イギリスの脚本家マイケル・フレインの爆笑バックステージものです。演出は白井晃さん。なんと演出家役として出演もされます。
予想をはるかに上回る面白さでした!いや~メルマガ号外まであと一歩っ。これは体験しなきゃ損ですよ!
「一度幕を開けた限り、舞台は続行されなければならない(ショウ・マスト・ゴー・オン)」の世界でのドタバタは、観てる方もかなりスリリング。これはもう笑うしかないと腹をくくって観に行ってください。「こんなことが実際に起こったら、私はたぶん激怒しちゃう・・・」とか思ってると楽しめません(笑)。
【ちょっぴり情報】
途中休憩が1度(15分)ありますが、すぐさまお席を立たず、どうぞ慎重に。そしてお早めにお席にお戻りください♪
≪あらすじ≫
『Nothing on(ナッシング・オン)』という芝居を上演するある一座。初日は明日だというのに、台本が遅れたため、俳優は段取りを覚えられずに四苦八苦。しかもスタッフは連日の徹夜で意識も朦朧。稽古は遅々として進まない。真夜中を過ぎて、演出家の我慢も限界に。それでも一座は何とか初日の幕を開けるべく、懸命に稽古を続けるのだった。
(~Stage Note 2005/6/7号より引用~ ※Stage Noteは新国立劇場が発行している無料パンフレットです。)
準備不足から当然起こるトラブルの上に、カンパニー内での恋愛関係のいざこざや、俳優たちのわがまま放題な行動も加わって、事態はどんどん悪化していきます。
白井「模型かなんかつくって人間の出入りを考えたんじゃないかと思うぐらいにウラオモテのことが、タイミングまで考えて書かれていますね。(笑)」(※公演プログラムの白井晃さんと栗山民也さんの対談から引用)というように、ものすごく細かいところまで計算された脚本です。脚本どおりやることも難しいと思うのですが、今作品では脚本を超えたところの演出ものびのび、生き生きしていて、もー楽しくって楽しくって仕方なかったです(特に第1幕)。
ここからネタバレします。
榊原郁恵さんが主演された2002年の『ノイズ・オフ』@ル・テアトル銀座は、あまり面白くなかったんです。いわゆる翻訳もの(洋物)芝居になっちゃってたので。だから正直なところ今回もあまり期待していなかったんですよね。だけど幕が開いた途端、舞台上にいる俳優を「沢田さん」「今井くん」と演出家(白井晃)がマイクを通して呼ぶのが聞こえて・・・そうか!舞台を日本にしたんだ!!超ウキウキですよっもうっ!
第1幕で登場人物の紹介をしながら劇中劇の全容を見せて、第2幕、第3幕でその崩壊が描かれるのですが、第2幕で描かれるのは初日から約一ヵ月後。一ヶ所目の旅公演の地で、劇場は九州の“北九州ゲイジュツ館”(笑)。そして第3幕で描かれる千秋楽の劇場は“新潟リューとピア”です♪
白井さんと井川遥さんが恋人同士で、白井さんは舞台監督助手の谷村実紀さんともデキてるっていうのが生々しくって、嘘だとわかっていてもちょっとドキドキします。沢田亜矢子さんの「私もいろいろあったから・・・」というセリフとかも(笑)。老齢の大御所俳優役として森塚敏さんが出てるのもリアル。森塚さんは何をやっても面白かったです。
第1幕が終わった時は、「これはメルマガ号外が出せる!」って確信していたんですけどね。第3幕の終わり方がどうも寂しかった。
色んな行き違いと勘違いの結果、舞台監督の大林洋平さんも演出家の白井さんも、泥棒役(本来は森塚さんの役)になって舞台上に出てきてしまいます。泥棒が3人も並んじゃって全く収集がつかなくなり、とうとう山崎美貴さんが白井さんに助けを求めます。そこから普通のお芝居になっちゃったんですよね。私が「ナッシング・オン」の観客ではなく、「うら騒ぎ」の観客になってしまったんです。もともとの脚本がどうなっているのかは知りませんが、最後の最後に世界がしょぼんとしぼんでしまったように感じました。
井川遥さんの演技に一番素直に笑わせてもらいました。井川さんはテレビのアイドルで舞台経験が少ないという役柄なので、アドリブに対応できない様子が可愛いらしいです。今井朋彦さんが必死で機転を利かせてトラブルを処理しようとしても、脚本のままのセリフを言い放つことしかできず、事態は好転しないどころかもっと泥沼にはまっていきます(笑)。一生懸命な演技だからこそ笑えるのが嬉しい。
客席に置いてある劇中劇のリーフレットの内容が面白すぎて、客席で肩を震わせながら読みました。「本リーフレットの内容はフィクションであり、ほとんど事実と異なる内容となっております。正しいプロフィール等は劇場ロビーで販売の公演プログラムをご参照ください。」とのこと(笑)。
それ以外にも細かいサービス(演出)がたくさんあって、劇場にいることを最大限に楽しませていただきました。白井さん、ありがとう!
シリーズ「笑い」④
出演=沢田亜矢子/井川遥/谷村実紀/山崎美貴/ 今井朋彦/羽場裕一/大林洋平/白井晃/森塚敏
作=マイケル・フレイン 翻訳=小田島恒志 演出=白井晃 美術=松井るみ 照明=高見和義 音響=井上正弘 衣裳=前田文子 ヘアメイク=佐藤裕子 演出助手=豊田めぐみ 舞台監督=矢野森一
A席5,250円 B席3,150円 Z席=1,500円 当日学生券=50%割引
劇場内:http://www.nntt.jac.go.jp/season/s268/s268.html
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