2004年07月27日
燐光群『私たちの戦争 Lost in the war/Blindness』07/15-08/04下北沢ザ・スズナリ
社会派演劇といえば燐光群(りんこうぐん)。日本を代表する作・演出家の坂手洋二さんの作品を発表しています。年間5公演以上のペースですよね。
今回は2~3月に上演されて好評だった『だるまさんがころんだ』と2本立て公演になっていて『私たちの戦争・・・』は3作品のオムニバス形式でした。
セットは『だるまさんが・・・』と全く同じで極シンプルな八百屋舞台。完全にセミドキュメンタリーというか、一つの政治的な主張であるように感じました。胸が痛みました。苦しかったです。でも、私は観に行くことで気持ちを表したいので、つらくても出来る限り燐光群(および坂手さん)の作品は観るようにしています。
『LOST IN THE WAR』はドキュメンタリータッチに3つの話を観客に語りかける形式でした。杉並区の公衆トイレに『戦争反対』『反戦』『スペクタクル社会』と落書きをした男性が告訴されたこと(その人が落書きする以前から既に大きな落書きがあったのに、etc.)、アメリカ大使館前で反戦運動をした女性が夫婦ともども日本の警察から様々な迫害を受けたこと、そしてアブグレイブ刑務所でのアメリカ兵によるイラク人の『虐待』の事実を生々しく再現されるのは正視できませんでした。
「戦争で命よりも大切なものを失う」という言葉がどしりと心に覆いかぶさってきました。
『戦場イラクからのメール』は、イラクで拉致された記者の渡辺修孝さんの手記(メール)をできる限り忠実に劇化したものでした。私はあの事件の実態を知ることにもとても興味があったのですが、観終わってみるとイラクの人々の貴い信仰心や誇り高い心を感じられたことが一番嬉しかったです。私と渡辺さんとイラクの人々、そしてアメリカの人々とは同じなのだ、世界はつながっているのだと実感できました。だから、今イラクが傷ついていることがものすごく哀しいです。
『Blindness〔盲目〕』は、イラクに出兵して視力を失って帰ってきた米兵が、イラクで殉死した親友の家族を尋ねるお話でした。アメリカ兵側から見たイラク戦争の視点があったのは素晴らしいと思います。この作品は完全なフィクションでしたので、最後に全体をオブラートにくるんでくれた気がして、ほっとして観ていられました。(こちらで、「完全なフィクション」ではなく「実際の新聞記事に基づいているそうです」と書かれています。)
ものすごいセリフ量で、しかも2本立てだったからか、役者さんのセリフの言い間違い等がすごく多かったです。燐光群なのに・・・ちょっとがっかりでした。今日がたまたまダメだったのならいいのですが。
『だるまさんが・・・』の方がエンタテインメント性があり、一つの演劇作品としてのまとまりがあると思います(私は初演を観ました)。第12回読売演劇大賞の中間選考報告会でも作品賞に選ばれています。
『LOST IN THE WAR』
「落書き反戦裁判」公判・インターネット資料より
「アブグレイブ刑務所での『虐待』」インターネット資料等
ブルキッチ加奈子「個人に対する警察による弾圧について」より
台本・演出:坂手洋二
『戦場イラクからのメール』
渡辺修孝『戦場イラクからのメール』より(安田純平著『囚われのイラク』からも引用)
台本・演出:坂手洋二
『Blindness〔盲目〕』
作=マリオ・フラッティ 訳=立木アキ子 演出:坂手洋二
作=マリオ・フラッティ+渡辺修孝+坂手洋二
訳=立木アキ子+キャメロン・スティール
構成・演出=坂手洋二
出演:中山マリ 川中健次郎 猪熊恒和 下総源太朗 大西孝洋 鴨川てんし Kameron Steele Ivana Catanese 江口敦子 宮島千栄 樋尾麻衣子 宇賀神範子 内海常葉 向井孝成 瀧口修央 工藤清美 裴優宇 桐畑理佳 久保島隆 杉山英之 小金井篤 亀ヶ谷美也子 塚田菜津子
照明=竹林功(龍前正夫舞台照明研究所)音響=島猛(ステージオフィス) 舞台監督=海老澤栄 美術=じょん万次郎 衣裳=大野典子 演出助手=鈴木章友・吉田智久 文芸助手=久保志乃ぶ・圓岡めぐみ・清水弥生 宣伝意匠=高崎勝也 制作=古元道広・國光千世
燐光群:http://www.alles.or.jp/~rinkogun/