REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2004年05月26日

シベリア少女鉄道『天までとどけ』05/06-16THEATER/TOPS

 私はつい数年前に中野テルプシコールで観た劇団なのですが、「こんなの観た事ない!!」という評判がどんどん広まって、THEATER/TOPS初登場で異例の10日間公演です。
 今回もアイデアに驚かせていただきました。

 オリンピック出場者選考のための体操の大会が開かれている。登場するのは、4年に一度のビッグチャンスを前に緊張する選手たち。オリンピック出場確実と言われた体操選手だったが、事故に見舞われて二度もそのチャンスを失った女性カメラマン、そしてそのライバルだったが今はコーチをしている女、TVアナウンサーなど。

 開場している間は体操の大会を、特に選手が回転技をしているところをずーっとTVで流し、オープニングはNHKの朝の連続テレビ小説のようなさわやか映像でした。前半では登場人物それぞれの立場や思いいれなどを細かく描いていきます。クドイぐらい。これも全部ネタ振りなんです。

 甘酸っぱいようなしょっぱいような青春ドラマが存分に繰り広げられ、クライマックスの床運動のシーンから、とうとう例の“ルール違反”がやってきました。突然、ダンボールで作った四角い箱に人物のカラーの写真を貼ってものを役者さんが舞台に持って来ました。しかも黒子姿で。役者さんはそれを放り投げてぐるぐる回転させます。まるで跳馬の上で回転しているような、床運動でジャンプしているような・・・。ありえない!てゆーか、黒子だよ、黒子。箱を持った黒子が今までどおり選手としてしゃべるんです。変わりに箱が体操をしてる・・・。

 それだけだったら大したことないんですけどね、そこで終わらないのがシベ少のオリジナリティというか、見所というか・・・。まさかテトリスになるとはねー・・・・人の写真が貼られたダンボールの箱が、THEATER/TOPSの舞台前面にどんどんと溜まっていきます。みんなあの、4角形が4つ組み合わさったテトリスのピースになっているんです。

 天井まで届いたら負けですからね。それが『天までとどけ』のタイトルに掛かっています。チラシにもずいぶんネタが降られているんですよ。高層ビルの上にやっこ凧が一つ飛んでいるビジュアルでしたし、キャッチコピーは「ハメられる快感。」。なるほどハマりますからね、テトリスのピースは。

 今さらながら思うのですが、ものすごいセリフの量ですよね。最後の方は体の動きがほぼ皆無の中、役者さんはとにかくしゃべり続けます。そのセリフがとにかく凝っていて、土屋さんって本当にすごいと思います。物語と舞台で起こっていることを巧く重ねていくんですからね。それでいて最後は素敵な結末にしてくれるんです。どこか演劇以外でもぜひその才能を生かして欲しいな~って思います。大きなお世話ですが(笑)。

 選曲が良かった。具体的に何なのかは全然知らないのですが、ジャパニーズ・アイドル・ギャルのきゃぴきゃぴソングでしたよね。バカっぽくて楽しかったです。

 こんなことをやる劇団はシベリア少女鉄道しかない!と言い切れることが偉大なのですが、今までの公演と比べると今回は、前半からネタに入るまでのお話が暗すぎた気がします。1時間30分という上演時間にしては気持ちがどんよりと疲れてしまっていました。でも、絶対次も観に行くんだよね・・・(笑)。

作・演出/土屋亮一
出演/藤原幹雄 秋澤弥里 吉田友則 水澤瑞恵 前畑陽平 小野美樹 篠塚茜 土屋亮一 ほか
舞台監督/谷澤拓巳 音響/中村嘉宏(atSound) 音響操作/井上直裕(atSound) 照明/伊藤孝(ART CORE design) 映像/冨田中理 舞台美術/齋田創(突貫屋) 宣伝美術/土屋亮一 音源製作/霜月若菜 制作/渡辺大・高田雅士 制作助手/保坂綾子
シベリア少女鉄道:http://www.siberia.jp/

Posted by shinobu at 01:04