだアップしていません)では「俺は妻を愛していた」ですし、竹宮恵子の漫画『オルフェの遺言』では「オルフェは青が好きだった」です(古いネタですみません)。
 カトゥリアンが唯一自伝的な作品として書いた『作家とその兄弟』では、虐待されていた兄が作家の弟には決して書けなかった世にも美しい小説を書き上げて、ミイラになって死んでいたという結末になっています。カトゥリアンが「この作品のタイトルは、兄が『作家』で弟が『兄弟』なのだ」と言うのも、死んだ時に残したものこそがその人物を表すものであることを明言しています。
 人間は「生まれて、生んで、死ぬ」という極単純なことを繰り返している存在です。全宇宙の中で一瞬のまたたきのようなこの生涯の、最期に残すものこそが人間のアイデンティティーなのではないでしょうか。NHK大河ドラマ『新撰組!』でもさまざまな死が描かれています。私たちは改めてそれに気づき始めているのかもしれません。

 結局カトゥリアンはトゥポルスキにピストルで頭を打たれてあっけなく処刑されます。しかも「黒いマスクを被ってから10秒後に引き金を引く」と約束したのに約3秒早めに打たれてしまいました。アリエルは、カトゥリアンが子供虐待殺人の犯人でなかったことが判明してからは、カトゥリアンに対する敵意が消えて同情の心さえ持ち始めていましたので、トゥポルスキの冷酷な仕打ちに腹を立てました。本当に“泣きっ面に蜂”的な最期ですよね。でもこれが思わぬ救いに転じるのです。
 打たれるまでの約7秒間にもカトゥリアンは物語を頭の中でつむぎ出していました。それは『ピローマン』の番外編。両親に虐待される前のミハイルのところにピローマンがやって来るのです。でもミハイル少年は「自分が虐待される物音を聞けなければ、弟は物語を書けないよね。だからこのままでいいよ。僕はきっと弟の物語を好きだと思うから」とピローマンの死への誘いを断るのです。カトゥリアンが最期にミハイルのことをこんなに良い風に想像できたのは、ミハイルの遺言(『小さな緑の豚』が好きだったこと)が影響しています。ミハイルが残したたった一つの気持ち、兄カトゥリアンに対する愛が、カトゥリアンの最期を暖かいものにしたのです。
 そして、本当に起こってしまったミハイルの悲惨な人生(子供を惨殺し、弟に殺されること)が物語のラストシーンになることを、3秒早く打ち込まれた弾丸が止めてくれました。さらにトゥポルスキに反発しカトゥリアンに同情したアリエルが、彼の作品を燃やさずに残すという奇跡が生まれます。
 「終わりよければ全てよし」という言葉は、普段は投げやりな意味で使われることが多い気がしますが、本当はこういう意味なのかもしれないと思いました。また、「マイナスとマイナスが重なるとプラスになる感覚」というのは際どい殺人ものなどのキレてる作品(演劇に限らず)でよく言われる表現ですが、この戯曲もそれに当てはまると思います。マイナスが倍以上重なりますけど(笑)。

 美術(島次郎)は回り舞台で、尋問室、森の中の子供部屋および虐待部屋、物語『小さなキリスト』の世界などがクルクルと巡って、人間の頭の中を表しているようでした。“表裏一体”、“一寸先は闇”のイメージもあり。『小さなキリスト』のどきつい色使いの三角の空間は面白かったです。

 オープニングとエンディングにピローマンのアニメが上映されます。ピンクでふわふわの丸いキャラクターがはっきりと具体的に示されたのがとても良かったと思います。

 パンフレットに戯曲中の物語(3篇のみ)が短編絵本集のように掲載されているのには感動です。

 ※マーティン・マクドナーの処女作「ビューティークィーン・オブ・リーナン The Beauty Queen of Leenane」がシアターX(カイ)でもうすぐ上演されます(11/16-22)。日本初演ですね。

 ※こちらのレビューもどうぞ
  踊る芝居好きのダメ人間日記
  藤田一樹の観劇レポート

 ※こちらでまとめられていますね。すごいレビューの数!
  Report & Review「ピローマン」

(東京公演→名古屋、大阪、福岡、広島、水戸)
作:マーティン・マクドナー(Martin McDonagh) 訳:目黒条 演出:長塚圭史
出演:高橋克実 山崎一 近藤芳正 中山祐一朗 宮下今日子 岩田純 福地亜紗美/岩井優季(ダブルキャスト)
美術:島次郎 照明:佐藤啓 音響:加藤温 衣裳:藤井享子 ヘアメイク:高橋功亘 演出助手:山田美紀 舞台監督:菅野将機 企画・製作:(株)パルコ
パルコ劇場HP内公式サイト:http://www.parco-city.co.jp/play/pillowman/
ぴあのインタビュー:http://t.pia.co.jp/play-p/pillowman/pillowman.html

Posted by shinobu at 16:44 | TrackBack

2004年11月12日

第11回BeSeTo演劇祭・Ort-d.d『こゝろ』11/10-11学習院女子大学 やわらぎホール

 第11回BeSeTo演劇祭東京開催参加作品です。夏目漱石の名作『こゝろ』の中の『先生と遺書』の部分を1時間強に凝縮した珠玉の一品でした。

 ★このフェスティバルで上演される作品はなんとチケット代が1000円均一!こんなオトクなことってあっていいのか!?(無料公演もあります)。私は11月の予定はもう埋まってしまっているので残念ながら全く観に行けないのですが(涙)、是非フェスティバル公式サイトで団体紹介をチェックしてみて下さい。すっごく豪華なラインナップですから!

 舞台はおよそ100年前の東京。2人の男子学生と彼らが住む下宿の大家の姉妹(原作では姉妹ではなく未亡人とその一人娘)のお話です(原作の該当部分はこちら)。男2人女2人の4人芝居で、とてもセクシーな組み合わせでした。

 『こゝろ』というと、ちょうどこの第3章『先生と遺書』を高校の国語の授業で習いました。「面白いな~、っていうかこんな色恋沙汰(しかも自殺もの)を学校で勉強してもいいのか?」ぐらいに思っていた当時の私は、読み物として楽しんだだけで特に何も思い入れはありませんでした。でも今日は・・・泣きじゃくってしまいました。若者の高い志や全身全霊をかけた恋、その全てに覆いかぶさってくる嫉妬心が、まるで手で触れられるかのように重々しく、はっきりと立ち表れました。ワタシ(岡田宗介)の愚かしい嫉妬とそれゆえの復讐、K(三村聡)の孤独と深い悲しみが痛いほど伝わってきて・・・あぁ今書いてても涙ぐんでしまう~っ。

 Ort-d.dが追求する“ささやきの演劇-震えるような緊張感が場を支配し、時にささやくように、時に詠うように、時に圧倒的に語る-”という手法については、最初はその形式ばった話法や動作に戸惑うかもしれません。でも、可笑しいと思ったら笑えば良いし、怖いと思ったらびくびくすれば良いのだと思います。自分が感じたままに体も心もまかせてしまえば、自然と恋に共鳴したり、悲しさに胸が傷んだり、舞台上に表出する心と自分の心が響きあえるようになります。

 K(三村聡)が妹(市川梢)と恋に落ちた瞬間の顔は、本当に恋をしていました。それを覗き見るワタシ(岡田宗介)のとぼけたポーズの中には恐怖心(妹を取られると恐れる気持ち)が表れていました。
 Kとワタシが妹を追いかけるように彼女の後ろを走り、3人で舞台上をぐるぐる駆け回るのを見ているだけで、胸がきゅんとなります。若い、狂おしい恋!でも、Kの自殺という残酷な結末が来るとがわかっているだけに、次には胸が苦しくなって涙が溢れてくるのです。あぁ悲しいよ、悲しすぎるよ。
 『精神的に向上心がないものは馬鹿だ』という名台詞の名台詞たる所以もしっかり体感できました。

 「未亡人と御嬢様」を互いに恨みを持った「姉と妹」にしたのは成功だったと思います。男VS女という側面も見えるようになりましたし、妹(市川梢)と亡き父親との近親相姦、姉(三橋麻子)とワタシの肉体関係という家族の闇の部分が盛り込まれて、作品の奥行きがさらに深まりました。もともと『こゝろ』はキーパーソンでありヒロインでもある御嬢様(この作品では妹)の影が非常に薄いのです。初めて読んだ時にワタシとKが彼女にぞっこんになるのが納得いかなかったのを覚えています。  

 いつもどおり照明、美術、衣裳はシンプルながら完成度が非常に高く、心に残る瞬間をたくさん生み出してくれました。簾の奥に見えた赤いランプが色っぽかったです。暗転のタイミングも長さもばっちり。暗転中、静寂の中で必死に嗚咽するのを押さえました。不思議なくらいに泣けちゃったんですよね・・・。たぶん100年前の人と、高校時代の私と、目の前にいる人および物(舞台全部)と、今の私が、感情というプラットフォームでつながったのではないでしょうか。

 会場の学習院女子大学はきれいな学校でした。やわらぎホールはすごく新しいんでしょうね、新品の建物のにおいがしていました。あと、やっぱり女子の学校に入るのって特別な気がしちゃいます♪
 ロビーに学生が作ったOrt-d.dについてのレポートが展示されていたのですが、手書きだったのに驚愕。おおむね好評の様子でしたが、私にはちょっと・・・小学生じゃあるまいしワープロ打ちぐらいしようよ(汗)、と思いました。キャスト紹介もあったのですが、男優さんだけに動物占いの動物(岡田さんはコアラ、三村さんはトラ)が書いてあったのは微笑ましいですね(笑)。

