[戦場][時刻][文明][退屈][夢想][接合][遺骨]という7編の男女二人芝居から成る永山智行さん(こふく劇場)の脚本を、4人の演出家が演出します。総合演出は倉迫康史さん(Ort-d.d)。
宮崎、東京、北九州、山口、鳥取の劇作家・演出家・俳優が参加するプロジェクトで、廃校になった旧千川小学校から生まれた東京の演劇人の理想の稽古場“にしすがも創造舎”での初の演劇公演でもあります。
『昏睡』ツアー日記では美しい舞台写真もアップされています。
懐かしい匂いのする体育館に居ながら、長い、長い、旅をしました。生まれるずっと前から、死んだずっと後まで。遥かに時を越えて、世界中、宇宙中を飛び回りました。終演の長い暗転で、自分が真っ黒な無限の空間(宇宙)に溶け出していくように感じました。そしてカーテンコールの明かりが点いた時、涙が溢れました。
総合演出の倉迫さんが当日パンフレットに書かれています。「短編のオムニバス作品だからといって、ただ二人芝居を羅列するのではなく、七本で一本の作品となるような世界観を背景に置いた。『昏睡』を避難民たちによる物語としたのだ。」
ストーリーも、役者も、演出も全く違う7つの世界は、互いに強い個性を主張し合いながら共存していました。決して混じり合わさることのない異文化が、同じ瞬間に一緒に存在していたことは確かです。これを調和というのかしら。だとすると調和ってものすごいパワーがあるんですね。
形式的には7つのオムニバスでしたが、セリフを発する2人以外の役者さんも舞台によく登場しますので([接合]以外)、二人芝居だという印象はありませんでした。
体育館でこの作品を観られたこと。これが最も大きな喜びでした。体育館の中にあんなに立派な舞台装置が設置されているとは予想していませんでした。体育館の設備も存分に使って演技スペースがものすごく広く取られていました。
照明がまた凄かった。役者、装置、劇場(体育館)そして客席も、全てがライトアップされる対象でした。木藤歩さんの照明を観るといつも思うのですが、光と影との両方で「照明」なんですね。
[戦場]。言葉が通じない敵同士の男女の対話。涙が溢れて、溢れて、たまんなかった・・・。これが最初のエピソードだったので、全体的に泣きモードに入っちゃいました。あべゆうさん(こふく劇場)の声がめちゃくちゃきれい。
[時刻]が私には一番難解でした。最後にやっと子供と母親の話だとわかりました。深い脚本です。
最終話[遺骨]のペア(泉陽二さんと田丸こよみさん)が、現代の人間としてずっと舞台に出ていたことで、全てのエピソードが今とつながっていました。
←こちらは門川公演の写真です。プロセニアムの舞台での上演だったので、舞台奥や両袖は黒幕になっているんですね。暗い空間に人物が浮かび上がっています。けれど東京公演では黒幕はいっさい使われておらず、体育館の天井や壁をそのまま露出させて、ドアやキャットウォークも使う演出になっています。
にしすがも創造舎にはオープン前に一度見学に伺ったことがあったのですが、本格稼動している姿を見て、またまた感激しました。誰も使わなくなっていた小学校が活気に満ち溢れているんですよ!どんどこ何かが生まれ出てくる音がしています。2階にはコーヒーやお茶などがセルフサービス(100円)で自由にいただけるカフェ“Camo-Cafe”もオープンしていて、2月27日(日)16時からは『昏睡Cafe』も開かれるそうです。
《宮崎→山口→東京》
作:永山智行(こふく劇場・宮崎)
演出:倉迫康史(Ort-d.d・東京/宮崎) 自由下僕(POP THEATRE Я・山口) 泊篤志(飛ぶ劇場・北九州) 森本孝文(演劇企画 夢ORES・鳥取)
出演:[戦場]寺田剛史(飛ぶ劇場・北九州)あべゆう(こふく劇場・宮崎)[文明]岡田宗介(東京)市川梢 (東京)[退屈]有門正太郎(飛ぶ劇場・北九州)橋本茜(飛ぶ劇場・北九州)[接合]山路誠(ユニークポイント・東京)上元千春(こふく劇場・宮崎)[時刻]国崎砂都美(POP THEATRE Я・山口)西田純子(POP THEATRE Я・山口)[夢想]宮島健(東京)三橋麻子(東京)[遺骨]泉陽二(東京)田丸こよみ(東京)
総合演出:倉迫康史 美術:伊藤雅子 照明:木藤歩(balance,inc.) 衣裳:竹内陽子 ヘアメイク・宣伝美術:田丸暦 舞台監督:弘光哲也 主催:創作ネットワーク委員会 製作:Ort-d.d 助成:財団法人セゾン文化財団
公演サイト:http://ort.m78.com/consui.html
しすがも創造舎:http://www.anj.or.jp/anj/sozosha/index.php