河原雅彦さん、千葉雅子さん(猫のホテル)、村岡希美さん(ナイロン100℃)、坂田聡さん(元ジョビジョバ)の4人ユニットの旗揚げ公演です。
公演サイトによると、「たつこが恋するプリンスとかつこを凌辱するゲストレイパーを招くスタイルでシリーズ上演していくという試み」だそうで、今回はプリンス(ゲストラバー)が松重豊さん、ゲストレイパーが粟根まことさんという豪華キャスト。
ワケあり姉妹のたつことかつこ、そして妹のかつこを慕う谷村と、謎の男・末次の4人がいつも登場するシリーズもので、姉は毎回誰かと恋に落ち、妹は毎回誰かにレイプされるというのがルールのようです。続いていくと楽しそうですね。
上手い役者さんが揃った人情悲劇で、笑いのネタがふんだんに散りばめられています。私が観た回は、全体的にどこで笑ったらいいのかがわかりづらい仕上がりでした。たぶん公演の後半になったらもっと磨きがかかるのではないでしょうか。
河原雅彦さんの演出作品は今までに『世にも素敵なネバー・エンディング・ストーリー』、『鈍獣』、『バット男』を拝見しましたが、その中ではこの作品が一番面白かったです。演出の種類としてはにぎやかし的なものや運動会系のものも多いので、好みは分かれると思います。
あらすじを簡単に書きますが、これから観に行かれる方は読まれない方がいいと思います。
かつこ(村岡希美)は殺人罪で函館の女子刑務所に服役している。看守の谷村(坂田聡)は品行方正で優しく、誰からも慕われているかつこを見て、彼女は誰かの罪をかぶって刑務所に入ったに違いないと考えた。谷村は行方不明になっているかつこの姉のたつこ(千葉雅子)が真犯人だと見て、たつこの行方を追った。
たつこは、かつことは違ってかなりはねっ返りの強い性格だ。沖縄の牧場に流れ着いて生活をしていたが、旅行者の振りをしてたつこを偵察に来た谷村の正体に気づき、持ち前の喧嘩っ早さが炸裂する。暴れるたつこを止めたのは東京から来たもぐりの獣医、五十嵐(松重豊)だった。たつこは五十嵐とともに、出所したかつこが暮らす東京へと出発する。
出所したかつこの前に、彼女をレイプした歌川(粟根まこと)が「俺の子供に会いたい」と言って現れます。そこで回想シーンになってレイプの場面が再現されるのですが、粟根さんは体の動きがめちゃくちゃきびきびしていて迫力があり、レイプだけれどコミカルな演出が生きていて面白かったです。これがこれからのシリーズ上演で毎回あるのだと思うと面白いなって思いました。レイプされるのは村岡さんで、その相手は毎回違うんですよね。たつこと五十嵐の恋もほんのりいい感じでしたので、たつこの恋人役についても楽しみになりそうです。
“がや四人衆”として小林顕作さん(宇宙レコード)、政岡泰志さん(動物電気)、伊達暁さん(阿佐ヶ谷スパイダース)、信川清順さんがどんどん着替えて色んな役を演じます。舞台に立つことがすっかり板についている役者さんばかりですので観ていて不安になることはありませんでしたが、ちょっと大げさすぎたかな。キャラクター勝負のきらいがあるのが見えると、私は冷めてしまうんですよね。
政岡さんがかつこと同じ衣裳を着てかつこの回想シーンで代役をするのは笑えました。
伊達暁さんは最後のヤクザ役の時がカッコ良かったです。
家具などの大道具をたくさん出したり、しまったりして場面転換します。何人もの演出部のスタッフが装置を運ぶので転換の時間が自然と長くなるのですが、その間も役者さんの演技シーンになっているので、スムーズに次のシーンに進んでいました。
私はストーリーやメッセージ等よりも役者さんの演技やキャラクターを楽しんだという印象です。
≪東京→大阪≫
作:千葉雅子 演出:河原雅彦
出演:小林顕作(宇宙レコード) 政岡泰志(動物電気) 伊達暁(阿佐ヶ谷スパイダース) 信川清順 中嶋徹 伊藤一将
<初代・ゲストレイパー>粟根まこと (劇団☆新感線) <初代・ゲストラバー>松重豊
舞台監督:福澤諭志+至福団 音響:山本能久(SEシステム) 照明:倉本泰史(APS) 宣伝美術:Coa Graphics(藤枝憲 高橋有紀子 河野舞) 制作協力:キョードー大阪 製作助手:川辺美代 制作:伊藤達哉 花本理恵 那須みちの プロデュース:菅野重郎 製作:アール・ユー・ピー
公演ページ:http://www.rup.co.jp/200502nagare/index.html