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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年05月10日

ニッポン放送・シベリア少女鉄道『笑顔の行方』05/06-11紀伊國屋サザンシアター

 シベリア少女鉄道は土屋亮一さんが作・演出(時には出演も)する劇団。私が説明する必要もないくらい小劇場界では有名です。毎回びっくりさせられつつ爆笑しちゃう“仕掛け”が見所。
 今回はとうとう紀伊国屋サザンシアター進出!もう「小劇場」じゃないんですよね~。イープラスで平日2日間だけ得チケが出るなど、集客には苦戦したようです。やっぱり大きいですよね、サザンシアター。
 さてさて、今回はどうだったかというと・・・私は楽しく爆笑させていただきました(笑)。

 きちんとしたドラマを作りつつ、細かな伏線をまんべんなく張って、笑いも確実にちりばめて、最後にはお約束のネタ披露(笑)。今回は・・・後から書きますが、私は吹き出して笑えた人間でしたね。でも、アレを知らない人は楽しめないだろうなぁ。世代によるんじゃないかしら。あと、意図的なのかどうかはわかりませんが、ちょっとお稽古不足だとは思いました。
 
 ストーリーがまた素晴らしくしっかり作られていて、感心しました。下記であらすじをご紹介しますが、読んでから観に行っても大丈夫な程度に書きますね。観に行くと決めている方はもちろん読まない方が良いですよ。

 柳見(やなみ:前畑陽平)は何らかの精神的ショックで最近の記憶だけをすっかり無くしてしまい、入院して治療を受けている。柳見の恋人の柚梨(ゆり:篠塚茜)が自宅で何者かに暴行され、そばにいた柳見がその現場を見てしまったことが、記憶の部分的喪失の原因ではないかと考えられるのだが、柚梨の父親であり警視庁の捜査官である山本(吉田友則)の部下の志村(藤原幹雄)は、実は柳見自身がその暴行事件の犯人ではないかとにらんでいた。
 柚梨は柳見にぞっこんで、何とかして自分のことを思い出して欲しい、そして柳見の潔白が証明されて欲しいと願っているのだが、柚梨に心を寄せる志村は、柳見が犯人であることをにらんで、彼の記憶の回復を待っていた。
 柚梨はひょんなきっかけで知り合った自称占い師の女(出来恵美)と、事件があった自分の部屋へ行って現場検証をする。柳見は担当医の永井留美(佐々木幸子)の催眠治療で徐々に記憶を取り戻しつつあり、とうとう事件の真相が明らかに・・・。

 登場人物それぞれの性格がその人物のバックグラウンドとともに細かく描写されるので、ドラマとしても、サスペンス仕立ての謎解きとしてもすごく面白いです。柚梨に暴行した犯人が誰なのか想像する時、自称占い師の女以外の全員が犯人でありうる設定になっているのが素晴らしいですね。

 ここからネタバレします。

 ドラマの伏線は下記のような感じです。
 柚梨の父親と母親は柚梨が小さい頃に離婚していて、父親は柚梨を異常なほどに溺愛している。また、離婚の原因は母親による柚梨への虐待だった(だから柚梨自身が心に傷を持っていることが予想される)。柚梨に恋している志村は大人になってもいじめに合うような、ちょっと不幸な男で、柚梨に対して恋以上の執着心も持っている。柳見の治療をする女医は、柳見と柚梨が病院でデートをしているのを見て、あつあつの2人に嫉妬をしているようなそぶりを見せる・・・等。

 女医が昔つきあっていて一方的にフラれた彼氏が、なんと柳見だったという展開はうまいなーと思いました。
 自称占い師の浮浪者の女は本当は占いの力があるのではなく、観察力と洞察力が並外れて優れている人物だったことがわかるのですが、よく出来た推理小説みたいに「へ~っ」と感心させられる巧みな脚本でした。

 で、今回のネタですが・・・・約15年前に大ヒットしたcapcomのテレビゲーム「ストリートファイターII(以下、スト2)」に、なるのです。登場人物の2人が舞台の上下(かみしも)に立って向かい合い、ゲーム同様に一対一でファイトするんです。そういえば一人一人の人生の回想シーンで、背後に映し出される風景画像にあわせてポーズをとっていたんですが、スト2(ストツー)に出て来るファイターのポーズに似せていたんですね。

 舞台の手前ではお話の続きが上演され、奥の一段上に作られたステージではお話と同時進行でスト2バトルが繰り広げられます。バトルをしている役者さんは、ゲームの映像が映し出されるスクリーンの前で、映像に合わせながらファイターそっくりの動きをします。手前で本編を演じている役者さんは、お話の内容に沿ったセリフを、バトルしているファイターの声や動きに合わせた発声で話します。意味のあるセリフが「アチョー!」とか「アウッ」などの叫び声に似せて発音されるのがバカみたいで笑えます。技の名前を言いながらジャンプするのが一番ウケてたかな。これがシベ少の巧さですよね。スト2を知っている人には可笑しくてたまらないです。

 そう、スト2を知っているなら楽しめるのですが、知らない人は面白さ半減以下ですよね。また、ファイトシーンでは音響が大きくなるし、しゃべる言葉もヘンになりますから、セリフがすごく聞こえづらくて意味がほとんどわからないんですよね。ファイターの動きとセリフがうまくかみ合ってないところが多かったのも残念です。

 私はストーリー重視なので、今回はその点で満足でした。結末も渋かったですね。浮浪者の女の推理によって、暴力事件は被害者の柚梨が自作自演したもの(狂言)だった・・・となるのですが、最後の最後に柳見から柚梨に送られた携帯メールの内容がスクリーンに映されて、どんでん返しになります。実は柳見が真犯人で、柚梨は柳見をかばって嘘の自白をしたのです。メールには「自分の身代わりになって欲しい。柚梨ならできるよ!」と書いてありました(言葉は完全に正確ではありません)。

 お芝居の終わりの音楽が篠原涼子さんの「恋(いと)しさと切なさと心強さと」でした。アニメ映画「ストリートファイターII」主題歌だったんですね。懐かしかったです。
 でも、なんでタイトルが「笑顔の行方」だったのかなー。開場時間にちゃんとドリカムがかかってましたね。「決戦は金曜日」だと直接的すぎるから?

作・演出 土屋亮一
出演 藤原幹雄・前畑陽平・吉田友則・横溝茂雄・出来恵美・篠塚茜・佐々木幸子
舞台監督/谷澤拓巳 音響/中村嘉宏(atSound) 照明/伊藤孝(ART CORE design)  映像/冨田中理(Selfimage Produkts) 舞台美術/秋山光洋 音源製作/霜月若菜 宣伝美術/チラシックス(土屋亮一・冨田中理) 制作/渡辺大 制作助手/保坂綾子・安元千恵 製作/高田雅士 企画制作/シベリア少女鉄道 主催/ニッポン放送
前売3,000円  当日3,300円(全席指定)
劇団HP:http://www.siberia.jp/

Posted by shinobu at 2005年05月10日 01:40 | TrackBack (2)