ナイロン100℃のケラリーノ・サンドロヴィッチさんの演劇ユニットKERA・MAP(ケラ・マップ)の第3弾は、キャストに大スターが勢ぞろい。常盤貴子さんは初の舞台出演です。
タイトルはパウル・クレーの絵画(Flora auf Sand)から来ているそうです。劇中にもクレーの話が出てきましたね。吉行淳之介さんの小説にも同タイトルの作品があります。
近未来のお話。日本に帰る途中の飛行機が南方の島に墜落し、奇跡的に数人の日本人男女が助かった。その島は戦争中で、廃墟でかくまわれた彼らが待てども待てども、日本からの救助隊が来る様子はない。
休憩10分を含む3時間半は、長かった・・・。もー疲れてきってしまって、終わったときは「やっと終わった・・・」と深いため息をついてしまいました。
演劇評論家の扇田昭彦さんが、作品自体についてかなり褒めながらも、最後に「3時間半におよぶ内容には削れるところもあるだろう」という意味のことを朝日新聞の劇評に書かれていましたが、同感です。
ここからネタバレします。
極限状態に陥った人間同士、どんどんと関係がすさんでいって、次々と登場人物が死んでいきます。深刻な状態にも関わらず軽い感覚で笑いもたくさん。ケラさんならではのナンセンスな世界でした。戦争の要素が入っているのは『ドント・トラスト・オーバー30』、『消失』からも続いていますね。
自称・未来から来た少女マリィ(つぐみ)は、屋上で遠くの町が爆撃されるのを眺めながら「戦争は遠くから見るときれい」と言い、部屋の中で道男(赤堀雅秋)が奈々(猫背椿)になぶり殺されるのを見ながら「これが戦争?近くで見る戦争は怖い」と言います(言葉は完全に正確ではありません)。爆撃も戦争ですが、無法・無秩序も戦争ですね。
今回初舞台で話題の常盤貴子さんについては、他の女優さんがものすごく強い個性を出していたせいもあると思いますが、きれいな人だとかスターだとか、そういうことを配慮しなければ、特に良いとも悪いとも思わない女優さんでした。簡単に言うと印象が薄かったですね。扇田さんが劇評で、常盤貴子さんの演技には「もっとふくらみが欲しい」と書かれていました。同感です。
性格最悪のエロにいちゃん、道男役の赤堀雅秋さんが凄かったです。何食わぬ顔でやらかす事がめちゃくちゃ汚くて怖い。いためつけられて、もがき苦しんでいる演技を見ても、全然助けたいと思わなかったです。それぐらい悪人が板についていました。道男の彼女(奈々)役の猫背椿さん、肉体関係を持つ真柴玲子役の西尾まりさんとのやりとりも良かったです。
池谷のぶえさん(脳に少し異常をきたしてしまった坊園婦人役)がとにかく確実に笑いを巻き起こしてらっしゃいました。私は池谷さんの大らかさに心奪われました。
キャストも豪華ですが美術(小松信雄)も豪華でした。大掛かりな舞台装置が動きながら転換するのは圧巻です。チケット代(8000円)が高くても納得です。『カメレオンズ・リップ』でもそう思いました。ただ、何度も何度も同じ転換方法だとちょっと飽きが来ちゃうかも。
ケラさんお馴染みの映像と音楽は、文字の分量が多かったものの、いつものクオリティーで楽しませていただきました。
は~・・・「とにかく疲れた」という言葉に尽きるかもしれません・・・ごめんなさい。他の方のレビューをぜひ参考にしていただけたらと思います。
≪言及ブログ≫
藤田一樹の観劇レポート
某日観劇録
デジログからあなろぐ
観劇?飲んだくれ?日記
臭い人
ひょりシアター
Sound and vision of Hide
街へ出よ、そして家へ帰ろう
偶然の音楽
easy Going
アロハ巡礼
makicom
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:筒井道隆/常盤貴子/渡辺いっけい/温水洋一/西尾まり/猫背椿/池谷のぶえ/赤堀雅秋/つぐみ/山本浩司/喜安浩平/他
舞台監督:福澤諭志+至福団 舞台美術:小松信雄 照明:関口裕二(blance, inc DESIGN) 音響:水越佳一(モックサウンド) 映像:上田大樹(INSTANT wife) スタイリスト:藤井亨子 ヘアメイク:武井優子 演出助手:小池宏史 大道具:C-COM舞台装置 小道具:高津映画装飾 宣伝美術:高橋歩 宣伝写真:中西隆良 宣伝スタイリスト:菊地ユカ 舞台写真:引地信彦 制作助手:市川美紀 土井さや佳 寺地友子 制作:花澤理恵 企画・製作:株式会社シリーウォーク
前売り:8000円 当日¥8,500
※未就学児童は入場不可。
劇団内:http://www.sillywalk.com/nylon/part-time/0505_8.html#kera1
イープラス特集:http://eee.eplus.co.jp/s/kera_map/