 ★帰り道で気づいたこと
 終演後、劇場ロビーを出るとまだ雨が降っていました。赤い傘を差した女学生達が「ありがとうございましたー」と言ってくれました。開演前に校門の前にいた彼女達はお世辞にも礼儀正しいとは言えない若者だったので、あまり気に留めないようにしていたのですが、悲しい恋物語を観てボロボロ泣いた後の私はかなり優しい気持ちになっていて(単純で勝手ですみません)、劇中の“妹”と同じ世代であろう女の子達をちょっぴり愛おしく見つめながら帰途に着こうとしました。
 でも、どうやってホールから校門に戻るのか、道が分からない。すると「赤い傘を目印にお帰りください」と言われたのです。校門までの道におよそ30m間隔で赤い傘がぽつりぽつりと見えます。「ナイスアイデア~♪女子大ならではのオトクなサービスだわ(笑)」と思いながら、私も傘を差して進んでいくと、赤い傘を差した女学生の前を通る度に「ありがとうございました」と挨拶してくれるので、私も「ありがとうございました」と返しながら歩いて校門までたどり着きました。
 家に帰ってレビューを書きながら思い返したのですが、そういえば“妹”は赤い傘を差していたのです!そして登場も退場もホール後方のドア(入り口)からでした・・・。やっぱりあの場所で今の女学生と100年前の女学生が同時に生きていたんですよっ。なんてロマンティックで、なんて愛に溢れているんだ!あぁ、またヤラれたよ、Ort-d.d!!

原作:夏目漱石 構成・演出:倉迫康史
出演:市川梢  岡田宗介 三橋麻子 三村聡(山の手事情社)
照明/木藤歩 舞台監督/弘光哲也 美術・衣装/田丸暦
オルト・ディー・ディー:http://ort.m78.com/

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2004年11月11日

劇団、本谷有希子『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』11/10-14青山円形劇場

 チラシヴィジュアルやタイトルが私の好みとかけ離れていたため観ていなかった劇団、本谷有希子ですが、第2回ヴィレッヂプロデュースに出演された時の本谷さんのあまりの可愛らしさに「いつか行こう!」と思っていたのがやっと叶いました。今回のチラシは漫画家の山本直樹さんのイラストが豪華ですよね。そしてキャストも豪華です。

 田舎の一軒家。両親の訃報を受けて長女の澄伽(すみか:森尾舞)が東京から帰ってきた。次女の清深(きよみ:鳥海愛子)は震え上がった。6年前に自分がやってしまったことを姉は許していないに違いない。清深の予想どおり、澄伽の陰湿で冷酷ないじめが始まる。長男の宍道(しんじ:伊達暁)は「俺がどうにかする」とは言うものの、実は彼と澄伽の間にも隠された過去があった。何も知らないのは宍道の嫁の待子(まちこ:吉本菜穂子)だけ。

 すっごいエログロなのかも・・・と思っていたので(昔のチラシの先入観)、ホっとしたようなガッカリしたような気分でした。お話の内容としてはドロドロしてるはずなんですけど、全体的にすごく軽いんですよね。サラっときれいにまとまっていました。決して下品ではないし、可愛らしいラブシーンもあるし、清潔で若々しい印象でした。
 最近の若手の演劇の特徴として「浮遊感」というのがあると思うんですけど、浮遊というよりは芝居の上空をスルーしてるような感じです。悲しみも嬉しさもおかしみも全部が同じ温度・湿度で、冷たくも熱くもない肌触り。ストーリーと根幹とが乖離したまま共存しているように感じられました。漠然としたイメージで言うと、透明のオブラートみたい。軽くて透き通ってて、溶けてなくなってしまうほど薄くて、儚くて、でも粘着力がある(笑)。これが本谷さんの作る空気感なのかなぁと思って味わいました。

 全体的にお話の展開が予想でき過ぎましたね。ストーリーだけではなく次に言うセリフはどんな言葉なのか、どういうニュアンスなのかも予想の範疇から出ませんでした。ジグソーパズルをしていてピースが予想通りにサクサクはまってしまう感じに近いです。気分は決して悪くないんだけどそれほど楽しみがない。始まってから終わるまで、すごく冷静に眺めていました。次にどうなるのかが予想できる簡単なストーリーであることは決して悪いことではないのですが、「わかっていても面白い」「わかっているからこそ面白い」のが理想ですよね。

 ここからネタバレします。

 腑に落ちないセリフが少々気になりました。例えば、ラスト近くで漫画の編集者(本谷有希子)が澄伽に対して言う決めゼリフ「私が迎えに来たのは清深ちゃんで、あなた(澄伽)じゃない」は、現実だったらあの状況では言わないと思うんです。何か言ったとしても「何のことだかわかりません。あなたは誰ですか」ぐらいじゃないでしょうか。澄伽のプライドをずたずたにするダメ押しの言葉を言わせたかったのかなぁ。
 また、赤い封筒をやぶって扇風機の風に撒き散らせていると、上から赤い花吹雪が降ってくるというのも合わせすぎだと思います。赤い封筒がこのために準備されたものだったのだとわかるのが興ざめなんですよね。花吹雪はいらなかったんじゃないかなぁ。勝手に動き出す扇風機とビリビリにやぶられた赤い紙(封筒)、エジプトの呪い人形、そして能天気な待子がいるだけですごく絵になる空間だったと思います。

 笑いのシーンについてはキャラクター勝負が多すぎる気がしました。清深のボーイフレンド(?)役の菅原永二さんがそれですよね。菅原さんはすっごく素敵だと思いましたが面白くはなかったです。

 音楽は似たものが何度もかかっていましたが、もっとジャンルを飛び越えたり、はじけて欲しかったです。そう、なんだか大人しくまとまっちゃってる気がしたんですよ、全てが。

 役者さんでは、長男の妻・待子役の吉本菜穂子さんが最高!すっとぼけていて、けなげなキャラクターが愛くるしかった。伊達暁さんとの初夜バトルはわくわくしました♪
 森尾舞さん。東京から帰ってきたの長女役。スタイルばつぐ~ん♪ブラ姿とか超美しい。でも、きれいにまとまったままだったのは残念。もっと壊れたりして欲しかったですね。美人だからなおさら。
 伊達暁さん。長男役。相変わらず素敵なのですが、ちょっと冷静すぎた気がします。熱く激しく生々しい瞬間がもっとあっても良かったんじゃないでしょうか。

作・演出:本谷 有希子
出演:伊達暁 (阿佐ヶ谷スパイダース) 森尾舞(俳優座)吉本菜穂子 菅原永二(猫のホテル) 鳥海愛子(元劇団員) 本谷有希子  
舞台監督:宇野圭一+至福団 舞台美術:中根聡子 照明:中山仁(ライトスタッフ) 音響:あきやま多恵子 演出助手:福本朝子 演出部:大塚辰哉 小道具:清水克晋(SEEMS)+山本愛 衣裳:金子千尋 イラスト:山本直樹 宣伝美術:風間のう 宣伝写真:引地信彦 WEB担当:矢部健太 五十嵐文彦 制作助手:嶋口春香 菅原早人 制作協力:細川展裕 有限会社ゴーチ・ブラザーズ 制作:寺本真美 中島光司 協力:青山円形劇場 株式会社ヤマジ
劇団、本谷有希子:http://www.motoyayukiko.com/index.shtml

Posted by shinobu at 00:28 | TrackBack

2004年11月07日

庭劇団ペニノ『黒いOL』11/03-09西新宿6丁目15番地広場(グリーンタワー横)

 強烈なチラシ・ヴィジュアルだなぁと思って気になっていたのですが、野外にテントを建てていると聞いて、観に行くことにしました。
 演劇ではなくパフォーマンスに分類される作品だと思います。

 新宿西口方面の空き地に、かまぼこ兵舎のように長細い特設テント劇場が作られていました。それだけで圧倒されましたね。今は無き駒場小劇場を思い出しました(駒小はテントではなかったですが、手作り感が似ています)。桟敷にベタっと座って待っていると、黒いスーツ姿の怪しげな男が客席の真ん中の通路を通って舞台に登場します。2人目も出てきて何やらいかがわしげな相談事。正面の黒い幕の向こうに突然小さなホタルのような光が点在しはじめました。わぁ・・・きれいだなぁ~・・・と思っていたら黒い幕が左右に開き、ものすごい舞台が忽然と現れました。(ここからネタバレします)

 かなり深い奥行のある廃墟のような空間。長細く続く舞台の中央にはドロ水の水溜りが数個あり、小さな川のよう。火の点ったろうそくが、水溜りの周りや舞台前面に数十本立てられている。舞台の両脇に黒い服を着た女たちが整列して立っている。ロングのタイトスカートを履いている者もいるが、基本的には白いシャツに黒いスーツの衣裳で揃えられている。汚いシンク、ピアノ、大きな鹿の首。一番奥の一段上がったところに、事務イスが数個並べられているのが微かに見える。

 ドロの水溜りの中にジャブジャブと脚を突っ込んで歩き回る女の子を見るのが、まず気持ち悪かったです。でもそんなことでビビってても楽しめないなぁと思い、なるべくドロは気にしないようにしてリラックスして挑みました。

