世田谷パブリックシアターの今年の目玉作品のうちの一つ。とりあげる演目が次々と話題を呼ぶ、すごい劇場ですね。
イギリスの人気劇団コンプリシテの芸術監督サイモン・マクバーニーさんの新作。しかも村上春樹の小説をモチーフに、というからにはチケットも売り切れるわけです。マクバーニーさんは日本が好きだそうで、三島由紀夫や谷崎潤一郎なども読んでいらっしゃいます。
最新の映像技術を駆使したスタイリッシュな舞台パフォーマンスでした。舞台奥の壁全体に映像を映し出し、舞台上ではドアや窓、TVにも映像が鮮明に映し出されます。机、冷蔵庫、TV、ふすま等のあらゆる装置と役者さんがシステマチックに動き、舞台奥の映像とあいまって、舞台全体が動くオブジェのようでした。映像と人のバランスが面白かったです。それだけで退屈しませんでした。
かなり多用されていたのが可動式の白いドア。動くと同時に映像もちゃんとついてくるんです。ドア自体にプロジェクターがくっ付いているみたい。舞台奥の壁全面にゾウの体が映写されていた時、その、ちょうどゾウの目の部分にゾウの目が写っているTVが重なったのには感心しました。舞台上でビデオカメラをまわして撮影した映像を、そのまま壁面の映していると思ったら事前に録画されたものが映っていたりしました。ある種のイリュージョンですよね。
あれ、全部計算してるんだろうな~って思うと気が遠くなります。そして本番のオペレーションがすごいと思いました。一体何人でやっているんだろう・・・・。やっぱり装置の動きは全てコンピュータ制御らしいです。バグが出まくって開演1時間押しの日があったとか?あなおそろしや。私が観た回では、あからさまなミスは1箇所だけだったので運が良かったのかも。
エピソードは3つ。村上春樹さんの文章ほぼそのままに表現されていました。私は、夫婦がマクドナルドを強盗するエピソードが一番好きでした。海の映像が舞台全面に映し出され、まるで水の底にいるような心地。上からロープで吊られた堺雅人さんが、空中(水中?)を自由自在に浮かびながら冷蔵庫の上にぽ~んと飛び上がったり、敷居の上に乗ったりするのは見事。あれ、上手と下手で手動でロープをひっぱっているんですよね。その様子を敢えて見せているのがデジタルとアナログの好対照でした。面白い。
世田谷パブリックシアターって、近未来的な装置がとってもよく似合いますよね。『ロベルト・ズッコ』の金属質な感じが良かったのを思い出しました。
吹越満さん。かっこいいおじさんでした。言葉がはっきりしていて聞きやすかったです。
高泉淳子さん。スタイルいいな~♪子供っぽい声と対照的。
堺雅人さん。気持ちよく体に入ってくる、凛とした声。セリフがさわやかなそよ風のように心に届きました。ぐるぐる宙で回る動きもただ回るだけではなく美しかった。運動神経抜群。
宮本裕子さん。もっと目立って欲しかったな~・・・。立ち姿が美しかった。
物販にものすごい人だかりでした。客層が演劇関係だけじゃないことが顕著ですよね。アイドル興行以外で、パンフや本の物販に人が群がるのを久し振りに見ました。私も蜷川さんの対談集『反逆とクリエイション』を買ってしまいました。
世田谷パブリックシアター : http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/
Posted by shinobu at 2005年06月26日 00:51 | TrackBack (0)