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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年12月05日

青年座 下北沢5劇場同時公演『諸国を遍歴する二人の騎士の物語』11/25-12/5下北沢駅前劇場

 別役実さんの作品で、湯浅実さんと森塚敏さんが出演されるので観に行きました。
 下北沢駅間劇場でこのキャストって、めちゃくちゃ貴重ですよね。貴重といえばOFF OFFシアターで女優さんが23人出演中というのもすごいんですけど(笑)。

 乾いた風が吹きすさぶ荒野に、ぽつんと「移動式簡易宿泊所」がある。そこに医者、看護婦、神父が仕事を求めてやってきた。とうとう待ちに待った客がやってきた、と思ったら、それは老いた2人の騎士とその従者2人だった。

 まず、駅前劇場の装置がすごかったです。いつも客席がある方に舞台があり、舞台がある方が客席になっていました。劇場入り口は開演中も扉を開けたまま、下手の出はけに使われました。舞台の床には、劇場ロビーへも引き続いて白い布が敷き詰められていています。客席の段がそのまま装置に生かされているのも面白いです。

 大道具や小道具、衣裳はどことなくおもちゃのような風合いがあり、絵本の中の世界をイメージさせます。騎士たちがまとっている鎧は、ぺっしゃんこにつぶした空き缶をつなげた、一見ゴミにも見えるようなもので、マントはぼろぼろの汚れたカーテン(及び、のれん)でした。兜のかわりに鍋やバケツを被っています。この他に劇中のセリフにも「風車」等が出てきますので、ドン・キホーテがモチーフになっているのは明らかですね。
 でもこの物語に登場する二人の騎士はドン・キホーテとは性格が正反対なのです。とりあえず究極のマイナス思考(笑)で、次々と人を殺していきます。しかも自分では手を下さずに。

 遍歴する二人の騎士(湯浅実さんと森塚敏さん)が出て来ると、シーンと静かな中に異様な空気がなだれ込んできました。一瞬たりとも見逃したくないので、目と耳を思いっきり集中させて舞台にかぶりつきました。でも、その他の役者さんについては、演技がむやみに棒読みだったり、大げさな動作だけで中身がなかったりしたので、騎士がいない時は眠ってしまいました。悪い意味で新劇っぽい演出というのでしょうか、形ばかりで内容が薄いように思えました。

 別役実さんといえば不条理演劇です。正直なところ、意味はよくわかりませんでした(途中で寝ちゃったのもあるけど)
 でも、力強さを感じました。「生きる意味の喪失」という言葉も今となってはもう使い古され、慣れ親しんでしまいましたが、それを別役さんの視点から表現したものなのかな、と思いました。(下記、気になったセリフを書きます。完全に正確ではありません)

 騎士「わしらを殺さなきゃ、君はわしらに殺されるよ」
 神父「なぜ私が殺されなきゃいけないんですか?私はまだ死にたくない」
 騎士「だから、なぜ? なぜ死にたくないと思うんだね?」

 騎士「殺すことはすなわち生きること」

 森塚敏さんが圧倒的な存在感でした。おとぼけ演技が凄い。もう神々しいほどです。

 ぜひ他の演出で、また観てみたい作品です。

劇団青年座創立50周年記念公演
作:別役実 演出:伊藤大
装置:伊藤雅子 照明:中川隆一 音楽:和田啓 音響:高橋巌・城戸智行 衣裳:三大寺志保美 舞台監督:尾花真 演出助手;千田恵子 
出演:湯浅実・森塚敏・円谷文彦・岩崎ひろし・高松潤・井上夏葉・田中耕二・加藤満・ひがし由貴 演奏:和田啓
青年座:http://www.seinenza.com/

Posted by shinobu at 2004年12月05日 18:26 | TrackBack (0)