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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年02月16日

Bunkamura『幻に心もそぞろ狂おしのわれら将門』02/05-28シアターコクーン

 清水邦夫さんの1975年の作品を蜷川幸雄さんが初演出。コクーンの蜷川作品のいつもの豪華キャストです。長いタイトルですが、声に出してみるときれいな言葉ですね。

 戦闘で頭を怪我した平将門(堤真一)は、自分が将門ではなく、将門を宿敵として長年追っている人物であると思い込んでいる。家臣らは、にせの将門(影武者)を何人も用意するなどして将門を守ってきたが、将門の変貌振りに動揺を隠せない。戦況はどんどんと思わしくなくなっていき・・・。

 舞台装置(中越司)と照明(原田保)が素晴らしかったなー・・・スモークを思いっきり炊いた劇場は、真っ赤な照明に照らされて全体が地獄の炎に包まれたようになり、炎の向こうにうっすらと映る人影から聞こえてくる、おどろおどろしい叫び声のような言葉達。迫力満点のオープニングに、思わず身を乗り出してしまいました。

 美術が舞台床から天井まで一気に続く階段になっているのは、去年の『リア王の悲劇』@世田谷パブリックシアターに似ていますが、あの時よりもずっと余裕が感じられて俳優に優しい装置に見えました。舞台の上下(かみしも:右と左)も階段になっているのが珍しいそうです。

 石が天井からどんどんと降って落ちてくるのは『パンドラの鐘』でもありましたが、今回の方がずっと効果的でフィットしていたと思います。『近代能楽集』では赤い椿が落ちてきましたよね。あの、ボトン、ゴツッと床が鳴るのがいいんですよね。
 オープニングは照明か映像で雪が降るのを表していましたが、後半では思いっきり紙吹雪が降り注いで豪華でした。前から2列目までのお客様は頭にいっぱい白いものを乗せたままの観劇でしたね。臨場感あるな~、うらやましい。

 ストーリーを追うことはできたし結末も見届けることもできたのですが、戯曲が伝えようとしている意味はよくわからなかった、というのが正直なところです。長いセリフが多くて、2人きりでずっとしゃべり続けるシーンでは途中で眠たくなったりしました。すごく良いセリフがいっぱいあったと思うのですが、2時間55分(うち休憩20分)は集中力が持たなかったですね。パンフレットにセリフがたくさん載っていて、それを読むと少しずつ意味がわかりかけてきました。

 平将門とその家臣たちのお話ですが、あくまでもそれは題材であって、人間の心の深い部分にある欲望や信念を描いていたのではないかと、漠然とですが、思いました。自分達は死んでも将門だけを守り抜いて逃がし、永遠に消えない夢になるという結末には、70年代の魂を近くに感じられたような気がしました。今も昔も、人にはそんな気持ちがありますよね。

 役者さんでは、将門の影武者の一人、五郎役の高橋洋さんがとても良かったです。高橋さんの熱い演技が武者姿にばっちりなんですよね。前半は高橋さんの独壇場だったと言えるのではないでしょうか。

作:清水邦夫 演出:蜷川幸雄 
出演: 堤真一 木村佳乃 段田安則 中嶋朋子 高橋洋 田山涼成 沢竜二 松下砂稚子 他
美術:中越司 音楽:笠松泰洋 照明:原田保 衣裳:前田文子 音響:井上正弘  ヘアメイク:鎌田直樹 殺陣:國井正廣 演出助手:井上尊晶 舞台監督 :明石伸一
公演サイト:http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/event/maboroshi/index.html

Posted by shinobu at 2005年02月16日 23:24 | TrackBack (1)