 舞台面の両脇にいる2人の男は、青いライトで虫(黒いOL)をおびき寄せて、まとめて穴(?)の中に閉じ込め、無駄な労役を強いて管理している。下手手前で男の1人がピアノの生演奏をしているのも、OLの仕事をリズミカルに進めさせるための伴奏のよう。
 舞台奥の一段上がった所から小さなトロッコが転がり落とされてきた。荷物の中身は山盛りのパンティ・ストッキング。それをドロ水で懸命に洗うOLたち。文句をぶつぶつ言いながら洗い終わったパンストを干していくが、途中で作業をやめて休憩室(給湯室?)と思われる窮屈な部屋に入っていく。大人数ですし詰めになりながらタバコを吸いつつ狂ったように談笑する・・・・。
 OL達がストッキングを洗い終わった後に、黄色いヘルメットを被った労働者風の男が天井から落ちて来た。これは意味がわからなかったです。
 作業服の男達(OR?)が出てきて暗転した後、スーツを脱いで裸に近い格好になった一人のOLが、上手手前の壁に空けられた丸い穴からヌっと現れた。彼女は客席に背を向け、舞台奥へと歩いて去っていく。シルエットがとても美しかったです。これがラストシーンでした。

 無事に最後まで観て「これは一体何だったのか」と考えてみたのですが、“不毛”と、そこからの“離脱”もしくは“開放”ではないでしょうか。チラシのコピーには「庭劇団ペニノのオフィス・ランドスケープ」とありますので「会社の風景」を表したんですよね。『黒いOL』というタイトルはそのまま「黒いスーツを着たオフィス・レディー」だとわかってホっとしました。チラシ・ヴィジュアルはどう見てもオフィス・レディーじゃないからね(笑)。「黒い」には色以外にも様々な意味があるのでしょう。
 
 私はOLをしていた時期があるので(今もそれに近い業務をしています)、なるほどなぁと共感したりクスッと笑えたりした部分もありましたが、全面的に同意できるわけではなかったです。でも、庭劇団ペニノとしての「オフィス風景」ですから別に同意なんてしなくてもいいんですよね。
 テント劇場に行くこと自体が面白いし、奥行きと地面があるからこそ出来る作品です。音楽、美術、照明、衣裳などについても細部に渡ってこだわりが感じられます。「これが作りたかった」「これが私のやりたいことだ」という気持ちが伝わってきました。好みははっきり分かれると思いますけど。
 終演後に舞台上を歩いて見て帰ることが出来て嬉しかったです。

作・演: タニノクロウ
出演: 島田桃依 瀬口妙子 墨井鯨子 野中美子 磯野友子 六分一サラ 河野辺舞 野崎浩司 吉野万里雄 海老原聡 野平久志
舞台美術:樋亮太 舞台補佐:鈴木仁美 舞台美術:玉置潤一郎 谷野九朗 照明:今西理恵 音響:小野美樹 宣伝美術:渡辺太郎 演出助手:小野美樹 Web:定岡由子 制作協力:三好佐智子 制作:小野塚央 野平久志 舞台総括:海老原聡 企画・製作:puzz works 協力:(有)quinada 写真モデル:O.J.Loco
庭劇団ペニノ:http://darkmaster.ld.infoseek.co.jp/

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新国立劇場演劇『ヒトノカケラ』10/22-11/03新国立劇場小劇場

 新国立劇場の小劇場をさらに小さく使うTHE LOFTという企画の第1弾(3弾まであります)。
 クローン人間をモチーフにした現代劇です。

 舞台は2005年の日本。KKSという遺伝性の死に至る病にかかっている母子と彼らをとりまく人々のお話。(KKSとは架空の病で、50%の確率で母子感染して40代で発症、症状は自律神経失調と重度の記憶障害で、発症から4~5年で廃人同然となり死亡する、という設定)
 聡子(キムラ緑子)は母親から遺伝したKKS患者で、既に自律神経失調が始まっている。彼女には息子・融(若林誠)がおり、彼こそが聡子が20年前にクローニング出産(母親の遺伝子を受け継がない子供を生むこと)で産んだクローン人間だった。聡子とその妹・真梨子(佐藤あかり)はその事実をひた隠しにして生きてきたが、KKS患者による日本“初”のクローニング出産が発覚したことで、彼らの平穏な生活に破綻が訪れる。

 自分の病気が子供に移ってほしくない一心でクローニング出産をした、というのがこのお芝居の中の事件の発端であり、これからクローン人間の是非を問う時代にはこういうことが一番の懸案事項になっていくと思われます。このお芝居では遺伝子病患者がいかにつらい思いをするか(しているか)という点に、必要以上に重点が置かれていたように感じました。遺伝性の難病は現実にも存在するので、そのリアリティを描くことは大変だし重要だと思うのですが、今作品のテーマであるクローン人間自体にもっと焦点を当てて、掘下げていってもらいたかったです。私は最先端のクローン技術についての知識を得たかったので、それを教えていただけたことは充分嬉しいのですが、ドラマとしては納得いかないことが多く、感情移入できなかったです。感傷的なメロドラマである面ばかりが印象に残りました。
 
 ストーリー展開で腑に落ちなかったことを書きます。
 聡子は息子のクローニング出産のデータが書かれたノートを焼こうとするが、体が思うとおりに動かない。中庭で倒れているところを家政婦に発見され、“ノートをその場に置き去りにしたまま”家に運び込まれる。そしてそのノートを、ES遺伝子バンクの芹沢(KONTA)から「ノートを探してほしい」と“言われたばかり”の“息子”が見つけて、読んでしまう。自分の出生の秘密を知ってしまった息子は、台所で自殺を図ろうとする。のどもとに包丁を突き刺そうとしているところに、“ちょうど”聡子が現れ、聡子と息子の命がけの大喧嘩が始まった。言い合いの末に聡子の夫の死について新たな謎が発覚し、その真相を解き明かすべく息子が聡子に詰め寄った“途端”、聡子に記憶障害が起こり、普通の人間ではなくなってしまう・・・。タイミングが良すぎます。そんな都合が良すぎる展開に、役者さんの迫真の演技も空しく私はちょっぴりシラけちゃったんです。また、細かいことですが、体が思うとおりに動かない聡子がなぜ必死でワープロ打ちをしたのでしょう。あれは妹がやれば良かったのでは?

 女性の体から卵子を取り出して、その卵子とES細胞と合わせて臓器を作るんですね。だから色んな卵子を“買って”集めてるっていうのは怖い。「卵子や細胞は言わばヒトノカケラだ。ヒトになるかもしれなかったものが、肝臓とかホネとかになっちゃうのはどうなの?」という疑問は最もだなぁ。科学を突き詰めると必ず倫理や哲学に行き着くという意味がよくわかります。「あなたはクローン人間を、そしてクローン社会を認めますか?! 」という風に公式ページに書かれていますが(あまりにストレートでちょっと苦笑しちゃう文章ですが)、きっと私達自身がこの選択をしなければいけない日が遠からずやってくるのでしょう。

 THE LOFT企画ということで、いつもの小劇場をさらに半分ぐらいの大きさにして、舞台と客席の距離を近く作られているのですが、臨場感が増したようには感じられませんでした。私は最前列でしたが、通常の新国立劇場小劇場の公演の最前列の時と変わらないんです。たぶん装置が原因なんじゃないかなぁ・・・およそ3階レベルまで作られている大きなものだったので、見上げることが多かったのです。見上げるよりも視線のすぐ前に舞台があって欲しいです。あと、ただのわがままなんですけど、ベンチシートっていうのがつらかった。どうせならもっと「小劇場」の雰囲気を味わいたいと思っちゃいますね。

 美術は金属を使ったシャープで近未来SF的なイメージが強いものだったのですが、戯曲の内容からしてあまり合ってない気がしました。クローン人間よりも家族のドラマがメインだったようですから。映像を使う公演は今すごく沢山あって、どんどんレベルが上がっています。だから大きなスクリーンを使えばいいってわけじゃないんですよね。

 キムラ緑子さんの演技は圧巻。だけど作り物っぽさが垣間見えてしまう演出のせいで、“自分の思うとおりに体が動かない演技”が踊りの振付のように見えることがあり、余計だなぁと感じることがありました。

作:篠原久美子 演出:宮崎真子(崎は違う字です) 美術:二村周作 照明:磯野 睦音響:小山田昭 衣裳:加納豊美 ヘアメイク:林裕子 演出助手:松川美子 舞台監督:茂木令子
出演:キムラ緑子 KONTA 若林誠 上田桃子 佐藤あかり 橘ユキコ
新国立劇場内:http://www.nntt.jac.go.jp/season/s242/s242.html

Posted by shinobu at 16:50 | TrackBack

2004年11月06日

地人会『怒りをこめてふり返れ(原題:Look Back in Anger)』11/02-13日紀伊國屋ホール

 20世紀後半のイギリスの超有名な戯曲です。演劇史の教科書(のようなもの)には必ず出てきます。ジョン・オズボーン作。
 こちらに舞台写真があります(出演女優の岡寛恵さんのホームページ内)。

