2004年08月06日
青島レコード『SLAPHAPPY』08/04-08THEATER/TOPS
青島(チンタオ)レコードは岡田望(おかだ・ぼう)さんが作・演出する劇団です。看板俳優の山中崇さんがNODA MAPや劇団☆新感線に出演されるなど活躍の幅を広げていらっしゃいます。劇団も次回はシアタートラムに進出されます。
休憩なしで2時間20分というのは、私はTHEATER/TOPSでは初めてだったかも。ぴあでは上演時間は1時間50分と書いてあったそうですので、予定よりも作品が長くなってしまったのでしょう。それで19時半開演だとちょっとつらいですね。
今回は青島レコード初の再演ということでしたが、モチーフは同じで内容が3分の2ほど変わっていたそうです(私は初演を観ていないのでわかりません)。→以下ネタバレします。
作家の桜井(山中崇)は、入院している妹の看病をしながら小説を書いている。彼は、とあるきっかけで自分の小説の中に入り込んでいくのだが、その世界では自分の書いたとおりに物語が進んでいなかった。なんと、自分のほかに“作家”がいて、その人物がすべてを握っているらしい。
しとしとと、ずーっと雨が降り続ける芝居でした。ずーっと止まない雨ってどんよりしますよね。でも、少しホッとします。私は公演が終わって劇場から出る時も「外は雨だろう」と思い込んでいました(笑)。出て来たらきれいに晴れていたので、ちょっと驚いてから、ス~っと現実に戻りました。
全体的に淡々と静かに進んでいきます。不覚にも2、3回ウトウトしてしまいました。退屈しちゃうシーンが何度かあったんですよね。あと、2時間以上あったので疲れが出たのかもしれません。
私は、何かを自分でやり終えた時に、全て“予定どおり”だったと感じる瞬間がよくあります。人にはあらかじめ定められた運命があって、ただ決められた道を進んでいるだけなのかもしれない、と立ち止まることがあります。どんなにがんばっても、どんなに生み出しても「運命だ」と片付けられ、どんなにジタバタしても、所詮レールの上なのだと、根本的なところに引き戻されます。不思議なことに、それでも人は、自分の思いを、自分の言葉で、自分の望むとおりに伝えたいと思うし、自分がやりたいことを、自分で実現したいと思うんですよね。
自ら前へ前へと進んで行きながらも、常に体の中に漠然とした不安を抱いている人間の、根源的な迷いと一寸の希望を表したのではないかと思いました。それを、疲れきった男(桜井)の心の揺れが生み出した、一瞬のまぼろしの中に閉じ込めたのが美しいと思います。まあ、それにしては上演時間が長すぎたかな、と(笑)。
少々難解なので観る方ががんばらなきゃいけない脚本ですね。そして、演じるのも難しそう。セリフのひと言ひと言にクセがあって、含みもあるので、役者さんは大変なんじゃないかしら。あ、もちろん演出家ご自身も(笑)。
照明(今村太志)の色を変えたり、光の当たる場所が変わることで場面転換するのがきれいでした。これについても役者さんは気持ちの切り替えとか大変かもな~と思います。その場に立ったまま、照明が変わったとたんに違うシーンになっていることが多かったので。
衣装(キタサコ製作所)は全体的にほんのりメローな色使いで、現代服を少しずつアレンジした形でした。作業着シャツのパステルグリーンがすごくきれいでした。あと、あのチノパン風のズボン。ストレートで裾が太い目なのがカッコいいです。
山中崇さん。期待通りの声と存在感。いつ観ても安心。ちょっと哀しげなのも魅力的。終盤あたりで、台の上に立って白い照明を浴びながら「自分の言葉で、自分で思うとおりに書く(セリフは正確ではありません)」と主張する演技が特に良かったです。
扇田拓也さん。ムーディーブルースというバンド(?)の、不運なボーカル役。ヒンドゥー五千回という劇団の作・演出家さんなんですね。パワーを感じたので作品を観てみたくなりました。
作・演出:岡田望
出演:山中崇 扇田拓也 諌山幸治 中尾あや 大和広樹 斉藤直樹 奥瀬繁 結城久俊 加藤裕 服部絋二 西野まり 菅原永二(猫のホテル)
舞台監督:筒井昭春 高木啓吾 照明:大迫浩二 音響:サウンドクラフト(今村太志) 美術:盛永有理子 小道具:関根和佳子 寺田真理 衣装:キタサコ製作所 縫製:渡辺まり 宣伝意匠:山口直樹 制作:千田由香子
Chintao Records『SLAPHAPPY』:http://www.chintao.com/slaphappy/