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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年08月07日

劇団M.O.P.『虚飾の街に別れのキスを』08/06-12紀伊國屋ホール

 マキノノゾミさんが作・演出する劇団M.O.P.(エム・オー・ピー)の第39回公演です。
 〈黒いハンカチーフ・L.A.バージョン〉ということで、2001年に上演されて好評だった、詐欺師もの大どんでん返し娯楽作品『黒いハンカチーフ』の舞台を、日本からアメリカに変えて作り直された作品です。

 コン・ゲーム(詐欺師の騙しあい)といえばポール・ニューマンとロバート・レッドフォード主演の映画『STING(スティング)』が有名ですよね。『STING』みたいな作品を作りたいと思って、マキノさんが書かれたのが『黒いハンカチーフ』だったそうですので、とにかく男がかっこいい!そして、裏をかいて、さらにその裏をかいて・・・という脚本の巧さに舌鼓!

 そして役者さん皆さん、演技がお上手!軽やか&鮮やかに飛び回る詐欺師チームのイカシタ男たちに、最後までしっかりと魅せられてしまいました。中盤あたりから前作のストーリーを思い出したので、予想外のことが起こる楽しみ等はあまりなかったのですが、わかっているからこそ楽しめることも多かったです。

 初日に客席でお会いした何人かの知り合いの中からは、「前回の『黒い・・・』よりも面白かった」という声がよく聞こえてきましたね。私はどちらが良かったかは、よくわからないのですが、とにかく前回と同じように面白かったし、惚れ惚れしましたし、沢山の人にこの作品を観てもらいたいと思いました。
 たしかに詐欺師ものって日本よりも西洋の方がしっくりくる感じはありますよね。役者さんがおおげさにアメリカンな立ち居振る舞いをされるだけでも笑えますし(笑)。

 衣装(三大寺志保美)は色使いから何から全部1930年代のハリウッドスタイルで、みなさん華麗に見えました。
 美術(奥村泰彦)は前回と同じく可動式パーツで場面転換するダイナミックなものでした。前回のイメージを残しているところも憎い演出だな~と思います。

 こういう作品こそ演劇を知らない人に観てもらいたいです。そしてお芝居を好きになって欲しい。こんなに楽しくって、面白くって、そしてカッコいいんだよ!って♪

作・演出:マキノノゾミ
出演(予定): 三上市朗 小市慢太郎 林英世 酒井高陽 木下政治 奥田達士 勝平ともこ 白木三保 岡村宏懇 友久航 塩湯真弓 永滝元太郎 竹山あけ美 塩釜明子 岡森諦(扉座) 
田尻茂一(アクションクラブ) 権藤昌弘(飛ぶ劇場)  舞台美術:奥村泰彦 照明:大川貴啓 音響:堂岡俊弘 衣裳:三大寺志保美 ヘアメイク:武井優子 舞台監督:藤吉成三 制作: 山中歌子 渡辺裕子 橋本香苗  企画・製作: 劇団M.O.P. 宣伝デザイン:ヒネのデザイン事務所+森成燕三 写真: 山脇孝志 伊東和則
《東京の前に地方公演→大阪、京都》
劇団M.O.P.:http://www.g-mop.com/

Posted by shinobu at 19:37 | TrackBack

あなざ事情団『三人姉妹』08/06-8アトリエ春風舎

 “あなざーわーくす”と“山の手事情社”と“青年団”を合わせて「あなざ事情団」です。
 “お客さまに私たちと一緒に『三人姉妹』を作っていっていただく「観客参加型」です”と公言しているちょっと個性的な作品です。

 かなりドキドキしながら伺ったのですが、二人の女優さんに全身全霊でサービスしていただいて、思う存分参加(?)して、楽しませていただきました。私はペットボトルをずっと持ってました(笑)。以下、ネタバレします。

 客入れの時から自然な感じで女優さんお二人が迎えてくださって、座席にも案内してくれます。こういうのは入り口に入った瞬間が大切ですものね。心得てらっしゃいます。

 一番はじめに、ロシアの人々にとっての“モスクワ”について、“モスクワ塚”という爆笑オブジェを使って説明し、次に『三人姉妹』紙芝居であらすじ全てを教えてくれます。だから『三人姉妹』を知らなくても大丈夫。思いっきりくずした作品になっていますが(笑)ちゃんと楽しめると思います。

 そして『三人姉妹』の中から3つだけシーンを取り出して演じられます。それぞれの間に“休憩”が挟まれて3幕ものになっていました。休憩の時は、女優さんお二人が舞台のど真ん中に寝そべってダベったりするんです。それも全部ネタなんですけれど、わかってても面白いんだな~。アドリブももちろんあります。
 テレビ台の上に置く、テレビの向きを自由に変えるためのプレートを使っていたのが一番面白かったです。あれに体を乗せて回転するなんて・・・(笑)。役者はクリエイティブな職業だな~とつくづく思いました。いろんなアイデアと努力が結集して演劇は出来ていくんですよね。

 演出家のわたなべさんが客席で音響オペなどやってらして、時々小道具を役者さんに渡したりします。役者さんは汗びっしょりの全力投球で演技されています。そういうのが手の届きそうな間近にあって、全部丸見えで、さらに自分も他の観客も参加しているので、なんだか劇場の中にいる人たちが全員友達になったような、不思議な連帯感が生まれていました。

 心に残るのは女優さんお二人の優しさです。観客をうまく中に引き込んでいき、常に親切・丁寧な態度で、決して礼儀を忘れずに接してくださいます。だから色々やらされても全く不快ではないし、不快どころか楽しいんです。

 ひとつだけ難を言わせていただくと、役者さんと一緒になって楽しんだので、めちゃくちゃ疲れました(笑)。1時間10分ぐらいの上演時間だったと思うのですが。終わってみると疲労困憊していました。それほどに役者さんが熱演でしたし、観客も本気で楽しんでいたのだと思います。

出演:倉品淳子(山の手事情社) 松田弘子(青年団)
構成・演出:わたなべ・なおこ(あなざーわーくす)
照明:岩城保 制作協力:菊川朝子(Hula-Hooper)紙芝居の絵:松田弘子 マトリョーシカ提供:倉品淳子
公演公式サイト:http://www.letre.co.jp/~hiroko/threesisters/

Posted by shinobu at 18:59 | TrackBack