2004年04月24日
文学座アトリエの会『中二階な人々』04/16-29文学座アトリエ
浅野雅博さん(文学座)目当てで観に行きました。脚本を書かれている阿藤智恵さんが有名なのかな?
29歳から31歳の、宙ぶらりんな人たちのお話。
文学座アトリエに初めて伺いました。いい所にありますね~(信濃町)。
男4人女2人の計6人が共同生活をする一軒家。20歳の頃から同居しはじめて早10年。一階が女、二階が男の寝室で、その間の中二階がリビングになっている。バイトや仕事が終わったらそこに集まってビールを飲んだり楽しく雑談したり。それぞれが自分自身の将来についての漠然とした夢や不安を持っているのだが、どうやら皆すんなり前には進めていない様子だ。ある日、すごく若い女の子が突然たずねてきた・・・。
うーん・・・少女漫画にあるような設定だと思いました。例えば、本気でお兄さんのことを恋してしまった妹がいるとする。そのお兄さんが不運にも交通事故に遭い、その手術の際に血液型から本当は血がつながっていないことが判明!!・・・みたいな(笑)。仲良し男女6人組が一緒に10年も暮らしてきて、今もみんな仲良し♪なんて。私は“ありえない”と思いますね。でも、まさに少女漫画を読んでいる時の夢見心地な気分で楽しめました。
ストーリーとしては軽~いハッピーエンドだったと思うのですが、私はあんまり馴染めなかったです。ああいうのが今どきの30代前半の人たちの温度なんでしょうかね。私自身「ああ、こういう人、すっごくいっぱいいるよな~」って思いました。でも、なんだか居心地が悪かったんですよね。肯定しちゃいけないんだと私が思っているからでしょう。
私は若い人(決して若くはないのですが)のああいう有り様は好きではないです。今の仕事は自分のやりたいことではない、だからといって明確にやりたいことがあるわけでもない。プロポーズされたけど結婚はしたくない、今のままでいたい・・・等。作家さんもわかっていて書いてらっしゃるのだと思いますが、登場人物たちは本当に甘いですよね。とっても能天気です。だから“中二階”なのでしょう。
ただ、そうならざるを得ないという気持ちもよくわかるんです。高度成長期の後、物質的には何も困らない世の中で育ち、真面目で厳しい両親に育てられて教育もしっかり受けてきたが、いざ20歳を過ぎてみるとバブルが崩壊して、すっかり世の中の尺度や展望が変わってしまっていた・・・という時代を生きてきた世代なのです。真面目に生きてもバカを見そうだし、だからといって全てを捨ててはじけられる程、不真面目でもない。将来に向けて明快なビジョンを持つのはなかなか難しいと思います。
でも、それでもやっぱり最後は、その夢のような世界(男女6人の共同生活)が何らかの支障をきたして壊れ始めるところぐらいは描いて欲しかったなと私は思います。もしかすると完全にハッピーにすることによって、かえってその暗い面を際立たせたのかもしれませんが、それはちょっと深読みしすぎな気がします。
脚本の主張やストーリーは全体的にソフト過ぎて私はあまり好きではなかったのですが、等身大の人たちの等身大の喜びと哀しみが非常にピュアに描かれていたのはとても良かったと思います。私が一番好きだったのは、夜遅くに帰ってきて酔っ払ったキノシタ(山像かおり)が、ハシモト(浅野雅博)にキスしそうになるところ。うーん、こういうのってよくあるよねーっ!!って思いながら、照れつつ笑いました。
音楽はすっかり70~80年代ポップスでしたね。ユーリズミックスとか流れてびっくり。な~んか懐かしいというか恥ずかしいというか。それはそれで演出意図なのでしょうね。
役者さんは、若い女の子役(勝由美子)以外は皆さん達者な方々だなーと思います。若い女の子役は本当に“若い女の子”だったので、どんなにセリフを言い間違おうがピチピチしてて良かったな~。ほほえましかったです。
浅野雅博さん(文学座)。おばけのQ太郎ネタを話す柔らかい男ハシモト役。笑いを取る絶妙の間(ま)と嘘っぽくないボケとつっこみがすっごく面白いと思います。線が細いんだけど、セクシー。今日の夜の回の「もう、オバケさんね」はアドリブのようです(笑)。
作:阿藤智恵 演出:高瀬久男
出演:佐藤 淳・浅野雅博・石橋徹郎・粟野史浩・山像かおり・太刀川亞希・勝由美子
美術:石井強司 舞台監督:神田 真 照明:中山奈美 制作:伊藤正道 音響効果:斉藤美佐男 票券:松田みず穂 衣裳:出川淳子 宣伝デザイン:森さゆ里 イラスト:オザワミカ 大道具協力:夢工房 小道具:高津映画装飾 照明協力:ステージ・ライティング・スタッフ 音響効果協力:東京演劇音響研究所 かつら:スタジオAD ケーキ製作:八重樫伊知子
文学座 : http://www.bungakuza.com