 1950年代のイギリスの大都会の片隅。貧しい若夫婦ジミイ(高橋和也)とアリソン(神野三鈴)は、小さな駄菓子屋をきりもりしながら生計を立てている。店を手伝っているクリフ(今井朋彦)と一緒に、屋根裏部屋の一室に3人暮らし。ジミイは大学を卒業しているが下層階級の出で、アリソンは上流階級のお嬢さんだった。
 舞台は3人が暮らす部屋。ジミイは比類ない皮肉屋で、休みの日には何かにつけて怒りをぶちまけながら連射銃のようにしゃべり続ける。アリソンはそんなジミイに妊娠したことを告げられないままでいた。ある日、アリソンの友人のヘレナ(岡寛恵)が訪れて・・・。

 PLAYNOTE.NETさん が書かれているように「ジミーの洪水のような台詞の量」、しかも罵声や皮肉ばかりなのには最初は閉口するしかありませんでした。
 第二次世界大戦が終わって明らかに世界は変化しました。「もはや死ぬべき大儀をもっていない」時代に生まれて、自分は何をすべきなのか。「ひとたびピカッ、ドーン!とくればおしまい」である世界で、何を信じて生きていけばいいのか。過去にとらわれない新しい何かが自分の中からどんどんと湧き出てくるのに、世間は旧態依然とした体勢のまま何も変わらないし、自分自身にも具体的な変化はない。それどころか理想とはかけ離れた生活を送っている。自分を取り巻く世界全てに対する怒りと自分自身に対する憤りが爆発して、ジミイのセリフと態度に現れます。

 そう、とにかくジミイは言い過ぎます。よくもこれだけ嫌みや悪口を考えられるよね!?って感心してあきれるほど。たぶんこの作品は、戯曲を読んでも私には良さがわからなかったんじゃないかな。ジミイの罵詈雑言にすっかり打ちのめされて、最後まで読まなかったかも。でも、途中休憩の後から最後までの展開がとても面白かったんです。意外や意外、これでもかこれでもかと、たたみかけるように4人の人間関係に変化が訪れます。パンフレットに書かれていましたが(演出の木村さんと大学教授等の対談)、この戯曲は良く出来たメロドラマなんですよね。この作品を劇場で観ることができて良かったです。

 また、一人一人の人間が本気でぶつかる対話芝居でもあり、ジミイ、アリソン、ヘレナ、クリフの4人が自分以外の全員と一対一で2人芝居のように語り合う作りになっているのです。それは言葉を用いた命がけの戦いだとも言えます。役者さんの演技バトルとしても見ごたえがあり、実際のところ内容がすごく濃いので観ていてしんどかったです。休憩15分を挟んで3時間あったのですが4時間ぐらいに感じました。

 ここからネタバレします。

 上流社会で裕福な両親に守られて育ってきたアリソンは、ジミイと出会った頃は「のびのびしていた」けれど今は全くのびのびしていません。貧しい生活で疲弊していくアリソンを見るにつけ、ジミイは「お前(アリソン)がどんどん平凡になっていくのがいやだった」のです。上流階級への憧れと嫉妬はそのままアリソンへの愛と憎悪となり、ありのままの気持ち以上にぶつかってくるジミイに対して、アリソンはいつも黙って我慢しています。そしてジミイはその沈黙に対しても激怒します。ジミイはアリソンと本音で付き合いたかっただけなんじゃないかな。衝突は避けられないし傷みも伴いますが、何事にも事なきを得ようとする生き方は、昔も今も非難されるべきだと私も思います。

 アリソンの女友達のヘレナがやって来て、しばらく4人で同居している間に、ヘレナは必死にアリソンを実家へ帰るように説得します。妊娠していることも打ち明けられないぐらい、ジミイのアリソンに対する態度はひどすぎましたから。これには観ている方も納得です。「ヘレナ、がんばれ!ジミイなんて一人ぼっちにしちゃえ!」ってなもんです。ヘレナはアリソンの父親に勝手に電報まで打ってくれたので、アリソンは父親に迎えに来てもらって無事に実家に帰ることが出来ました。するとヘレナはそのままジミイの部屋に残り、なんと彼にキスをするんです!!えええええっっ!?アリソンに優しくしているようでいて、実は男を奪うためだったの!?・・・これには度肝抜かれました(笑)。「バカバカバカ!ジミイなんて、突然死ぬとかして居なくなっちゃってよっ!」って言いたくなるぐらいイヤな奴なんですよ、ホント。でも・・・自分の感情をさらけ出す男って、すっごく可愛いんですよね・・・。好きになる気持ちは私にもわかりました(だから女は不幸せになるのですが・・・笑)。

 出て行って数ヵ月後にアリソンは流産してしまい、突然ジミイとヘレナのいる部屋に帰ってきます。ヘレナは自分が犯した罪(アリソンを騙すようにしてジミイと離れさせて、自分がジミイを奪ったこと)に気づいて、ジミイを愛しているけれども、その場を去ることを決意します。これはまだ道徳に力があった時代だからだよなぁと思いました。今の日本で「誰かを不幸にして、その代わりに自分が幸せになんてなれない」と思い直し、潔く身を引く女の子なんているかしら?それよりも「やっぱ正妻がいて面倒だわ。こんなやっかいな恋とはおさらばよ」っていうのが今どきの日本の女の子のような気がします。もちろんヘレナは正しい選択をしたと思いますよ。誰かをわざと不幸せにして、自分がその後釜に座っても、本当の幸せは得られないと私は信じます。

 役者さんは皆さんすごくセリフが多くて、観てる方が同情しちゃうほどでした。同情なんて不要なのはわかっているのですが、そう思ってきちゃうほどの量なんです。特にジミイ役の高橋和也さんはすごかった。高橋さん(ジミイ)、神野さん(アリソン)、今井さん(クリフ)については納得のいく演技でしたが、ヘレナ役の岡寛恵さんについては浅い感じがしましたね。まずヘレナがジミイに惚れているように見えません。また、アリソンが再び登場した時のヘレナの心変わりについても、軽すぎるんじゃないかと思います。もっと決死の覚悟をしてると思うんですよ、ヘレナなりに。ただの恋愛の心変わりじゃなくて、彼女の生き様に関わることだと思うので。
 それはそうと、役者さんの演技があるレベルをしっかりと超えていたこともあって、この作品が言わんとするところは感じることが出来ました。計算された展開と事細かく全部説明してくれるセリフのおかげだと思います。まず戯曲ありきの作品ですね。

原題: "LOOK BACK IN ANGER" by John James Osborne
【キャスト】ジミイ:高橋和也 アリソン (ジミイの妻):神野三鈴  クリフ (ジミイの友人):今井朋彦  ヘレナ (アリソンの友人):岡寛恵  レッドファン大佐 (アリソンの父):有川博
【スタッフ】作:ジョン・オズボーン  訳・演出:木村光一  装置:島次郎  照明:沢田祐二  楽曲提供:小曽根真  衣裳:渡辺園子  効果:斉藤美佐男  演出助手:山下悟  舞台監督:佐藤忠雄  制作担当:友谷達之  制作総務:渡辺江美
地人会HP内公式サイト:http://www1.biz.biglobe.ne.jp/~CJK/ftr_96.htm

Posted by shinobu at 17:07 | TrackBack

チェルフィッチュ『労苦の終わり」』11/03-07横浜STスポット

 今どきの若者の言葉づかいと身体表現をもちいた演劇およびパフォーマンスを作るチェルフィッチュは、岡田利規さんの一人ユニットです。私はもうクセになっているというか、絶対に見逃せないです。

 作品の作り(種類)としては『三月の5日間』と同じ感じでした。何もない舞台に役者がトボトボと現れ、「今から『労苦の終わり』っていうのをやりまぁす」と言って、演技じゃないような演技が始まり、若者言葉で話し続けます。「てゆーかぁ」「なんか~~~でぇ」「私~~なんですけどっていう感じで」「~~とか思ったりしちゃうんですけどって感じで」・・・というような言葉回しで、次々としゃべりたくります。本当に膨大なセリフ量です。

 今回の主題は「結婚というか、夫婦というか。」でした。20代後半から30代前半の男女のお話ですね。これまた『三月の5日間』と同様に、泣いちゃったな~・・・・上滑りしていくような非常に他人行儀な言葉の洪水の中に、本当の感情がふんわりと点っているのが見えてくるんです。悲しい気持ちと嬉しい気持ちが、すっごく遠慮がちに私の方にその手を伸ばしてくるんです。今の日本人の若者って、自分が傷つきたくないという恐れを持っていながら、すごく他人のことを気遣っているんじゃないかな。そういう奥ゆかしさを持ってコミュニケーションしてるのかも、と思いました。休憩時間にすごく優しい気持ちになっている自分に気づきました。
 
 ここからネタバレします。

 A君はBさんと結婚しようと決心した。実はA君には二股をかけているCさんがいたが、ちょっとした言い争いの末、ちゃんと別れた。A君はBさんにプロポーズした。Bさんは喜んだ。A君も嬉しかった。Bさんは家に帰り、ルームシェアしている先輩のDさんに事の次第を打ち明ける。実はDさんは過去に結婚したことがあり(今も結婚はしていて別居中)、旦那のE君とのケンカの顛末を一晩中Bさんに話し込む。次の日、徹夜明けでBさんはA君との待ち合わせ場所に向かう。二人の新居を探すために不動産屋めぐりをすることになっていたのだ。A君と会ったBさんは「結婚について不安になってしまった」と打ち明ける・・・。(登場人物の名前を忘れたのでアルファベットで表記しました)

