キューバ危機について、アメリカのケネディー大統領陣営側から描いたドキュメンタリー・タッチの作品です。映画「13デイズ」と似ているようですね(観てないのでわかりません)。
1962年、ソビエト連邦がカストロ政権下のキューバに核ミサイルを配備しはじめたことに対し、アメリカが取った判断と行動を追っていきます。
エクスコム会議(ExComm)と呼ばれる国家安全保障会議執行委員会での議論シーンが見所です。やっぱり文学座の役者さんは皆さん本当に演技がお上手で、手に汗握る緊張とはこのことだなーと思います。お一人お一人の個性にホレボレします。
軍部(早坂直家、林秀樹)は「キューバ基地の即時空爆」を主張し、それに対して国防長官(関輝雄)、司法長官(浅野雅博)、国務長官(宮沢亜古)等は「海上封鎖」を提案します。アメリカにおける軍隊の存在の大きさを改めて知ることができました。
ケネディーの弟である司法長官(浅野雅博)と、駐米ソ連大使(清水明彦)との最後の外交交渉のシーンでの 「核戦争に勝者も敗者もない」という言葉がずしりと響きます。
大統領秘書のロイス(山田里奈)とハーバード大学在学中の実習生スティーヴ(粟野史浩)とが恋人同士で、エクスコム会議で起こっていることを2人で話すシーンがところどころ挟まれます。おそらくキューバ危機を国民の視点から説明するために作られたのだと思いますが、残念ながらちょっと浮いていた印象です。
下着姿で生々しくキスを交わすベッドシーンは特に意図が不明でしたね。やるならもっと濃厚にやってもらわないと、見ているこっちが恥ずかしくなります。
教会でスティーヴが聖書を引用します。内容は「神は愛である。愛する心の中に神は宿る」というものでした(言葉は正確ではありません)。キリスト教の中にもこういう考えがあるのかぁ、と素直に感激しました。
美術は三方を客席が囲み、残り一方には白い壁がそびえる、シンプルな回り舞台になっており、円卓会議の途中でゆ~~~っくりと舞台全体が回り始めるのがすごくカッコ良かったです。
平和的解決を一番強く主張する国連大使(川辺久造)の熱演が心を打ちました。
原作:ジョン・サマヴィル 訳・ドラマトゥルグ:酒井洋子 構成:瀬戸口郁 演出:望月 純
出演:川辺久造・林秀樹・坂部文昭・原康義・関輝雄・早坂直家・清水明彦・瀬戸口郁・鈴木弘秋・浅野雅博・粟野史浩・寺田路恵・富沢亜古・山田里奈
美術:乘峯雅寛 音楽:三浦出 照明:賀澤礼子 音響効果:藤平美保子 衣裳:出川淳子 映像編集:小泉宏和 特殊効果:FANTASY 舞台監督:加瀬幸恵 制作:伊藤正道 票券:最首志麻子 協力:外川智恵子(ニチエンプロダクション)
ザ・クライシス:http://www.bungakuza.com/about_us/p2k4/2k04-crisis.htm