結成12周年を迎える動物電気の初・本多劇場進出公演です。ほんわかファミリー・ストーリーを主軸に、男の子が脱いで、女の子が叩かれて、お馴染みキャラが身体を張って観客にサービスする、いつもの動物電気のお芝居でした。
舞台はゴミ袋が山と積まれた小さなカレー・ショップのこ汚い店内。もう10日以上休業中。というのも、オーナー兼シェフののぼる(小林健一)が全くやる気がない引きこもり君だから。ある日、のぼるの母親(政岡泰志)が帰ってきて言うことには、「お父さんの堪忍袋の緒も切れた。1ヶ月以内にこの店を盛り立てないと、お前は戦場行きよ!」。個性の激しいキャラクターがじゃんじゃか登場する中、がんばるのか、がんばらないのか、微妙な感じで徐々にカレー屋は立て直されていく。
本多劇場だからといって特に変わったところはなかったように思います。舞台と客席が広かったぐらいかな(劇場がそうだから当然ですね)。だとするともったいないですよね。小林さんがふんどし一丁になって、ひとりギャグ連発したり、辻さんがいつものタイツ姿で身体ネタをやったり、政岡さんがおばちゃんキャラで気持ちよく突っ込みを入れたり、それはそれで安定したクオリティーですが、もっと大きな変化や見せ場、主張などが欲しかったですね。
「いつか、どうにかなるさ」と漠然と人生をやり過ごしてきた30代独身男が、少しずつ社会性を身につけて自立していくというのが本筋だったと思いますが、完全にネタの方がメインになっていました。
身体を張った「8時だヨ ! 全員集合」のようなギャグの連発が動物電気の持ち味ですが、これは毎度のことだから面白いのか、それとも初めての方が驚きも加わってさらに笑えるのかよくわかりませんが、私はそもそも笑いだけが目的のギャグや演技は好きではないので、あまり笑いません。「ほーっ」と言って感心して眺めています。役者の皆さん、演技は相当上手いと思うので、キャラより演技で魅せて欲しいなーと毎回思います。でもそれだと動物電気じゃなくなるんでしょうね。アドリブはさすがに面白かったです。ああいう生の状態をうまく作り出して魅せきるのは、ハイレグ・ジーザス出身の方(作・演出の政岡泰志さん等)ならではなのかな。
動物電気は必ず本編とは関係ない前座のコントから始まるのですが、これが大好き。てゆーか、これが好きだからまた観ちゃうのかな、と思うぐらい。本編よりも好き(笑)。
コント終了後、幕が開いたらいきなり雇われコック(鬼頭真也)とウェイトレス(伊藤美穂)の濃厚かつ長時間のキスシーンでした。思い切りが良いので、こっちが照れることなく笑って観ていられます。しかも美男・美女だから良かったわー。
演技、というか、佇まいが印象に残ったのは準主役の浮浪者役の森戸宏明さん。あと、きれいで面白い女優さんが沢山いらっしゃるのに、男優さんに比べて活躍していないのが寂しいです。
作・演出:政岡泰志
出演:小林健一 辻修 森戸宏明 高橋拓自 伊藤美穂 鬼頭真也 多田淳之介 石川明子 松下幸史 石崎和也 芹澤セリコ 盛島仁 坪内有子 中村まど加 森山夕子 馬場太郎 政岡泰志
舞台監督:松嵜耕治(至福団) 舞台美術:田中敏恵 大道具:横尾友広 照明:シミズトモヒサ 音響:田上篤志(at Sound) 選曲:小笠原静香 衣装:太田家世(自由創作師) 小道具:松浦孝行 宣伝美術:岡屋出海 制作助手:梶丸千佳 制作:横内里穂 製作:動物電気
前売り3500円 当日3800円【全席指定】
動物電気:http://www.doubutsu-denki.com/