 私が泣いちゃったのはプロポーズのところと、結婚式のスピーチを数人が繰り返し話すところです。
 A君(江口正登)のプロポーズって本当にダサイんですよ、あんな風に言われたらマジで引くよね!?って思います(笑)。でも、A君がのろのろとそれなりに頑張って気持ちを説明し、同じような動作と言葉を何度も繰り返すのを眺めていると、あぁこのコは本気なんだなってわかってきて、そしてその気持ちだけがリアルに浮き出てくるんです。
 一人の人物をかわるがわる別の役者が演じるのも、単に演出として面白いと感じる他に、先に述べたような「気持ち(感情)」が表層に現れる効果があると思います。また、一人の役者が最初はBさんを演じていたのに、いつの間にいかDさんになっていたりするのも同じ意味で見所です。それにしてもチェルフィッチュに出演する役者さんって大変だよなと思います。

 結婚式のスピーチってあれですよ、どんな結婚式でも同じスピーチをするサラリーマンのオヤジの話。そのスピーチでオヤジは小話をするんですが、内容が「夫婦喧嘩は寝れば直る」っていうどうしようもなくオヤジネタ爆裂なオチなんです(苦笑)。それを登場人物たちが笑える(あきれる)話として話題に出すのですが、違う人物がそれぞれ全然関係ない場面で話し出します。「結婚」という男女の儀式を人類は少なく見積もっても1500年以上続けているわけで、その間に起こった「結婚」の数の分、人間はこのお話に出てくる若者のように悩み苦しみ、おずおずと自分達のささやかな幸せを生み出しているんだなぁと、しかもそれが同時多発的に今も起こっていると思うと、なんだかやるせなくて馬鹿馬鹿しくて、それでいてどうしようもなく可愛くて、今私が生きている世界を愛らしいなと思ったんです。人類の歴史というか、時間の悠久を感じたちゃったんです。
 それにしてもそのオチは間違ってますよね。里中満知子さんも漫画で「男って、こうだから(セックスすれば仲直りできると思ってるから)イヤ!!」って描かれてます(笑)。何もせず無視するよりはせめて「寝る」方がいいかとは思いますけどね。そうね、やっぱり無視が一番いけないよね。このお話では「ひょうひょうとする」という風に表現されていたと思いますが。
 
 Bさんが待ち合わせ場所まで行く途中の電車の中で爆睡して夢を見ているシーンを、同じ演技・演出方法で見せたのは面白かったですね。黄色い照明もバカっぽくてよかった(笑)。そう、今回は照明がすごく効果的できれいでした。

 上演時間が休憩(10分?)を挟んで2時間強っていうのは長く感じました。会場内でビールを売ったりして「気軽に眺めててください」っていう姿勢なんだと思ったので、退屈したりしんどくなった時は私は目をつぶって声だけ聞いたりしていました。やっぱり繰り返しが多いと感じると、それが私の頭の中でノイズになってしまうんです。だから受け入れ手段を耳だけに絞りました。耳をふさいでも良かったのにそれをしなかったということは、私は言葉を聴きたいと思っていたのでしょうね。

 ガーディアン・ガーデン公開2次審査会も合わせるとチェルフィッチュを観るのは4度目になりますので、お馴染みの役者さんも出てきました。なんかすごく好きになっちゃったなぁ・・・。特に『三月の5日間』でラブホテルに4泊5日したカップルを演じられていた山崎ルキノさんと山縣太一さんは、『WE LOVE DANCE FESTIVAL』でも空調バトルする男女役で出演されていて、私はすっかりファンになっています。今回もすごくいとおしい気持ちで見つめてしまいました。

 最後に出てきた別居している男(E君)役のトチアキタイヨウさんだけ、完全に毛並みが違いましたね。なんか年相応の人が出てきちゃったというか、生っぽかった。岡田さんは意図的にそう作られたそうですが、私はちょっと怖かったな。役者さんの個人的な主張を感じて、お説教をされているような気にもなりました。
 観客が生きている現実は演劇の中で示される現実と同じように厳しいでしょうし、もしかするとそれよりもつらいものであることが多いんじゃないかと思うんです。だから、嘘やファンタジーの中から知らない内に観客の心の中の現実に触れることの方が、実は現実というものを感じさせるのに近い方法なのではないかと思います。世界にはさまざまな表現方法がありますが、私はわざわざオブラートに包んだくれたり、包装紙に包んでリボンをかけて、メッセージも添えてある丁重なプレゼントとして受け取るのが好きなのでしょう。その方が伝わる速度が早いですしね。

 演劇の観客だけでなく、ダンス・パフォーマンスの観客もチェルフィッチュを観に来ています。演劇であると同時にダンス・パフォーマンスでもあるのは、チェルフィッチュのオリジナリティだと思います。

STスポット演劇フェスティバル スパーキング21参加作品
作+演出=岡田利規
出演=江口正登/東宮南北/三木佳世子/山崎ルキノ/山縣太一/松村翔子/トチアキタイヨウ
チェルフィッチュ:http://homepage2.nifty.com/chelfitsch/
スパーキング21:http://www.jade.dti.ne.jp/~stspot/stage/index.html#spa

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2004年11月04日

tpt『ナイン-nine THE MUSICAL-』10/29-11/14(10/28プレビュー)アートスフィア

 tpt10周年記念公演、10年間で始めてのミュージカル、しかも演出家のデヴィッド・ルヴォーさんが去年トニー賞を受賞した『nine(ナイン)』を日本語・日本人キャストで作るなんて、必見の中の必見だと思っていました。なのに客席がかなり空いているという噂。これは宣伝が悪かったのでしょうね。

 1960年代のイタリア。売れっ子映画監督のグイードは女優のルイーズと結婚しているが、二人の仲は破滅寸前。脚本も書けないしアイデアも出てこないグイードは、何かのひらめき・癒しを求めて妻と一緒にヴェニスの温泉に旅行に行くことにした。しかし有名なリゾート地には愛人やプロデューサー、女優、記者などが押しかけ、とても休暇など取れそうもない。追い詰められたグイードは、その温泉で映画を撮ると言い出して・・・。

 ストーリーはよく覚えていません。だって・・・女が最高に美しいんですものっ!!お話なんてどーでもいい(笑)!60年代の女優ルックで歌い踊るゴージャスな女たちに、ただただ見とれてしまいました。

 装置にもすごく驚かされました。銀色のスチール製のらせん階段から、完璧にドレスアップした16人の女優達が高いヒールをコツコツかき鳴らしながら降りてくるオープニングにシビレましたね~。たぶんこのときの私の顔はひどかったと思います。口をポカーンと開けて、最高の呆け顔をしてました(苦笑)。そして後半の仕掛け(ネタバレするので後に書きます)が、もっともっと凄かったんです。
 
 演出は完全に大人向けですね。スタイリッシュでクール、そしてエロティック。幻想的でちょっと不条理。60年代を舞台にしておきながら、空間全体のイメージは近未来的。tptの企画・製作ですからセンスの良さの意味では期待通りです。

 さて、この作品はミュージカルです。だから何よりも歌が命だと思うのです。非常に残念なことに、主役のグイード(福井貴一)とグイードの妻ルイーザ(高橋桂)の歌唱力が、とてもおぼつかなかった。安心して聞いていられないレベルです。だから、いくら演出や衣裳、装置が凄くても「このミュージカルは必見ですよ」とはお薦めできないんですよね。

 この作品はイタリアの映画監督フェデリコ・フェリーニの『8 1/2』からインスピレーションを受けて書かれたものですが、タイトルは9歳を意味しています。グイードは9歳の時に神学校を抜け出し、海辺でジプシーのような女と出会うのですが、そこで大人の世界を知ってしまいます。9歳の時に突然大人になってしまった、そして大人になっても9歳の頃のままでいるグイードにとっての、女(母や恋人、愛人、妻、仕事仲間などの「女」全て)が描かれます。
 この作品は男の人が観た方が共感できるんじゃないかなぁと思いました。私は「そっか。男の人はこんなに小さい頃から女というものに翻弄されて、傷つけられて、魅せられて、大人になってしまうんだなぁ」と、ちょっぴり教えられたような気持ちでした。

 (ここからネタバレします)

 舞台美術はタイプの違う二つのイメージが混在していました。スチールとすりガラスで出来た階段やキャットウォークは、硬質で現代的な印象です。それに対して床や両袖の壁は、リゾートのスパを具体的に表す茶色の石やタイルで出来ています。
 グイードとルイーズは温泉(スパ)目当てでヴェニスのリゾートホテルに訪れるのですが、なんと舞台に水が張られるのです!舞台奥の壁は最初、白いカーテンで覆われていて、第1幕の終盤から徐々に開き始め、絵が見えてきます。それがチラシのメインヴィジュアルにもなっているボッティチェリの「春」の一部分。よく見るとタイルで出来ているようなんです。足元の方が割れていたり、絵の隙間には小さなタイルが敷き詰めてあったり。水が張られる前にまず、その絵が水に濡れていくのです。色々な要素がめちゃくちゃに錯綜してきて、それでいて美しい空間でした。

 16人の女優さんの中でも最も必見なのはカルラ役の池田有紀子さんです。完全にシースルーのエロティックなミニドレス(あれはほぼ裸と言っていいです)で、色っぽいため息をつきながらグイードをガンガンに誘惑します。コケティッシュで子供っぽい性格なのにエロエロなんだもの(笑)、誰もが彼女にぞっこんになっちゃいますよっ。ブロードウェイ版と演出はほぼ同じだそうですが、シーツに包まって天井から降りてきて、テレフォンセックス同然でグイードを誘い、絶頂に達し(?)つつ今度は逆さづりで天井に掃けるんですよっっ!!これを観なきゃ日本の女優を語れないですよっ(笑)!

