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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年04月07日

双数姉妹『ラバトリアル lavatorial』04/01-10THEATER/TOPS

 双数姉妹は早稲田大学演劇研究会から生まれた劇団で、作・演出は小池竹見さんです。最近は美術も担当されていますね。今年6月上演の花組芝居の新作『ゴクネコ』の脚本を書き下ろされます。

 双数姉妹というと私はこれが3度目の観劇になるのですが、一番初めが2000年の『ニセオレ~偽俺~』@THEATER/TOPSで、2度目が同じく2000年の『双数姉妹~神無きフタリの霊歌~』@紀伊国屋サザンシアターでした。しばらくご縁がなくて久しぶりに拝見したのですが、ストーリーも演出もとても面白かったです。

 脚本が書けない脚本家が会社のトイレに篭ってしまうという設定で、彼が若い頃に所属していた劇団のエピソードも出てきます。いわゆる私の苦手なタイプの作品(演劇で演劇を扱う)だったはずなのですが、全く引きませんでした。久しぶりにストーリーにも演出にも引き込まれて、どうなるんだろう!?とわくわくしながらの観劇になりました。今週末の4/10(日)まで新宿でやってます。お薦めです。

 ここからネタバレします。 

 脚本家のノムラ(今林久弥)はやっぱり締め切りになっても脚本が書けない。テレビドラマのプロデューサーのヤギサワ(小林至)とディレクターのフルイド(佐藤拓之)に追いかけられながらも、いつもどおりに自分の居場所のトイレに逃げ込むが、そこには清掃婦のおばちゃん(野口かおる)がいて・・・。

 脚本家ノムラは洋式トイレの小さな部屋に閉じこもっているのですが、そのドアの外側で、小劇場劇団の稽古場風景およびその劇自体、ノムラの結婚生活、会社での日常など、ノムラの過去と現在が演じられます。その様子をノムラと掃除のおばちゃんがこっそり覗いているという舞台設定で、色んなエピソードが同時に舞台に存在したり、重なったりします。役者さんの演技もすごく安定しているし、とてもリラックスして観劇に集中できました。

 タイトルの「lavatorial」は「トイレのような」という意味だそうです(当日パンフより)。フルイドが脚本家に向かって言うセリフが心に残りました。
 「オナニーでもない。ただの排泄だよ。だって、やったって気持ちよくもないんだから」
 辛らつなせリフですよね。でも納得でした。トイレに篭りながらノムラは自分の過去を思い起こしていくのですが、劇団に居た若い頃も、テレビドラマの脚本を書くようになってからも、良い思い出が全くないのです。仕事は仕事としてやらなければいけない。好きなことばかりやって生きていけれるわけじゃない。脚本を書いていて自分が幸せになれるのならまだしも、脚本家でいることがめちゃくちゃつらくって不幸なんです。仕事だからという理由でそれがすっかり日常になっている毎日。トイレみたいな、便所みたいな日々、生活、人生。

 でも実は排泄ってどんな人間にも生きていくためには絶対必要なことなんですよね。トイレのちっちゃな部屋の中で時を越え、空間を飛び超え、夢も現実も何もかもが同時に、瞬時に生まれて流れ去っていく。必死でがんばったって、がんばらなくたって、そうなっちゃう人生。そんな人生でもいいんじゃない?と、自戒も込めた(笑)ささやきが聞こえてくるようでした。

 劇中劇の「言葉をおぼえた野獣と、家族から逃亡した孤独な男の話(←こんな感じのタイトルだったように思います)」がかなり面白かったです。野獣のような少女マサメを演じた帯金ゆかりさん(北京蝶々)がフレッシュでとても魅力的でした。

 トイレ掃除のおばちゃん(野口かおる)と脚本家(今林久弥)のラブシーンにうら若き恋のときめきを感じました。久しぶりだったわ~、あのハッピーな気持ち♪ 奥さんがいる男を愛してしまった女が、仕事だと言って部屋から出て行こうとする彼を、そっと背中から抱きしめて引きとめようとします。そんなテレビドラマによく出てきそうなシーンなのですが、野口さんの演技から本物の愛が見えたので、男が仕事をキャンセルしようとするのがとても自然で、ほほえましくもありました。

 カーテンコールの時に役者さんがめちゃくちゃフレンドリーに客席に話しかけるのですが、なんだかすごく懐かしい雰囲気というか、学生劇団っぽい感じでした。

《言及ブログ》
 某日観劇録

出演:佐藤拓之 今林久弥 野口かおる 井上貴子 五味祐司 小林至 中村靖 阿部宗孝 大倉マヤ 近藤英輝 吉田麻起子 帯金ゆかり(北京蝶々)
作・演出・美術:小池竹見 照明:斎藤真一郎(A.P.S.) 音響:島貫聡 音楽:コブラ会 演出助手:小林英明 舞台監督:村岡晋 美術製作:コイケ左官工房 宣伝美術:高橋歩 宣伝写真:引地信彦 制作:津田はつ恵 企画・製作:双数姉妹
学生:2,500円 前売り・当日3,500円
双数姉妹:http://www.duelsisters.com/

Posted by shinobu at 2005年04月07日 00:42 | TrackBack (4)