2004年11月19日
劇団ジャブジャブサーキット『しずかなごはん』11/17-21サンモールスタジオ
もう何年も行こう、行こうと思って見逃し続けていたジャブジャブサーキット、やっと観に行けました。
ジャブジャブサーキットは岐阜県出身の名古屋の劇団で、作・演出の はせ ひろいち さんの脚本は「テアトロ」や「せりふの時代」にも載っています。
名古屋、大阪、東京の3箇所のツアーです。
さまざまな依存症の患者が通院・入院している山音クリニックの、フリースペース(だったかな?)と呼ばれる談話室が舞台。
依存症といってもこの作品では特に摂食障害について描かれていました。摂食障害というとすぐに思いつくのは過食症や拒食症ですが、単に食べ過ぎたり食べられなかったりするだけではないんですね。山盛り食べて、そして全部吐くということを繰り返し、激やせしてしまう等の症状があるそうです。心の状態に深く関係している病気であることは言うまでもありません。
山音クリニックでは、摂食障害に苦しんでいる患者たちに非常にきめ細やかな診療をしている。数ヶ月前、摂食障害で一時期クリニックに通っていたことのある女優(岩木淳子)が自殺するという事件があった。その女優の個人ウェブサイトに、死んだはずの彼女の書き込みがあることがわかり、同時期に医院の中でも幽霊が出ると噂になっていて・・・。
良い脚本でした・・・ところどころ涙しちゃいました。登場人物は皆さん基本的に良い人ばかりで、セリフをきちんと聞かせるお芝居でした。
院長先生(荘加真美)が「ここ(に来る患者さん、および治療方法)は例外ばっかりだから」と言うセリフに感動です(セリフは完全に正確ではありません)。病院ってそうあるべきじゃないでしょうか。患者一人一人についてその人に合った治療法をほどこせるなら、それが理想ですよね。院長先生や分室長の桜井先生(小山広明)を見ていると、覚せい剤・麻薬・少年犯罪撲滅に尽力してらっしゃる“夜回り先生”こと水谷修さん のことを思い出しました。
現代の医療は、患者の症状を既にある症例に当てはめて、前例に従うことで終わることが多い気がします。だから私は大病院が苦手なんですよね・・・って好き勝手言ってますけど、そんな対応が一朝一夕にはできないのはよくわかっているつもりです。ただでさえお医者さんって激務ですしね(でもやっぱり病院はつらい)。
病院を舞台にした患者と医者の人生の静かなドラマとして、とても見ごたえがありましたし、作られた方の心の優しさが胸に沁みました。女優のBBSに書き込まれた「しずかなごはん」という文字が謎の鍵ではないか・・・という推理劇になっているのも楽しめました。
でも・・・全体的に地味ですよね。役者さんは演技がちょっとおぼつかないです。対話シーンの演出も甘いところがある気がします。「ええ、ああ」っていう相槌をつくのが非常に多いのですが、ちゃんと言えてる役者さん、いなかった気がするなぁ。あと、笑いについては不満でした。もっともっと笑える脚本だと思います。通院している女子高生役の永見一美さんは、きれいだし華もありました。
チラシビジュアルもホームページも、もうちょっとパっとしてれば、きっともっと早く観に行ったと思います。前売2700円のお芝居ですのでそこまで求めなくてもいいのかもしれないんですが、いかんせん脚本の質と比べると全てがワンランク下に見えちゃうんですよね。この脚本を文学座のアトリエ公演とかでやったらどうかしら?青年団の役者さんが演じるとすごく良いんじゃないかしら?あと、NHKの連続ドラマにも合うのでは?うわっ、観たくなって来たっ!
車イスに乗った営業マン役がダブルキャストで、私が見た回は、はしぐちしん(コンブリ団)ヴァージョンでした。車椅子の背もたれの後ろに付いている天使の羽は面白いですね。※はしぐちさんは、もともと車イスに乗っている俳優さんだそうです。教えてくれた方、ありがとうございました。
はせさんがパンフレットに書かれている言葉を引用します。
「むしろ僕は今、摂食障害の人達の方がマトモに見えている。人生に対し「食」という側面から、自分を見直し、裸の戦いを挑んでいる姿において。」
※この作品はこころネットKANSAIという大阪の団体とのコラボレーションです。
《こころネットKANSAI》引用元はこちら
社会全体が不安・不信・不透明感であふれる現代において、心身に問題を抱え、精神科・神経科に入院・通院する当事者と、その援助者、そして意思ある市民によって設立。一人一人が持つ生きる力と能力を交流させ、共に生きることで学び、そして楽しめる活動をじっくりと根付かせ、心の健康問題の改善とこことろからだのバリアフリー社会の実現を目指す。
作・演出:はせひろいち
出演:はしぐちしん(コンブリ団、T) 荘加真美 小山広明 江川由紀(T) 中杉真弓 岡浩之 岩木淳子 高木美千代 永見一美 小関道代 村松綾(客演) 栗木己義(T) T=トリプルキャスト
照明:松野弘 選曲:はせひろいち 舞台美術:栗木己義 宣伝美術:奥村良文(ワークス) 写真:岡本佳子(スタジオメイプル) 舞台監督:岡浩之 制作:JJC企画
劇団ジャブジャブサーキット:http://www.owari.ne.jp/~iku/template.html