近藤さんのスピーディーな演出が倉持さんの脚本にぴったり&しっくり!泣けちゃうシーンもあって、かな~り面白かったです。松嶋さんを盛りたてる3人の男優の演技が緻密で小気味よく、1時間30分強のぎゅっと凝縮されたお芝居でした。
東京公演は7/1(金)で終了。残り3ステージです。当日券については劇場(TEL 03-3797-5678)にお問い合わせください。
暗い舞台で緊張感のある対話が静かに始りました。てっきりサスペンスものかと思ったら、身近な知り合い同士の間のコミュニケーションがテーマになった、けっこうほんわかしたお話で驚きました。
やっぱり倉持さんの脚本は見逃せないなーと思います。ペンギンプルペイルパイルズ2月公演『機械』では「自分が探しているもの・目指すものは、自分の近く(中)にある」ということが表されていましたが、今作では「遠慮したり先入観を持ったまま腫れ物に触るように付き合っていては、いつまでたっても本当に心を伝え合うことが出来ない。いっそ勇気を出して本音を言ってみたら。相手が壊れてしまうかもしれないし、そのせいで自分も壊れるかもしれない。だけど、ぶつかってみて、壊れてみて、そこから何かが始るだろう」というメッセージを受け取りました。
大人同士のお付き合いって浅く広いものになりがちです。波風が立たないように気を使って本音を隠したり、むりやり穏やかに振舞ったりするために、かえって疑心暗鬼になったり、不必要な嘘をついたりして、予定外のトラブルが起こってしまったりします(自省もこめて告白。職場で特に起こりやすいですよね)。
4人の登場人物のように、格好悪くても本気でぶつかっていく対話スタイルを実践しなきゃと思いました。ただし、そのベースには「愛」があることが必須です。それが『礎』になるんじゃないかなと思います。
≪あらすじ≫
ちょっとわがままな女優の栗子(松嶋尚美)は、大人しい性格の大学教授の中森(酒井敏也)と結婚している。栗子のマネージャーの目黒(近藤芳正)は栗子にはヘコヘコしているが、金持ちの後輩・本郷(山西惇)に対しては先輩面をして威張っている。目黒はどうしても本郷に頼みたいことがあるのだが、本郷の腰が低すぎてなかなか聞き出せない。
ある日、中森は栗子に重大なことを打ち明けて・・・。
舞台全体を客席が囲む、円形劇場ならではの使い方でした(大阪公演は円形じゃないようです)。正方形のステージの中央に黒くて頑丈そうな石の台が置いてあります。栗子と中森の家のリビング・テーブルになったり、本郷が大切にしている古代の銅像(?)が置いてあった台座になったり、男3人の秘密スポットの遺跡(?)になったりします。
イスや靴、カバンなどの小道具はステージの脇に作られた蓋つきの箱にしまい、役者が舞台にいるまま照明の変化で場面転換します。これがスピーディーで視覚的にも面白く、ずーっと作品世界の浸かっていることが出来ました。
栗子と中森、中森と目黒、目黒と本郷、本郷と栗子・・・というように、登場人物が自分以外の3人と1対1で対話するシーンが全てのペアについてありました。脚本にある笑いにも演技で見せる笑いにも大満足。
秘密のUFO出現スポットに4人が集まって、全員が片足で立ってUFOを見つめるシーンには笑いながらじーんと来ました。本郷が持っている台座に4つの足(?)が乗っていた形跡があることにつながっているのですが、まさかこんなにメッセージが込められた感動的なシーンになるとは思いませんでした。
松嶋さんは声がかすれていて(もともと?)聞こえづらいセリフも少しありましたが、演技の切り替えや動きもてきぱきしていて、しかも美人なので、紅一点の重要な役割を十分に果たす魅力的な方でした。
周りの男性陣は皆さん息を呑むほど演技が上手い!近藤さん、酒井さん、山西さん全員のファンになりました。演技合戦を満喫。
日本語ヴォーカルの曲が2曲使われていました。HUMBERT HUMBERTというアーティスト(男女アコースティック・デュオ)の「11のみじかい話」というアルバムからの2曲で、優しい音色と歌声が心に沁みました。CDがロビーで販売されています。
≪東京、大阪≫
作:倉持裕 演出:近藤芳正
出演:松嶋尚美(オセロ) 酒井敏也 山西惇 近藤芳正
美術:松岡泉 照明:笠原俊幸 音響:鹿野英之 衣裳:花谷律子 演出助手:西祐子 舞台監督:村岡晋 宣伝美術:タカハシデザイン室 宣伝写真:清水博孝 篆刻:宮原康展 制作協力:ユニマテ 制作:TSP 製作:劇団ダンダンブエノ
劇団:http://www.dandanbueno.com/
公開舞台稽古(シアターガイド):http://www.theaterguide.co.jp/pressnews/2005/06/23.html
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