 プロデューサー役。大浦みづきさんも豪快でした。グイードとタンゴを踊るのですが、細くて長いおみ脚に目は釘付け!観客に話しかけてアドリブもまじえながら、会場の空気をどんどんと豊かにしてくださいました。大スターの貫禄でした。

 9歳の頃のグイードを演じる子役の男の子(樋口真)の歌が素晴らしかったです。少年にしか出せない声ですものね。最初は子役ってちょっと気が散るなぁと思ったのですが、後半になって大活躍。歌がすごくうまくって感動しました。

 パンフレットにtptの来年の予定が載っています。この『nine』は来年6月にまたアートスフィアで再演されるようです(その前に新MBS劇場@大阪で上演)。そちらの方が完成度が高くなるのではないでしょうか。

 私が観た回は関係者のご招待で埋まったのであろう、8割方満員状態でした。アートスフィアのロビーに舞台関係者が詰め寄せている雰囲気は独特です。お年を召した男性がこぞって話し込んでいたり、ミュージカル・ファンがいたり、小劇場の役者さんがいたり、振袖姿の子供がいたり、不思議な客層でした。

Book by Arthur Kopit Music and Lyrics by Maury Yeston Translated by 青井陽治
Directed(演出) by David Leveaux(デヴィッド・ルヴォー)
with nine the company:福井貴一/高橋桂 池田有希子 純名りさ 井料瑠美 岡田静 江川真理子 鈴木智香子 麻生かほ里 山田ぶんぶん 高塚いおり 高汐巴 剱持たまき 花山佳子 田中利花 安奈淳 大浦みずき/永嶋柊吾 樋口真
Choreographed(振付) by Jonathan Butterell / Gustavo Zajac 美術:スコット・パスク 照明:沢田祐二 衣裳:ヴィッキー・モーティマー ヘアメイク:鎌田直樹 音楽Superviser:樋口康雄 音楽監督:千葉一樹 Sound Design(音効): 山本浩一 舞台監督:北條孝/有馬則純 技術監督:小川亘
tpt:http://www.tpt.co.jp

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2004年11月02日

世田谷パブリックシアタープロデュース シリーズ「レパートリーの創造」『見よ、飛行機の高く飛べるを』11/01-21シアタートラム

 1997年に青年座で初演された永井愛さんの戯曲をフランス人のアントワーヌ・コーベ氏が演出されます。青年座版は黒岩亮さんの演出で明治時代の名門女学校をリアルに再現した正統派の新劇作品でした。清楚な袴姿の女学生たちにしみじみ感動したのを覚えています。
 しかしながらこのアントワーヌ・コーベ版は、抽象的な舞台空間で、戯曲の背景となる時代色を完全に排除し、実験的演出が多々ある冒険的作品でした。

 メルマガ号外へあと一歩、の大感動でした。土日以外はぴあでも残席ありです(18:30開演だからかしら)。装置も衣裳も照明も音楽も演出も、輝ける女の子たちも。きっと忘れられない舞台になります。

 平塚らいてう、与謝野晶子等の「新しい女性」が生まれてきた頃、明治44年の師範女学校のエリート少女たちの青春物語です。

 劇場に入ったとたんに、うわーーーっ!っと感激しました。舞台が青年座版と全然違うんですもの!ステージの壁全部がちょっとオレンジと黄味がかった白い布にくるまれているんです。フワっとではなく、壁にべっとりと布がはりついてる感じ。布の質感はちょっと毛羽立った和紙のよう。暖かい色一色で全体を包み、ぼんやり守られているような気分にさせておきながら、少し乾いた死をイメージさせる空虚さもあります。上手側の客席通路に作られた舞台の床同様に白木でできた短い花道は、そのまま舞台上へ続き、だんだんとゆるやかなスロープとなって上手前方から下手後方へ向かって上っていきます。スロープの奥には、イントレのように簡単に組まれた2.5階分ぐらいの高さの台があります。学内の見回りをする老女教師が客席に背中を向けてスタンバイする場所なのです。それ以外には具体的には使われず、静かなオブジェとしてそこにひっそりと有りました。装置そのものが現代アート作品のようなんですよね。

 女学生の衣裳は舞台と同系のベージュを基本としたワンピースと、その上からひっかける短いカーディガンで統一されています。部屋着(パジャマ?)は鮮やかな色ですが同じくワンピースで、全員色違いです。可愛かったな~・・・ワンピースの魔法と言いましょうか、女の子達が普通に可愛いんです。教師役はスーツ、ジャケットとスラックス、首まで詰まったワンピースなど、現代風教師ルックでした。色が全体的に優しいパステル系ですので、舞台にマッチします。
 照明も詩人のようでしたね~・・・。中でも暗転が美しい!めちゃくちゃゆっくりと暗くなっていくのですが、最後の完全暗転の直前だけ一気に落ちるんです。残像が鮮やかに残って、暗転前と暗転後の味わいが非常に印象深いものになるのです。ろうそくの火とのコンビネーションや、シーンごとの微妙な差までこだわって作られていたと思います。どのシーンも個性的ですごくきれいでした。
 音楽は、あの楽器、何なんでしょ、あの、管楽器。トランペットよりも暗い音だった気がする・・・クラリネット?無知でスミマセン。ジャズ調で軽くむせぶように鳴る管楽器の音楽にしびれました。何度か流れましたね。それも意外なところで。

 お話自体は永井愛さんの戯曲ですからしっかりとした構成と起承転結があります。でも、演出はそういうルールをするりとかわしていくように、様々な手段が試されていました。突然ダンスのような動きをしたり、客席の方を向いてセリフを棒読みし続けたり、6人ぐらいで揃って簡単な振付の動きをしながら会話したり。ドキっとしたりあっけにとられたりしながら、はっきりとしたかつ舌で届けられる言葉たちに聞き入りました。

 ここからネタバレします。 

 青年座版と比べると、ポイントポイントの演技の解釈がかなり違います。接吻シーンは初演の時に私が感じた“恋のときめき”よりも、ものすごい“衝撃”がありました。少女達の守られた世界の中に突然、招かれざる野獣が進入してきたことがわかります。
 その野獣(板谷順吉役:藤沼剛)にかんざしを挿してもらったことがバレて退学になる梅津(中村美貴)が、「はい!うっとりしておりました!」とはつらつとした声で堂々と明るく言い切るのも、青年座版とは逆でした。青年座版ではじっくりと思いつめたように発声していたと思います。どちらも心にずしりとくる演出でしたが、アントワーヌ・コーベ版の方が瞬発力があるような気がします。
 新庄先生(笠木誠)が光島(井川遥)に告白するシーンでは、二人とも観客の方を向いて言葉を発していました。新庄先生のひっそりと一途に想い続けた恋心が、かすかに見え隠れするのがくすぐったくて、なんとも微笑ましくて、観ている私の方が恋わずらいのため息をしそうでした。
 アントワーヌ・コーベさんの演技の演出は、ゆっくりじっくり見せるところは遠慮なく長くするんですが、セリフの前後およびセリフとセリフの間はかなりシャープに時間を詰めています。それってめちゃくちゃかっこいいと思うんですよ、ビビっとしびれちゃうんです。

 いったんは学生の大半を占める80人もの同意を得たものの、運動会までちゃんとストライキをしていたのは光島と初江(魏涼子)だけでした。クライマックスは、新庄先生のプロポーズを受けることにした光島が初江にそれを打ち明ける、2人だけの対話のシーンになるのですが、まさかそこに役者全員が出てくるとは思いませんでした。光島は完全に棒読みになり、初江もしゃべっている内容とは全然かけはなれた、穏やかな表情でゆったりと歩きます。セリフを話さない(本来ならその場にはいない)役者は、ほぼ全員が客席に背を向けて静止して立っています。舞台の両サイドに、かんざし職人の順吉(上手)と退学した梅津(下手)が立っていますが、彼らは客席の方を向いています。ここで、客席に背中を向ける人間(社会に適合する方を選んだ者)と、客席に顔を向けている人間(自分の心に従って生きることを選んだ者)が表現されています。

 最後の「飛行機」のシーンは一体どうやるんだろうと、青年座版の時と同様に今回もかなり期待していました。すると・・・まさか客席を使うとは!!初枝は客席の一番後ろに設置された照明に向かって、客席のど真ん中のイスの上を観客の手を借りながら登っていくんです。スゴイ!ここで物語の登場人物と観客がつながりました。初江は、彼女の生きた時代では異端でしたが、今はこうやって暖かく手を差し伸べられる人なのです。客席を登っていく初江を背中から見つめる光島がいます。舞台に背を向けた人たちはその体勢のまま右手を上に伸ばし、ゆっくりと左右に振るのです。まるで初江を見送るように。

 井川遥さん。光島役。見ていて幸せになる女優さんでした。言葉もはっきり、清楚で、まっすぐで、美しい。ヒロインばっちりです。私にとって「彼女が出るなら観たい」と思える女優さんです。パルコ劇場の『儚 HAKANA』で初舞台、その後シアタートップスの『美しきものの伝説』に出てらっしゃいました。これが3度目の舞台なんですね。
 魏涼子さん。メガネの初江役。宮田慶子演出の青年座公演『乳房』をはじめ、超グラマーな熟女イメージでしたので、何度もプログラムを見直しました。「ホントに魏さん!?」って(笑)。頭でっかちでギスギスした、お世辞にも美人とは言えない女の子役なんですもの。迫真の演技でした。素晴らしかったです。
 久保酎吉さん。校長先生役。大人の「権力」を完璧に表してらっしゃいました。ひとつひとつの動きに意味と説得力があり、この作品の中で一番その芸に魅せられた役者さんでした。

