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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年09月12日

ひょっとこ乱舞『フナの心臓、メチルの心』09/10-14王子小劇場

 ひょっとこ乱舞は広田淳一さんが作・演出する劇団です。ひょっとこ乱舞HPのLinkに「東大駒場キャンパスで活動する演劇サークル 劇団綺畸のOB、OGが多く参加しています」とありますし、旗揚げ公演会場が駒場小空間ですから東京大学系ですね。 パンフレットのスペシャルサンクスにTheatre MERCURYの文字もありました。なんだか親近感が・・・(笑)。
 tpt『Angels in America』でありえない迫力の“天使”を演じられたチョウソンハさん観たさに行ってみました。前回の『銀髪』にも出演されていたのですが、それは逃しました。

 王子小劇場を通常とは違った形で使っていました。入って左側が舞台で、右側が客席。舞台はすごくシンプルで、何もないステージの中央に小さな赤い冷蔵庫、その裏に2階のキャットウォークへとつながる梯子が垂直に伸びています。王子小劇場のきれいな灰色の壁をそのまま使い、全体的にシャープな印象です。

 チラシに書かれていますが、今回の第9回公演は第2回公演『圧縮』の再演で、「初演時は座りっぱなしの会話劇だった」のが「今回は走る身体を舞台装置の代わりに使う」とありました。簡単に言ってしまうと、夢の遊眠社や第三舞台に似てる感じでした。どんどん走って、大きな声で内容を独白形式で説明して、衣裳は記号的で、セリフはだいたいが早口の弾丸トークです。場面転換も体の動きや照明の切り替えで行われるので、目立った暗転はありません。
 夢の遊眠社と第三舞台と違うのは、これまたチラシに書いてあります「まごうことなき黒光り」という作品イメージです。暗いんだなーこれが。ガンガンに主張するので尖ってる感じもします。チラシに書いてある通りの作品に仕上がっていることは良いことだと思いますが、私の好みには合いませんでした。
 
 ウィルスの蔓延とそれに対する人間の戦いがお話のバックグラウンドです。元・メチルウィルス感染患者が隔離されている地下都市「圧縮」が舞台。進化したウィルスを持つ少女(中村早香)とワケアリで地上からやってきた健常者の女(酒井彩子)との交流と裏切り。SFですので難しい言葉がいっぱい出てきます。色んなもののネーミングが面白かったです。地名が「排水」「圧縮」「濾過(ろか)」「蛇口」だったり、ウィルス患者が隔離されている町「圧縮」の閉鎖を解こうとする運動の名前が“解凍運動”っていうのも楽しい。
 →ネタバレします。終盤で、進化したウィルスに感染し、死ぬのを待つしかない女・葵里子(酒井彩子)のセリフを、なぜかチョウソンハさんがしゃべっていました。それが新型ウィルスの役なのだとわかった時は気持ちよかったですね。

 ヘアメイク(入江佐伊子)が凝ってました。女の子はあみあげを多用していて、役によって違う種類の羽飾りが可愛かった。カットもしてますね。

 親近感を持って言わせていただくと、「女優に色気がない」ですね。これは昔、私がいた東大系劇団のアンケートにも書かれた言葉で(今は亡き女優、氾文雀さんより)、やっぱり駒場カラーは受け継がれていってるのだなぁと変に感慨深い気持ちになりました。声を張り上げても良し、大げさに走りこんでも良し、客席に面と向かって独白するのも良し、ただ、女性らしさを省くのはもったいないと思います。

 チョウソンハさん。冷蔵庫に飛び乗る動作にほれぼれ。中盤以降はお話自体にあまり惹かれなくなったので、チョウソンハさんにも目が行かなくなりました。残念。でも次も出るなら見たいと思わせる俳優さんです。

