2004年02月17日
tpt『Angels in America<第1部「ミレニアム」>』01/20-2/29ベニサン・ピット
しのぶの2004年の観劇ベストテンに確実に入るだろう作品となりました。
第1部と第2部が完全に続き物になっている大作です。第2部のレビューは分けて掲載しましたので、続けてお読みいただけたらと思います。
トニー・クシュナー作のこの戯曲はピューリッツァ賞、トニー賞 (1・2部 2年連続) を受賞、ロンドン ナショナル・シアターによる“20世紀の傑作20”にも選出されています。
劇評や解説などを読んで「エイズで死んでしまうゲイの若者を通して80年代の問題をあぶり出す」というようなイメージを持っていましたので、これまで観るのを避けていたのですが、tptで上演されるならぜひ観たいと思い、両バージョン拝見いたしました。
笑えるし明るいし、セリフも美しい。めちゃくちゃ楽しくて面白い!
もちろん鋭い問題提起もありますし、命に関わる深刻さが土台になってはいるのですが、脚本も演出も基本的にファンタジーなんです。
tptはもう何度も拝見しているのですが、今回ほど生々しいのは初めてな気がします。舞台空間と役者と客席とが、ライブでつながっている気がするんです。
精神安定剤中毒の妻(中川安奈)が頻繁に幻想の世界にトんで行きますし、エイズが発症したゲイのプライアー(斉藤直樹)も、ベッドで夢を見て、そのまま時を越えます。それがあまりに容易に、通常的に起こるので、俳優がどんどんと舞台や作品世界からこちらに飛び出して来るように感じられます。
また、美術は小屋自体を露出する方向で、余計なものをそぎ落としてシンプルに作られており、装置にイントレをそのまま使ったりする手作り感もありますから、とても身近に感じます。場面転換の際に、イスやテーブルを出し入れする演出部スタッフが堂々と舞台に走って出てきてテキパキ動くのも、ライブ感覚を増徴させます。
本来なら深いどん底まで落ち込んだような物語なのに、観客も一緒になって楽しめるし、参加している気持ちにすらなります。ルイス(池下重大)と黒人ドラッグクイーン・ベリーズ(矢内文章)の政治論争なんて友達と話している感覚でした。
役者さんは皆さん本当にお上手で、一人ひとりが生き生きと個性を発揮されています。アッカーマンさんにTHE COMPANYと呼ばれるこのチームの価値がよくわかります。tpt『BENT』で拝見した役者さんが出ているから「あ、あの人、今回はこんな役なんだ~」という味わいもありつつ、その成長振りに感心させられます。
それにしても、第1部と第2部を一挙上演してくださったことに、心から感謝しています。ものすごいことをやってくださいました。
<第1部「ミレニアム」>
男同士の恋愛ものって私は基本的に苦手なんですが、ジョー(朴昭熙)とルイス(池下重大)の頬に触れるラブシーンには本当にときめきました。tpt『BENT』の主役の二人ですよね。それもまた嬉しい。
最後に天使(チョウソンハ)が2階から降臨すくるシーン。あの衣装は私にとって新しい両性具有のイメージでした。チョウソンハさんはつかこうへい劇団でよく拝見していましたが、全く違う面を見せてくださいました。猥雑さも神々しさも飲み込んだ力強い音。この世のものとは思えない声。
自分がゲイだと気づく弁護士ジョー役の朴昭熙(パク・ソヒ)さんは、やっぱり間違いなく演劇界の新しいスターです。アジアの男の魅力が全て搭載されていると言うか・・・観てるだけで泣けてきます!それにしても肌の露出が多かったですよね、アッカーマンさんのサービス? マジ必見です(笑)。母親と電話するシーンでのセリフ「僕、ホモセクシャルなんです。、かっこわりーっ」が絶品。
朴昭熙さんを見たいなら第1部、チョウソンハさんは第2部ですよっ♪
カーテンコールはBilly Joel"Uptown Girl"をBGMに役者さんたち闊歩して出て来ます。ずーっと笑顔で拍手しました。楽しくってしょうがなかった。
レパートリー1・2一挙上演
<第1部「ミレニアム」>1/20(火)~2/29(日)
<第2部「ペレストロイカ」>1/21(水)~2/29(日)
出演 THE COMPANY :中川安奈/山本亨/朴昭熙/斉藤直樹/矢内文章/池下重大/松浦佐知子/植野葉子/深貝大輔 + Angels:チョウソンハ/藤沢大悟/小谷真一
作:トニー・クシュナー new version by tpt workshop 訳:薛 珠麗 演出:ロバート・アラン・アッカーマン
デザイン(美術&衣装など):ボビー・ヴォヤヴォッツキー 照明:沢田祐二 音響:高橋 巖 ヘア&メイクアップ:鎌田直樹 舞台監督:久保勲生
tpt : http://www.tpt.co.jp/