劇団タコあし電源は『阪神淡路大震災』を見逃してから、いつか行きたいと思っていました。私のいちおし企画ユニット、ブラジルの作・演出家ブラジリー・アン・山田さんが演出されるし、企業の匂いがぷんぷんするチラシのビジュアルにも惹かれて、観に行きました。
就職活動の塾に通っている人たちのそれぞれの就職活動、そして結果を描きます。就職活動の説明芝居でありノウハウ伝授芝居、でした。ちょっぴりお涙頂戴もある、大衆向けドタバタ青春コメディー風味。
私は新卒の就職活動の経験がないので、それほど共感はありませんでしたが、就職活動を経験した知人・友人からチラホラと聞いていた実態とほぼ変わらない内容だったので、「へ~そうなんだ~、なるほどね~」という感じで、反発することなく受け入れられました。
客席にリクルートスーツを着ているお客様が多かったのに驚き!芝居が終わった時には「これを就職活動中、または前に観られるとすごく気持ちが楽になるんじゃないか」とも思いましたので、企画として成功しているのではないでしょうか。
脚本担当に4人も名前が挙がっていることからもわかるように、様々なエピソードが組み合わさって、一つのストーリーになっています。だから、内容がちょっとデコボコした感じなんです。登場人物のキャラクターが激しく変わりすぎてたり、おそまつな会話と説得力の有るセリフが混在していました。
60社以上受けて全部すべってきた男の子が、最後の最後にいやいやながら小さな冷凍食品の会社の面接を受けるシーンのセリフが良かったな~、あのシーンはどなたが書いたのかしら。
人事部のオヤジの言い分にも納得だし、就職活動連戦連敗の男子学生の熱さにも好感が持てました。学生が面接官に向かって「俺とあなたは本当は同等なんだ!」と言い切ったのは清々しかったです。「就職活動で、初めてこんなに自分と向き合った。自分と戦った」と言うのにも納得。私は就職活動をやりたくなかったし、やらなくて良かったと思ってますけど(笑)、やった人のことは素直に尊敬していました。だって、自分が何をやりたいのかを自分で必死で考えて、自分の言葉で口に出して他人に伝えて、しかもその他人に気に入ってもらわなければならないんですよね、ものすごい試練ですよ。それに立ち向かっていくことだけでも素晴らしい経験だと思います。
この2人の激しいセリフバトルでは、ブラジリー・アン・山田さんらしい、体と心の手抜きのない戦いが見えた気がします。
発泡スチロールで作られた壁やオブジェで全てを表現する、抽象的な舞台美術でした。何もかも真っ白なので、照明の表現が多彩で生きていました。壁の色の変化によって素早く場面転換するのも良かったですね。
岩下貴子さん。アパレル志望の主役の女の子役。清潔感があって、演技も上手いですねー。クサいセリフをものすごく自然に、魅力的に話してくださいました。舞台経験はあまりなく、映像方面で活躍されている女優さんだそうです。
サブタイトルに「90分で分かる~」とありますが、110分ありましたね。ちょっと長かったかな。
あと、細かいことですが、ひとつひっかかった点。酒造の跡取り息子がゼネコンに受かったエピソードがありましたが、「家が自営業だったら落ちる」という内緒のルールもあったと思います。いつか会社を辞めて家を継いじゃう可能性がありますからね。西武鉄道は・・・このご時世なのでスルーしました。
脚本 岡本貴也、イケタニマサオ(くろいぬパレード)、池谷ともこ、みつだりきや(デジタルハリウッド大学院)
演出:ブラジリィー・アン・山田(ブラジル)
出演:岩下貴子/桜井聖/荻原政樹/川口直人(SET)/住吉玲奈(SET)/芳賀恵子(虎のこ) 三嶋幸恵/前田宏(くろいぬパレード)/中澤徳泰/松島浩平/石坂いつか/いぬいりさこ/重見将臣/上村敬治(タコあし電源)/小川直美(タコあし電源)/志田健治(タコあし電源)/森本展弘(タコあし電源)/大木凡人(映像出演)
照明:泉次雄(RISE) 音響:玖島博喜(TEAM URI-Bo) 美術:原田勲(CERAH) 舞台監督:鈴木のり子 制作:デジタルハリウッド大学院演劇プロジェクトチーム 宣伝美術=スズキサナエ
公演サイト:http://www.dhw.co.jp/gs/mentachi/index.html
バック・ステージ内:http://www.land-navi.com/backstage/report/takodeji/index.htm