作・演出:広田淳一
出演:中村早香 酒井彩子 チョウソンハ 伊東沙保 金子優子 加茂みかん 橋本仁 浦川友美 若子昭一 市川晃次 林隆紀 高橋恵 瀧澤崇 広田淳一
舞台監督・美術:竹内和延 舞台:高岸れおな 照明:三浦あさ子(賽【sai】) 音響:角張正雄(SoundCube) 選曲協力:石谷聖子 衣装:難波寿枝 瀬沼美晴 清野綾子 ヘアメイク:入江佐伊子 宣伝美術・画・web:内藤真代 制作:ツカネアヤ 砂田麻里子 清野和美 山本啄未 田辺直樹 菅沼勲 振付:外山晴菜 演出助手:宗吉和幸 
ひょっとこ乱舞:http://hyottoko.sub.jp/

Posted by shinobu at 18:13 | TrackBack

Plug-In『Show Case vol.1「Blue Rose」』09/10-14麻布ディプラッツ

 2003年にNEW YORK ACTING WORKSHOPに参加された俳優さんが集まった演劇ユニットです。
 Studio Lifeの役者さんが多数出演されていて、宣伝はほとんど見かけなかったのに前売りは早々に完売していましたね。

 テネシー・ウィリアムズの戯曲のコラージュでした。「ガラスの動物園」「財産没収」「Spring Storm」「カミノ・リアル」「しらみとり夫人」「火刑」「地獄のオルフェウス」「あるマドンナの肖像」「話してくれ、雨のように」「青春の甘き小鳥」「Vieux Carre」という沢山の戯曲から、シーンやフレーズを抜き出して構成しています。
 開演時に総合演出の野村リエナさんがこの作品について簡単な説明をしてくださいました。ちょっと普通とは違ったことをやってらっしゃるわけですし、こういう気遣いが必要ですよね、大人だなーと思いました。

 舞台で演技をしながら涙を流してらっしゃる役者さんが多かったです。最初はちょっと驚きましたが、何人もいらっしゃるので慣れました。たぶん舞台上でも自分の感情を開放するような演技方法なのではないでしょうか。NEW YORK ACTING WORKSHOPのホームページにメソッド等についての情報があります。英語が話せなくても参加できる10日間のコースとか、面白そう。

 役者さんによって、言葉がきちんと話せている人と話せていない人との差がありました。確かに、セリフや動き(段取り)に気をとられて肝心の役柄の気持ちが表現できていない、というのは問題だとは思いますが、あまりに感情、感情と押し出されると、観ている方が引いちゃうんですよね。役者さん個人にとってのリアルが、観客全員にとってのリアルになるわけではないと思います。感情も大切ですが、まずはセリフじゃないかな。言葉が聞こえなければどんなに生き生きとした感情を出していても、観ている方は意味が分からないですから。

 ダンス・シーンがセクシーで良かったです。男は男らしく、女は女らしく、美しかったです。
 ドン・キホーテ役(だと思う)の方が痛々しかった。セリフとか表情や動き全般が暴力的で怖かったです。

 スタジオ・ライフの役者さんはやっぱりきれいでした。美しく在ることに引っ込み思案にならないのが素晴らしい。こういうことが出来る男優さん、少ないですよね。
 舟見和利さん(Studio Life)。立っているだけで、そのはかなかさに目を奪われます。
 前田倫良さん(Studio Life)。『地獄のオルフェウス』のバル役のセリフを話してらっしゃる時の声がきれいでした。

 総合演出の野村リエナさんはアメリカ在住の方なので、Plug-Inとしての次の予定は今のところないそうです。

作:テネシー・ウィリアムズ 上演台本:野村リエナ、水島 Jan 雅美 総合演出:野村リエナ "火刑"演出:青山治 "Spring Storm"演出:水島 Jan 雅美 など
出演:青山治、佐藤智子、大坊健太、俵野枝、手島和貴、新田絵美、羽生田早穂、福井利之、舟見和利、前田倫良、萬代慶太、水島 Jan 雅美、山田浩、山本つづみ
プラグ・イン:http://www.geocities.jp/nyplugin/index.html

Posted by shinobu at 00:11 | TrackBack