 シアタートラムのイスで休憩15分込みの3時間はちょっぴりお尻にはつらいかな・・・とも思いましたが、この演出はなかなか観られないものだと思います。ぜひこの機会を逃さないでください。

 【雑談】客席に、昨日千秋楽だった『楡の木陰の欲望』の演出家アッカーマンさんと主役のパク・ソヒさんがいらっしゃいました。休憩時間にパクさんがアッカーマンさんにストーリーを英語で説明してらっしゃいました。そうですよね、日本語ですものね。
 青年座の檀臣幸さんがいらしたのですが、下北沢5劇場同時公演はもうすぐですよね。『深川安楽亭』が楽しみです。

作:永井愛 演出:アントワーヌ・コーベ
出演:井川遥/魏涼子/中村美貴/山谷典子/もたい陽子/伊勢佳世/村松えり/ともさと衣/笠木誠/藤沼剛/谷川清美/塩山誠司/久保酎吉/冷泉公裕/大方斐紗子/八木昌子
美術:二村周作 照明:大野弘之 衣裳スーパーバイザー ヘアメイクアドバイザー:林裕子(スタジオAD) 舞台監督:田中直明 プロダクションマネージャー:山本園子 技術監督:眞野純 通訳:堀内花子 演出助手:中野志朗 衣裳:和合美幸 宣伝美術::有山達也 宣伝写真:関めぐみ 制作:笛木園子 
世田谷パブリックシアター内:http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/jouhou/04-2-4-43.html

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2004年11月01日

メルマガ 2004年11月のお薦め舞台

 2004年11月のお薦め舞台10本+αをご紹介します。
 先月のベスト3のうち、2本が今も上演中です!

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 “しのぶの演劇レビュー” Vol. 5     2004.11.1  325部 発行

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   今、面白い演劇はコレ! 年200本観劇人のお薦め舞台♪
                   
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 ◎このメルマガについて

 年間200本以上の様々な舞台作品を観ている高野しのぶが発行する、
 “今、東京で観られる面白い演劇”をご紹介するメルマガです。
 ご登録いただきありがとうございます!

 演劇は、その時その場所でしか味わえない、とっておきの感動体験です。
 世界中で最も公演数が多いと言われている東京では、
 素晴らしい作品がたくさん上演されています。
 そこで、過去5年間で1000本もの舞台作品を観てきた私の目で確かめて、
 オンタイムでお薦め演劇情報をお届けするのが、このメルマガです。

 毎月1日に私が観るお薦め公演10本のご紹介メールを配信します。
 そして、実際に観に行って面白い作品に出会ったら、
 その翌日の午前中までに、お薦め作品の“号外”を配信します。
 これで、とっておきの公演を見逃すことはありません♪
 


○○ 今回のもくじ
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 ◆1【今月のお薦め10本+α】
   
   ◎No.1→ 新国立劇場『喪服の似合うエレクトラ』
       11/16-12/05新国立劇場 中劇場
       《東京公演後→松本》
       http://www.nntt.jac.go.jp/season/s237/s237.html

 ◆2【先月のベスト3】

   ◎No.1→ ニ兎社『新・明暗』
       10/22-11/07世田谷パブリックシアター
       《東京公演後→札幌、滋賀、大阪》★東京公演残席アリ
       http://www.nitosha.net/stage/index.php

 ◆3 【騎馬オペラ ジンガロ『ルンタ』11/27発売開始!】

   ◎来年3月に来日する、馬と人の奇跡のパフォーマンスです。

 ◆4 【映画『恋の門』を観てきました!】

   ◎大人計画の松尾スズキさんの初監督作品です。小刻みに爆笑。

 ◆5 【パフォーミング・アーツ・マガジン“Bacchus”発売中!】

   ◎Kinokuniya BookWebで購入できます!
    http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-NIPS=9978823190

 ◆6【編集後記】

   ◎11月、12月は大御所オン・パレードです。
   ◎しのぶのいちおし俳優がパルコ劇場『LOVE LETTERS』に出演!

 ◆7【このメルマガについての注意事項】

   ◎はじめての方はどうぞお読みくださいね♪


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 ◆1 【今月のお薦め10本+α】
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 ※★印がいちおし公演です(3本)。私が観に行く順に並べています。
 ※掲載内容:主催・『タイトル』・日程・会場・URL・コメント


1.チェルフィッチュ『労苦の終わり』
  11/03-07横浜STスポット
  ☆今どきの若者の言葉づかいと身体表現をもちいた演劇。
   一度ハマるとやめられない、小劇場演劇界の新しい才能。
   http://homepage2.nifty.com/chelfitsch/


2.世田谷パブリックシアター シリーズ「レパートリーの創造」
  『見よ、飛行機の高く飛べるを』11/01-21シアタートラム
  ☆永井愛の戯曲をフランス人のアントワーヌ・コーベ氏が演出。
   シアタートラムに花道があるようです。
   http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/jouhou/04-2-4-43.html


3.シベリア少女鉄道『VR』
  10/29-11/10下北沢駅前劇場
  ☆やっぱり見逃したくないシベ少。
   今度はどうやって騙してくれるのかな?
   http://www.siberia.jp/


4.新国立劇場『二人の女兵士の物語』
  11/08-21新国立劇場 小劇場
  ☆THE LOFTシリーズの第3弾。
   今度こそアタリであって欲しい。
   作・演出:坂手洋二 出演:小島聖、宮島千栄
   http://www.nntt.jac.go.jp/season/s243/s243.html


5.ク・ナウカ『マクベス』
  11/11-21下北沢ザ・スズナリ
  ☆利賀、パリで上演され、東京初演です。
   http://www.kunauka.or.jp/jp/index.htm
 

6.第11回BeSeTo演劇祭東京開催参加 Ort-d.d『こゝろ』
  11/10-11学習院女子大学 やわらぎホール
  ☆倉迫康史氏が構成・演出する夏目漱石。
   なんとチケット代が1,000円(全席自由 前売・当日共)!
   http://ort.m78.com/


★7.アトリエ・ダンカン プロデュース『8人の女たち』
  11/19-12/12アートスフィア
  ☆日本の大女優の競演!
   原作映画が激ゴージャス&超面白かったので!
   http://www.duncan.co.jp/play/8femmes/


★8.大人計画『イケニエの人』
  11/11-12/05世田谷パブリックシアター
  《東京公演後→大阪》
  ☆3年半振りの松尾スズキ新作本公演。
   前売り券は完売しています。
   http://www9.big.or.jp/~otona/page003.html


9.サードステージ『リンダ リンダ』
  11/16-12/05シアターアプル
  《東京公演後→大阪、福岡》
  ☆全編ブルーハーツの曲を使う音楽劇。
   これは・・・伸るか反るか、ですね(笑)。
   私は北村有起哉さん目当てです。
   http://www.thirdstage.com/knet/lindalinda/pre.html


★10.新国立劇場『喪服の似合うエレクトラ』
  11/16-12/05新国立劇場 中劇場
  《東京公演後→松本》
  ☆ユージン・オニール作、栗山民也演出。
   出演:大竹しのぶ、堺雅人、吉田鋼太郎、津嘉山正種、三田和代、他
   http://www.nntt.jac.go.jp/season/s237/s237.html

  ●お薦めポイント●
   スタッフ、役者は名実ともに日本最高級の人材ばかり。
   同じくユージン・オニール作『夜への長い旅路』@新国立劇場も
   非常に質の高い作品でした。
   残念(当然)ながら、前売りチケットは完売です。ぜひ当日券を!


★+αその1.劇団青年座創立50周年記念 下北沢5劇場同時公演
  11/25-12/5の約10日間、下北沢の5劇場を青年座が占拠!
  ☆同時に5作品上演なんて・・・凄すぎます。私は『空』を観ます。
   『諸国を遍歴する二人の騎士の物語』@駅前劇場
    作:別役実 演出:伊藤大
   『桜姫東文章』@OFF OFFシアター
    作:鶴屋南北 演出:鈴木完一郎
   『友達』@「劇」小劇場
    作:阿部公房 演出:越光照文
   『深川安楽亭』@ザ・スズナリ
    作:山本周五郎 脚本:小松幹生 演出:高木達
   『空』@本多劇場
    作:福島三郎 演出:宮田慶子
   http://www.seinenza.com/performance/shimokita/


★+αその2.私は観に行けません。
 フィリップ・ジャンティ『バニッシング・ポイント』
  11/09-14ル テアトル銀座
  ☆一度は絶対に観た方がいい、フィリップ・ジャンティの魔法。
   人形やドア等のちょっと不気味可愛いアイテムと、
   ダンス、マイム、ギミックで紡ぐフランスのエスプリとユーモア。
   http://www.parco-play.com/web/page/information/vanishingpoint/


★+αその3.私は5月に観たので行く予定はしていません。
 第11回BeSeTo演劇祭 日本代表作品 山の手事情社特別無料公演
  『道成寺』11/22-23(ソワレのみ 計2ステージ)早稲田大学 大隈講堂
  ☆チケットが無料! 11/8(月)より予約開始です。
   http://www.yamanote-j.org/
   レビューはこちら↓
   http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2004/0527013938.html


