鈴木哲也さん(ブログはこちら)が作・演出される演劇ユニット「MOBO(モボ)」 の第2回公演。Tory's(トリス)とは昭和30年代に大ブームを巻き起こしたサントリーの庶民向けウィスキー。トリス・バーが日本全国に出来たそうです。
舞台は静岡のトリス・バー。作・演出の鈴木哲也さんの私戯曲だそうで、登場人物はほぼ実在の人ばかり。BARのママと客の大学教授が鈴木さんの実のご両親だそうです。だから、とても愛されている作品なのだというのが伝わってきました。ちょっと暗い目の柔らかい色の照明とか、暗転までのじんわりとした時間とか、すごく思いいれたっぷりの演出です。
脚本には少々ムリがあるように思いました。やっぱり作・演出家の実のご両親の馴れ初めをはじめ、ご自分のルーツをたどる一面もあり、作った人は納得かもしれないけど観ている他人が共感するのは難しかったと思います。野球選手の悲哀も描かれましたが、私はそんなに野球ファンじゃないから感情移入しづらかったです。また、いくら昭和30年代でも「僕はエっちゃんが好きなんだっ!」って、客いっぱいのBARで本人を目の前にして告白するなんて、ちょっと青春ど真ん中すぎるよなぁ、とか(笑)。(セリフは完全に正確ではありません)
役者さんが皆さん、演技がとてもお上手でした。そこに居るだけでトリス・バーの世界を作ることが出来ている人がたくさんいらっしゃいました。ストーリーやセリフにはあまり惹かれませんでしたが、「もはや戦後ではない」時代の愛らしい大人たちの姿を見ることができたのは、嬉しいことでした。
エピローグでBARが喫茶店に変わった舞台転換は楽しかったです。だからBARのカウンターがあんなに低かったのかな。
弘中麻紀さん(ラッパ屋)。BARのママ役(マスターの正妻)。セリフの一つ一つにしっかりとバックグラウンドがあり、何もせずに舞台に立っているだけで見とれました。着物での所作も美しかったです。今年の冬にひょうご舞台芸術に出演されるんですね。すごく楽しみです。
作・演出:鈴木哲也
出演:岡森諦(扉座) 平野くんじ(TEAM 発砲・B・ZIN) 工藤順矢(TEAM 発砲・B・ZIN) 弘中麻紀(ラッパ屋) 塩湯真弓(劇団M.O.P.) 井上カオリ(椿組) 林真也 永滝元太郎(劇団M.O.P.)
林力(劇団轍WaDaChi) 石曽根有也(らくだ工務店) 原扶貴子(KAKUTA) 東虎之丞 甘城美典(劇団Blues TAXI)
[舞台美術]秋山光洋 [音響]堂岡俊弘 [照明]廣井実 [舞台監督]清沢伸也 [プロデューサー]赤沼かがみ [制作]G-up [企画製作]MOBO Presents
公演ページ:http://www.officemakino.com/topics/mobo02/