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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年02月27日

サイスタジオ主催・Happy Hunting Ground『Visions of Tokyo』02/10-27サイスタジオ小茂根B(2回目)

 1度目は初日観劇で完成度が低かったようなので、千秋楽に再び拝見してきました。
 初日と違ったのはスピード感。そして、笑いがめちゃくちゃ多くなっていたこと。この戯曲でここまでさわやかに笑えるのは意外でした。

 シーンのひとつひとつの完成度が上がっていたのはもちろんで、役者さんの演技にも全く迷いがなく、やっぱり芝居は進化するんだなぁとしみじみ感心。私は同じ演目を2度以上観ることはほとんどありませんので、久しぶりのこの感慨でした。

 初日は「作品の意味があんまりわかってないのかな・・・」という印象でしたが、千秋楽は「なるほど、こういう視点からの、こういう演出意図なんだな」と納得ができました。携わる人間が違えば、その人数分の解釈があって、手法があって、同じ戯曲でも全く違う作品になります。人間って素晴らしいなって思います。

 ただ、今回のが私の好みだったかというとそうではないのですけどね。やっぱり軽すぎたかな~。そして、初日同様にラストのヤザキ(浅野雅博)の長セリフには疑問でした。
 終盤、ヤザキは土嚢(どのう)の下敷きになっていたニカイドウ(石橋徹郎)の楽譜を見つけます。そこにはニカイドウがアタックしたホルン奏者の女の子からのお返事が書かれていた・・・ということになっていて、ヤザキはそれを読み上げます。でも途中からその楽譜を見ないで話し始めるのです。つまり、返事は書かれていなかった(もしくは途中までだった)という解釈ですね。ニカイドウの死後、ヤザキが彼のためか自分のためか、勝手に想像して作った内容だったという演出でした。そのヤザキのセリフの話し方がすごく晴れ晴れとした表情で、明るい物語を語るような優しい語り口だったんです。
 腑に落ちなかったな~。内容が内容なのでね(ホルン奏者の女の子はオーケストラの中のリーダー的存在の男性と関係を持って妊娠していた。たしか不倫・・・?このホールでの演奏の後、自分はオーケストラをやめて子供とともに生きる云々)。

 初演でヤザキを演じられた鶴牧万里さんはあくまでも「書かれたものを読んでいる」演技で、最後の方の少しだけ楽譜を見ないで話していたように思います。つまり、楽譜に手紙が書かれていたのかどうかは観客に委ねられました。そしてすがすがしいお顔ではなかったですね。熟考しているような、とても落ち着いていて静かな状態でした。

 う~ん・・・今、これを書いていて感じたんですが、やっぱり時代が変わったから演出が(解釈が)変わったのかもしれないですね。
 初演は2002年の1月ですからもう3年経っています。この数年は時の流れがめちゃくちゃ速くなって、時代の変化も然り。悲惨で残虐な事件が起こり過ぎました。「プルトニウム」という物体についての捉え方も変わって、以前よりももっと軽いものになった気がします。だって、何が起こってももうおかしくないって私も感じてますし、そうなるとほんの目の前の未来や、今この瞬間の自分のことしか大切に考えられなくなりますよね。だから「笑う」のかも・・・。それは恐ろしいことです。

 クラモト(高橋克明)がニカイドウ(石橋徹郎)バイオリンを蹴り飛ばして、それが壁に当たって思いっきり割れたのにはびっくり!さすが千秋楽!?(笑) 

夏井孝裕2作品連続公演『Visions of Tokyo』,『knob』
※『knob』は1999年に第四回劇作家協会新人戯曲賞を受賞。
【出演】Happy Hunting Ground(ハッピーハンティンググランド)
「knob -ノブ- 」:加納朋之・古川悦史・川辺邦弘・亀田佳明・斉藤裕一・征矢かおる・添田園子
「Visions of Tokyo -ヴィジョンズ・オブ・トーキョー-」:高橋克明・浅野雅博・石橋徹郎・細貝弘二
「動物園物語より」(ポケットシアター) : 古川悦史・助川嘉隆
作 夏井孝裕 エドワード・オールビー「動物園物語より」  演出:高橋正徳 美術:乗峯雅寛 照明:中山奈美 企画・制作:吉田 悦子・Happy Hunting Ground 主催:サイスタジオ 協力:文学座企画事業部 サイ(株)スタジオ事業部
公演サイト:http://www.saistudio.net/html/studio_performance_vol14.html

Posted by shinobu at 2005年02月27日 12:45 | TrackBack (0)