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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年06月12日

三条会『班女・卒塔婆小町』06/10-13こまばアゴラ劇場

 三条会は千葉県を拠点に活動している劇団です。すべての公演の演出・構成は主宰の関 美能留さん。『班女』と『卒塔婆小町』は三島由紀夫の「近代能楽集」に収録されている戯曲です。

 「今、客席でどうしたらいいのか、何を感じ取ったらいいのか、全然わからない!でも、なんか集中しちゃう!目が離せない!!」というのが、私が三条会を観ている時の気持ちです。ほんとに、意外なことだらけなんですよね。アンバランスばかりでバランスが取れているというか、いえ、そんな理屈など全く必要としない、有無を言わさない力強い存在なのだと思います。

 何もない黒い空間。タキシードを着た坊主頭の男がにやりと笑いながら舞台に出てくる。次に出てきたのは白いドレスを着た、これまた坊主頭の男。激しく早口でまくしたてたり、不敵な笑みを浮かべながら朗々と語ったり、さまざまなしゃべり方と予想外の動作から、シンプルな空間に奇妙な空気が立ち現れます。重厚で熱い、1時間10分でした。

 シンプルかつ地味な、じっとりしっかりのお芝居の中に、ものすごく熱いパッションを感じるんですよね。チラシや上演する戯曲などから想像すると、真面目なアート路線の劇団かと思いますが、そうでもないです。いえ「真面目なアート路線」には間違いないのですが(笑)、とにかく可笑しいんですよ。私は自分が突然に笑い出すのが不思議でした。真面目さと堅さからは想像できないブッ飛び具合に、圧倒されるのだと思います。

 日本の歌謡曲(?)が流れるのですが長谷川清さんの曲だそうです。ヘナチョコで、ほんっとにダメダメ感が漂う歌です。さらりと歌い上げられているのがさらに情けない(笑)。
 『卒塔婆小町』の“今夜”というセリフに掛けて『ウエストサイド・ストーリー』の"TONIGHT"がかかるのも非常にイレギュラー。ヘンな盛り上がりを見せながら、音楽の強弱や展開にセリフと演技がぴったり合わさっているのが、また妙で、すごいのです。
 
 役者さんは一人一人がものすごい個性の持ち主で、きちんと一人の舞台俳優として舞台上に存在されていますね。聞き応え、見ごたえのある堂々とした方々が揃っています。
 私は老婆役の岡野暢さんの笑顔がすごく好きです。どうしようもなく嘘っぽくてズルイ、おやじ笑顔(笑)。あのお顔を見ると胸がスッとするのです。「したたかに、ヤってくれるね!!」って、頼もしくなるので。

作/三島由紀夫 演出/関美能留
出演:大川潤子 榊原毅 岡野暢 橋口久男 中村岳人
照明:佐野一敏 音響操作:立崎真紀子 制作:高辻千浩 カンパニーメンバー:舟川晶子 阿左見真紀
企画制作:三条会/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
主催:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
三条会:http://homepage2.nifty.com/sanjokai/
こまばアゴラ劇場:http://www.letre.co.jp/agora/

Posted by shinobu at 23:00

メタリック農家『男』06/10-13中野テルプシコール

 “メタリック農家”という劇団名とチラシのビジュアルに何度かピピっと惹かれていたので、伺いました。

 スティンガーというヒーローが活躍する戦隊ものテレビ番組の撮影現場。ピンチになると巨大ロボットを操縦して敵を倒すというお決まりの子供向け番組だが、大人の中にも根強いファンがいる。スティンガーを愛するあまり、実物大のスティンガー・ロボを作りあげた科学者がいたのだ・・・(以下ネタバレします)。

 今が旬の時事ネタばかり盛り込まれていましたね。ペ・ヨンジュン氏(冬のソナタ)、北朝鮮の核爆弾など。他にもいっぱいありましたけど忘れました。私はそういうのでは笑えないし、面白みを感じないので。

 脚本は言葉遣いやギャグも含めて面白いところが沢山あると思うのですが、役者さんがそれを表現できていないです。一人でも上手な人がいればよかったのですが・・・。これからなのでしょうね。

 核爆弾を搭載した北朝鮮の戦闘機にスティンガー・ロボが単独で立ち向かう!・・・というところまでお話を盛り上げておいて、操縦する俳優がふんどし一丁になり「俺は丸腰だ!だから戦うつもりなんてないから、そっちも北朝鮮に帰ってくれ!」と叫んで、すんなり解決しちゃうなんて・・・なんじゃそりゃ!?その上、スライドの文字映像で「そして戦闘機は人質を置いて去っていった」と一筆流して終わるのは、演出が安直すぎるのではないでしょうか。中盤からハチャメチャ・ナンセンスな味を出していればそれでも成立したかもしれませんが、そんなパワーは感じませんでした。

 クライマックスはふんどしでお尻出して終わり、カーテンコールは祭り太鼓で踊りまくって終わり、というのは・・・つらいです。祭りはそんな風に使ってはいけないと思います。

 舞台の中央奥と下手の2箇所に、2階レベル(高さ)のキャットウォーク幅の舞台が作られていて、その上と下を使った演出はとても面白かったです。戦闘機の下に人質がぶら下がっているのを、観客の頭上を通るおもちゃの飛行機と、舞台上の役者とで一緒に表現したのは楽しいですよね。

 スライド映像は、劇場の入り口付近の桟敷席からだと役者さんの影になって見えませんでした。2,000円でテルプシコールの公演だしね・・・というような半ばあきらめの気持ちになりましたが、それじゃぁイカンと思うのです。

 古市海見子さん。代役をGETするショッカー(?)役&おっかけ主婦役。元・猫ニャーの西部トシヒロさんと、げんこつ団の植木早苗さんに似てます。変な言い方ですが本当にそう思いました。目がすごい。
 中島徹さん。ペ・ヨンジュン似の男役。美形で嬉しかったです。

脚本・演出:葛木英(くずき・あきら)
出演:岩田裕耳 前川健二 土肥サチコ 大川祐佳里 横島裕 中島徹 永山盛平 伊藤一将 古市海見子 石澤美和 宮本理絵 萱嶋尚史 他
舞台監督:野坂知矢(東京圏外) 舞台美術:裏方専門劇団?なぐり 音響効果:天野高志(AXL) 映像:mixed 小道具:遠藤智林 特殊メイク:横山佳代 イラスト:リタ・ジェイ 題字:斎藤真紀 演出助手:萱嶋尚史 制作:藤井敦子 製作:メタリック農家
メタリック農家:http://www.hpmix.com/home/metallic/

Posted by shinobu at 02:15