 ◎しのぶの11月の全予定(25本+α)は都合によりまだUPしていません。
  11/2中にscheduleページに掲載いたします。ごめんなさい。
  http://www.shinobu-review.jp/schedule.html


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 ◆2 【先月のベスト3】
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1.ニ兎社『新・明暗』
  10/22-11/07世田谷パブリックシアター
  《東京の後→札幌、滋賀、大阪》
  http://www.nitosha.net/stage/index.php
  ☆原作:夏目漱石「明暗」
   シアタートラム公演から2年、全てがグレードアップした再演です。
   永井愛さんの脚本・演出にシビれてください。
   公演サイトに残席数が事細かに公開されています。東京は残席アリ!
   【当日予約引換券ネット受付もあります↓】
    http://altsys.jp/nitosha/today/ticket.php
  *レビューはこちら↓
   http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2004/1025015515.html


2.朝日新聞社/TOKYO FM/テイト・コーポレーション主催
  『ミュージカル「ウモジャ~The Spirit of Togetherness」』
  10/21-24ゆうぽと簡易保険ホール
  http://www.tate.jp/umoja2004.html
  ☆南アフリカ発のオール黒人キャストのミュージカル。
   観たことのないダンス、感じたことのないグルーヴ感!
   南アフリカのミュージカルはかなりレベルが高いらしいです。
  *レビューはこちら↓
   http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2004/1022022256.html


3.テレビ朝日・シーエイティプロデュース
  『マダム・メルヴィル』10/15-11/14スフィアメックス
  http://www.ints.co.jp/melville/madamemelville.htm
  ☆有名スター(石田ゆり子さんと成宮寛貴くん)が共演する
   ちょっとエッチで切ないラブ・ストーリー。
   鈴木裕美さんの演出、松井るみさんの美術にすっかり魅了されます。
   11/14まで上演中。ぜひご覧ください!
   【当日券前日予約TELあり 10:00~】チケットスペース 03-3234-9999 
  *レビューはこちら↓
   http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2004/1028210053.html


 ◎『新・明暗』と『ウモジャ』はメルマガ号外を出しました。
  メルマガのバックナンバーはこちら↓で全て公開中!
  http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000134861

 ◎各レビューに、作品のチラシ画像を掲載し始めました。
  作品の“顔”であるチラシが見られることで、
  イメージが伝わり易くなったのではないかと思っています。
  華やかになったREVIEWページ↓を覗いてみてください♪
  http://www.shinobu-review.jp/review.html


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 ◆3 【騎馬オペラ ジンガロ『ルンタ』11/27発売開始!】
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 フランスが生んだ、馬と人が織り成す、極限の芸術。
 騎馬オペラ ジンガロ日本公演『ルンタ~Loungta~』のチケットが
 11/27(土)10:00AMより、一般発売開始します!
 
 数年来の念願が叶い、やっと日本公演が実現します。 
 観た方曰く、
 「観ている最中、ずっと涙が流れっぱなしだった」
 「テントの中に入った瞬間、何ともいえない心持ちになった」
 「言葉では説明できない。目の前に奇跡がある。」
 円形フィールドを満たす、馬と人の心が完全に一体となった世界。
 日本にいながら体験できる、このチャンスをぜひ掴んでください!

 Weeklyぴあ10/28号では見開きで大きく特集されました。
 有楽町マリオンの大型ヴィジョンやテレビでもCMが流れています。
 11月発売の雑誌にもかなり多く取り上げられますので、
 どうぞチェックしてくださいね♪

 【公演情報】
  ジンガロ日本公演『ルンタ~Loungta~』
  2005年 3/12-5/8 @木場公演内ジンガロ特設シアター
  作・演出:バルタバス 出演者:25名 出演馬:25頭
  平日19:30開演/土.日.祝17:00開演
  上演時間1時間45分(休憩なし)
  ※タイムテーブルは変則的ですのでウェブサイトをご参照ください。

 【チケット 11/27(土)10:00AMより一般発売開始】
  プレミアムシート24,000円/SS席18,000円/S席14,000円/A席8,000円
  ※完全円形の舞台の周りをぐるっと囲む客席になりますので、
   舞台に近いほどチケット価格が高い設定になっています。

 【プレイガイド】
  チケットスペース
   http://www.ints.co.jp/zingaro/zingaro.htm
  電子チケットぴあ
   http://t.pia.co.jp/news/ad/zingaro/zingaro.jsp
  イープラス
   http://eee.eplus.co.jp/s/zingaro/

 【お問い合わせ】
  チケットスペース TEL 03-3234-9999

 ★私はジンガロ日本公演 実行委員会事務局で働いています。
  ジンガロについてREVIEWページでも紹介しております。
  ジンガロの記事はサイト右下の「その他」カテゴリー内にあります。
  http://www.shinobu-review.jp/review.html


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 ◆4 【映画 『恋の門』を観てきました!】
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 ◎日本アスミック・エース エンタテインメント
  『恋の門』10/09~渋谷シネマライズ、他
  脚本・監督・出演:松尾スズキ
  原作:羽生生純(同名漫画「恋の門」)
  http://www.koinomon.com/

 ●大人計画の松尾スズキさんの初監督作品です。脚本も書かれています。
  始まってから終わるまで、松尾色全開!

  朝一番の回を観に行ったので結構空いてたんです。
  だから笑い声も少なかったんですよね、皆さん眠かったのかしら。
  「え?ここ爆笑だよね??」と思いつつ、ちょっと遠慮していたんですが
  中盤ぐらいからは一人で思いっきり笑わせてもらいました。 
  あと、キスシーンがですねぇ・・・めちゃくちゃステキです♪

  演劇界的に豪華キャストでしたが↓
  出演:松田龍平/酒井若菜/小島聖/田辺誠一/片桐はいり/
     市川染五郎/大竹まこと/小日向文世/大竹しのぶ・・・

  私には小島聖さんがツボ!セクシーだしキレてるし、
  もーずっと小島さんが出てくるのを待ってる状態でした。
  超イケてない男キャラの松田龍平さんも必見です(笑)。

  上映館スケジュール↓
  TSUTAYA online 映画
  http://www.tsutaya.co.jp/cinema/cinema_info.zhtml?TITLE_ID=5514


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 ◆5 【パフォーミング・アーツ・マガジン“Bacchus”発売中!】
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 ◎私が書いた劇評が雑誌に掲載されました。

  ●パフォーミング・アーツ・マガジン[バッカス]
   Bacchus♯O2 2004 winter 2004年10月8日発行
   定価:750円+税
   編集・発行 Bacchus編集室
   発売 論創社
      〒101-0051東京都千代田区神田神保町2-23
      TEL 03-3264-5254 FAX 03-3264-5232

  こちらでネット購入できます!
  Kinokuniya BookWeb(紀伊国屋書店ネットショップ)
   http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-NIPS=9978823190

  劇評を書いた作品はこちら↓(レビューはUPしていません) 
   Ort-d.d、東京国立博物館『四谷怪談』
    07/01-07東京国立博物館「表慶館」
    http://ort.m78.com/yostuya.html 

  ※[バッカス]はこれまでに3冊発行されています。
   バックナンバー(創刊準備号と01号)は、
   http://www.amazon.co.jp でも購入できます。
   サーチから、和書→バッカス で検索してください。
   美しい舞台写真がいっぱいですよっ!


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 ◆6 【編集後記】
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 ◎怒涛の演劇月間だった10月は、風邪と台風で2本ほど断念しましたが
  たくさんの良作に出会えた幸せな月でした。号外も2本出せましたし♪
  11月から年末年始にかけては有名どころで豪華なラインナップです。
  大人計画、NODA MAP、新感線、三谷幸喜、藤原竜也のロミジュリ等が
  重なっているのです!嬉し涙の年末になりますように・・・・。 


 ◎『LOVE LETTERS』に北村有起哉さんが出演!
  私が大好きないちおし俳優の北村有起哉さんが
  パルコ劇場の朗読劇『ラヴ・レターズ』に1ステージだけ出演されます。
 
  12月6日(月) 19:00 北村有起哉&田中美里
   http://www.parco-play.com/web/play/loveletters/news.html
   前売り開始:11月13日(土)10:00~
   前売¥4,500(全席指定・税込) 当日¥5,000(全席指定・税込)

  『ラヴ・レターズ』は、アメリカ人カップル(アンディとメリッサ)が
  幼い頃から数十年に渡って書き綴った往復書簡からなる戯曲で、
  男女一人ずつの俳優が舞台上でイスに座って、その台本を朗読します。
  北村有起哉さんは本当に演技がお上手で魅力的な方です。
  ぜひ12/6はパルコ劇場で、静かな大人の愛の時間を過ごしましょう!


 ◎「下北沢に新劇場?」
  昨日聞いたのですが、下北沢にまた新しい劇場が出来るとか?
  噂ですので真相はわかりませんが、もし本当ならば
  演劇の街・下北沢がますます活気付くことは間違いないですねっ。


 ◎「劇場に足を運ぶことが、日本人の習慣になって欲しい」
  それが私の望みです。
  これからもこつこつ、地道に進んで行きたいと思っております。
  皆様、どうぞよろしくお願いいたします♪


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Posted by shinobu at 00:39 | TrackBack