公演終了後に、「この公演の内容は、決して、これからご覧になるお客様にはばらさないでください。」と大きく書かれたパンフレットをいただきました。私は千秋楽に拝見したのですが、もっと早くに観て「とてつもなく面白いよ!!」と宣伝したかったです。
この作品の中に演劇それ自体があり、そして演劇の無限の可能性が示されたと思います。演劇ってすごいです。これだから、私は演劇から離れられない。演劇を観て欲しいと他人に勧めずに居られない。感動に震えながら、こみ上げてくる涙をこらえながら、ゆっくりと小田急線に乗って家路につきました。
“「不可能」ということほど芸術的なことはない。”とク・ナウカ主宰の宮城聰さんがパンフレットに書かれています。不可能って、つまり当事者にとっては絶望であったりもするんだけど、不可能であること自体には無限の可能性があって、その状態を具現化する、可視化することは、ルールも制限も正解も不正解もない、自由で終わりのない大冒険です。そんな実現不可能に思えることをやり遂げた野心作だと思います。
ピランデルロという劇作家がいて、彼の書いた戯曲があって登場人物がいて、それを上演するク・ナウカという団体があって、それを観ている現代の観客がいて、それがザ・スズナリというハコの中にびっちりと入っています。そこには尽きることのない好奇心、欲望があり、あらゆるものを許す寛大さがありました。無茶をやる人って迷惑だったりしますが、その人のおかげで視野が広がるし、実際に世界が大きくなったりもしますよね。永遠の少年である宮城さん等、ク・ナウカの人々が、この破天荒な演劇作品を作り上演してくださったことで、私の人生は大きく広がったと思います。生きてて良かったって思えたよ(涙目)。
「一人の人間は一人分の人格だけで成っているのではない。何人もの人格が一つの身体に入って、一人の人間の格好をしている」と断言してくれる登場人物に涙しました。
「昨日のあなたはもういない。今日のあなたは明日にはもう別人だ。」
「ハムレットしかり、戯曲の登場人物は永遠だけれど、今生きている人間は不確かだ。あなたは何者だ?」
(セリフは全く正確ではありません)
イルゼ役の諏訪智美さんの美しいこと!!最前列でうっとり見とれました。ク・ナウカの女優さんって本当にきれいな人が多いですよね。
宮城聰さん。可愛らしい方だと思ったし、怖い人だとも思いました。演劇という大海を旅する大冒険家なんですね。
作: ルイジ・ピランデルロ 訳:田之倉稔 演出:宮城聰 美術・演出:深沢襟
『山の巨人たち』《出演》コトローネ:大高浩一(speaker:藤本康宏)イルゼ:諏訪智美(本多麻紀) 住人たち:奥島敦子(宮城聰) 黒須幸絵(高橋昭安) 本城典子(末廣昌三)
『作者を探す六人の登場人物』《出演》演出家:宮城聰 演出助手:冨川純一 父:吉植荘一郎 母:鈴木陽代 娘:布施安寿香 息子:佐々木リクウ マダム・パーチエ:奥島敦子
照明:大迫浩二 音響: AZTEC 衣装:小山ゆみ、鈴木美和子、深沢襟 小道具:後藤敦子 演出助手:冨川純一 制作助手:森奈津美 宣伝美術:青木祐輔 制作:久我晴子、田中美季
*宮城聰さんが出演。
公演ページ:http://www.kunauka.or.jp/jp/suzunari2005/yama01.htm