2004年11月28日
SePT独舞vol.12『白井剛ソロダンス「質量, slide , & .」』11/26-28シアタートラム
白井剛(しらい・つよし)さんは、Study of Live works 発条ト(バネト)というダンスグループでも活動している振付家・ダンサーです。何度かイベントで拝見して、その度に素敵だなーと思っていました。
今回は1時間強のダンス・パフォーマンスで、最初はとっつきにくかったのですが、徐々に引き込まれていって、終わったときはすごく感動していました。
11/28(日)の15:30の回で千秋楽です。残席あるそうですので、お時間のある方はぜひ!ルックスも非常に美しい若い男性ですので、女性は特に必見かも(笑)。
タイトルが「質量, slide , & .」ということで、モノの重さ、およびそのモノ自体、モノと自己との係わり合い、そしてその後に見える何か・・・が表現されました。
ここからネタバレします。
しょっぱなに突然、背中から床にバタっ!っと倒れたのには驚きました。あんなに普通に人が倒れるの、初めて見た(笑)。歩いたり座ったりしゃがんだり、普通の動きが多い前半はちょっとわかりづらかったですが、まずは白井さんに重さがあるってこと、つまり白井さんが目の前に存在しているということを表現しているのかなと思いました。
キューピー人形を取り出して天秤ばかりで重さを量り始めてからは、単に面白くって引き込まれました。他にも分銅を使ってティーカップ&ソーサー、財布、お金、ボーリングの玉などを量り、最後には片方にボーリング、もう片方に白井さんの頭を乗せました。白井さん以外の全てのモノにも重さがあることがそこで分かり、さらにそのモノたちを舞台上に並べて置くことで、世界中のモノや人、動物や植物などの全ての存在が、私(観客)と同様に確かに存在していることがわかりました。
一番の目玉は角砂糖の映像だったと思います。白井さんが白い角砂糖に紅茶(おそらく紅茶。もしかするとコーヒー)を数滴したたらせるのですが、その角砂糖の様子をビデオカメラで撮影して、木製の大きな壁のようなオブジェに映写するのです。紅茶をかけられた角砂糖は一瞬にして紅茶色に染まり、少しずつ溶け出して、形が崩れていきます。ヒトがモノに影響を与えて、モノが変化したのです。そこに確かな関係が存在したことを舞台上の白井さんと客席の観客が同時に目撃しました。次には映像が逆送りされて、茶色いベタっとした物体がむくむくと四角いビルのように育っていく様子が映し出されます。紅茶と角砂糖が力をあわせてきれいな立体に育っていくように思えました。次はまた角砂糖がくずれていく様子が早送りで映し出されます。その繰り返しを見たことで、角砂糖と紅茶、白井さん、そして観客が、劇場内でそれぞれに確かに存在することと、それらが互いに関係し、影響しあっていることを実感できました。
すっかり白井さんと意気投合した(気持ちになった)私は、激しく踊る白井さんを眺めながら、まるで自分の姿を見ているような気持ちになってきました。重力に引っ張られてステージの板から逃れられない様子、壁にぶつかって跳ね返る動作は、地球の上のこの社会での我々人間の様子を表しているようです。誰も皆、どんな瞬間も体中で何か・誰かと関係しあって存在してるのです。そして白井さんは徐々に舞台中央の一箇所に留まって踊るようになります。あらゆるモノとぶつかり、反応しあって、とどのつまりはただ一つの場所、つまり自分に帰っていくのです。この宇宙に確かに存在する「ひとつ」になった白井さんは、最後の暗転の後の白いフラッシュで美しい残像となり、私の心と体に刻まれました。
照明と音楽とダンスが、まるで楽しくおしゃべりをし合っているようにコラボレートしている作品だったと思います。もちろん舞台上にあったオブジェや小道具も、すべてが同等の価値(質量)で作品世界を作り上げていました。
三夜連続のポストトークで、本日は伊藤キムさんでした。白井さんは大学2年生の頃(1996年)に“伊藤キム+輝く未来”にダンサーとして参加されていたので、キムさんとは親しいのですね。キムさんの今作品についての感想は、まず「かっこいい」でした。私もそう思いました。ルックスが良いのもあるかもしれませんが、それよりもダンサーとしての在り方(スタイル)がかっこ良いと感じました。
キムさんが『あなた』(白井さんが初めて出演した輝く未来の公演)の終演後の飲み会で、白井さんに「お前は俺よりも上手くなる」と言っていたそうで(白井さんは冗談だと思っていたらしい)、まさに今、そうなりつつあるということがわかるパフォーマンスだったそうです。キムさんって衝撃的に謙虚で正直な方ですね。それにも感動しました。
来年6月にはキムさんと白井さんのデュオ公演が世田谷パブリックシアターで上演されるとの告知がありました。演目は三島由紀夫の「禁色(きんじき)」。必見ですね。
構成・演出・振付・出演:白井剛
音楽:イノウエユウジ a.k.a Dill 照明:関口祐二 森規幸(balance, inc. DESIGN) 音響:伊東尚司 衣裳:笹嶋麻由(CLOCKWORKs) 映像操作:佐藤美紀 舞台監督:遠藤幸男 宣伝美術:清水俊洋 制作:Study of Live works 発条ト クリエーション・マネジャー:村上克之 プロダクション・マネージャー:根木山恒平
主催:Study of Live works 発条ト 提携:世田谷パブリックシアター 制作協力:ハイウッド
世田谷パブリックシアター内:http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/jouhou/04-2-4-46.html