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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年04月16日

らくだ工務店『鯨』04/13-17下北沢「劇」小劇場

 らくだ工務店は石曽根有也さんが作・演出・出演する劇団で、2004年3月の第13回ガーディアン・ガーデン演劇フェスティバルに出場しています。役者さんがペテカンbird's-eye viewG-upプロデュースなどに客演されたり、他劇団の客演役者さんを多数呼んだり、活動の幅を広げています。

 舞台は新聞配達をしている青木(一法師豊)の部屋。昭和の匂いがプンプンする古びたアパート。先輩の沼田(桜田真悟)がやってきた1年前のあの日と、旅に出た沼田が突然無言で帰ってきた、今日のお話。

 いわゆる“静かな演劇”というジャンルに入る作品です。今回は客演の役者さんが4人いて、いつものらくだ工務店らしい作風に新しい見所が付加されていました。また、そのおかげでらくだ工務店らしさというのも引き立っていたと思います。
 ところどころ腑に落ちない展開もありましたが、ある劇団がその作風を確立し、さらに改良していくのが観て取れるのは嬉しいことです。

 ここからネタバレします。

 沼田が死体になって青木の部屋に運ばれてきた現在のシーンから幕開けです。そして沼田が生きて青木の部屋に居た一年前の春のシーンになり、過去と現在が交互に上演されます。クラシックピアノ(だったかな?)の音楽が徐々に大音量になるのと同時に照明がじんわりと変化して、暗転はせずにシーンが転換します。音量が大きすぎたのか、音が割れて聞こえたのはちょっと苦しかったですが、何度も暗転するよりは良かったかな。

 「人が死んでいる」という状態だけでちょっと私は引いてしまいます。また、セリフとセリフの間に妙な間が空いたり、リアルな中に作り物(嘘)だとわかるやりとりがチラリと見えてしまうと、それだけで物語には入っていけなくなります。“静かな演劇”って難しいですよね。でも徐々にですが、自然体の登場人物に惹かれていき、素直に受け入れられるようになりました。
 中盤の、沼田の今の彼女(滝沢恵)と昔の彼女(瓜田尚美)が沼田の死体を前に出くわしてしまうあたりから、ぐっと面白くなりました。そこに本気の女がいるってことがわかりました。
 クライマックスおよびエンディングでは、周りに散々迷惑をかけておきながら何の償いもなしにぽっくり死んでしまった困ったチャンの沼田のことを、青木はすごく好きだったんだということを表していたと思うのですが、それほどビビっとは伝わってきませんでした。セリフがとても少なかったし、ニュアンス重視に偏り過ぎだったのではないかと思いました。

 らくだ工務店ならではの息の合ったコント風の笑いもあり、気持ちよくワハハと笑わせていただきました。特に面白かったのは、サラリーマンの井本(粕谷吉洋)が死人をよみがえらせる呪文をとなえるところ、そして沼田の彼女だった女2人の本気のぶつかり合いの直後に、マヌケな携帯着信音が鳴っちゃうところ。青木と沼田がギターでフォークソングを歌うところも楽しかった。

 滝沢恵さん(THE SHAMPOO HAT)の存在感はやはり大きかったです。沼田に片思いをしている演技がものすごくキュートでした。やっぱりそこに、そのまま、在るってことが凄いのかな。

 舞台は細かいところまでこだわって作られたリアルな部屋で、ふすまの向こう側の、客席からはほとんど見えない壁にもしっかりと装飾がほどこされています。今まではシアターモリエールで公演されることが多かったですが、「劇」小劇場も作風にすごく合っているんじゃないかと思いました。

作・演出:石曽根有也 
出演:一法師豊 志村健一 今村裕次郎 兼島宏典 瓜田尚美 石曽根有也 粕谷吉洋 滝沢恵(THE SHAMPOO HAT) 佐藤洋行(明日図鑑) 桜田真悟(明日図鑑) 福島悠騎 石曽根有也
作・演出:石曽根有也 美術:福田暢秀 照明:三瓶栄 音響:判大介 舞台監督:一法師豊 美術製作:F.A.T STUDIO 宣伝美術:C-FLAT 制作:山内三知 高橋邦浩 企画・製作:らくだ工務店
前売り2800円 当日3000円(全席指定)
らくだ工務店:http://www.rakuda-komuten.com/

Posted by shinobu at 2005年04月16日 01:32 | TrackBack (0)