REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2005年07月07日

ブロードウェイ・ミュージカル『プロデューサーズ』07/06-24東京厚生年金会館

 爆笑パロディー映画でも有名なメル・ブルックスさん作詞・作曲・脚本・プロデュースのミュージカルです。トニー賞史上最多12部門受賞。アメリカ、ロンドンで大ヒットしてこのたび初来日。
 チラシの雰囲気から『コーラス・ライン』などの普通のミュージカルかと思っていたんですが、大間違いでした!作品のカラーは・・・モンティ・パイソン(Monty Python)に似てます!爆笑というよりは苦笑に次ぐ苦笑(笑)!も~笑いすぎてミュージカルだってことも忘れてました。
 いや、音楽も歌も踊りもほんっとに素晴らしいです。でもね、これ、とにかく普通のミュージカルじゃないです。あぁ、こんな言い方だと語弊がありますが、とにかく騙されたと思って観に行ってください!
 舞台写真はこちら(シアターガイドより)。

 人種差別、女性蔑視、老人虐待、ナチス礼賛など、不謹慎極まりない題材だらけです。だけど笑わずにはいられない!!三谷幸喜さんが下記の賛辞を寄せている意味がよ~くわかりました。
 「映画『プロデューサーズ』はもともと大好きな作品。登場するキャラが全員変人、なのにとてつもなく愛しいんです。知る人ぞ知る傑作だったのが、今はこんなにメジャーになって、メル・ファンにとっては感涙の極み。こうなったら次は『ヤング・フランケンシュタイン』のミュージカル化をぜひ。お願いします、メル先生!」(プログラムより引用)

 海外から招聘された作品って、作者や演出家の名前は覚えますが出演者までは気にならないのがほとんどなんです。でもこの作品では、主要な役を演じた役者さんの顔と名前を覚えたい!っていう気持ちになりました。歌と踊りはもちろんですが、演技もすごく面白いんですよね。演出のスーザン・ストローマンさんが「うまく私たちを笑わせることができた者だけが、オーディションに合格した」(プログラムから引用)とおっしゃっています。だから笑いに関してプロの人が勢ぞろいしているってことですよね(笑)。

 ここから細かく書いていきます。これから観に行かれる方は読まれない方が良いと思います。

 ≪あらすじ1≫ ※プログラムから引用
 1959年、ニューヨーク・ブロードウェイ。マックス・ビアリストック(Bob Amaral)は、かつて“ブロードウェイの王様”とまで呼ばれていたスゴ腕のプロデューサーだが、最近は鳴かず飛ばずの不作続き。『ハムレット』を翻案した新作ミュージカル『ファニー・ボーイ』も散々に酷評され,即座にクローズになってしまう。それでも懲りない彼は、金づるの“金持ち・有閑・夫なし”の老婦人を時間差で連れ込んでは甘い言葉を囁き、小切手を切らせて新作の資金にしようとしていた。

 そこへやってきたのは気弱な会計士のレオ・ブルーム(Andy Taylor)。マックスの帳簿確認をしたいたレオは不思議な事実に気づく。当たらなかった作品は、制作費は投資家からの資金で賄われ、かつ配当を払わずに済むため結果黒字になるという事に。これにマックスは飛びついた。「投資家から必要より多く出資を募り、絶対当たらない作品を創れば・・・大儲けだ!」。プロデューサーにあこがれていたレオも巻き込まれ、二人の“史上最低のミュージカル製作”が始まる。
 ≪引用ここまで≫

 マックス役のボブ・アマラルさんとレオ役のアンディー・テイラーさん、そしてミュージカルを作るメンバーの演技がまさにモンティ・パイソンなんですよね~(笑)。「それ、わかる人にはわかるけど、わからない人のほうが多いんじゃない?ってゆーかそんなの見せられたら困るかも(笑)」と突っ込みたくなるような細かいギャグがいっぱい。私は楽しくてしょうがなかったです。
 マックスは淫乱なおばあ様とスケベなごっこ遊びをすることで小切手を手に入れるんですが、この表現がめちゃくちゃ誇張されていて可笑しいんです。同じ服を着たおばあ様たちがワンサカうごめいている“LITTLE OLD LADY LAND(小さな老婦人の国)”は卒倒モノ(笑)。ブランコに乗ってウフフフフっと微笑むおばあ様、歩行器につかまりながら全員でタップダンス、さらにバック転までしちゃう無数のおばあ様。そしてその全員からにこやかに小切手をむしりとるマックス。
 気の弱いレオは何かトラブルがある度に、赤ん坊の頃から肌身離さず持っている毛布の切れ端に、頬をすりすりします。これがめちゃ情けない!でもカワイイ!会計のルーチンワークの毎日の中で、レオがプロデューサーになる夢を見るシーンは最高にわくわくしました。

 ≪あらすじ2≫ 
 スウェーデン出身のゴージャスで奔放な美女ウーラがオーディション希望で事務所に現れた。取り敢えず秘書としてウーラを採用し、資金集め、オーディション、稽古と一歩一歩計画を進めていく二人。
 ≪引用ここまで≫

 このウーラ(Ida Leigh Curtis)がまさに女性蔑視コーナー担当(笑)。胸ボン!腰キュッ!お尻ボン!足は細くてめちゃ長い!!って感じで超スタイルいいんですよ。それで完全にお尻まで見えちゃうような振付で踊りまくるんです。「身についているものは見せびらかしなさいって教えられたの!」という内容の歌を歌いながら。もちろんマックスもレオもウーラに悩殺されます。またこのウーラのスウェーデン語なまりの英語が可笑しいんですよね~。

 絶対に失敗するミュージカルの脚本として選ばれたのが『Spring time for Hitler(ヒットラーの春)』。演出および振付などのスタッフワークを担当するのが全員ド派手なゲイ。後半でこの作品が劇中劇として披露されます。ヒットラーを崇拝し、第二次世界大戦にもドイツが勝っちゃうという内容なんです。強烈ですよ、ホント(笑)。ハーケンクロイツの腕章をつけたドイツ軍人が足を上げて踊りますし、ゲイのヒットラーが腰をくねくねさせながら「HEIL(万歳)!僕を!」と歌いあげます。異常に豪華な衣裳や装置がさらに苦笑を誘いましたね。つらかったな~、笑いをこらえるのが。だって内容が内容だから大声では笑いにくいんですよぉ。客席は大うけでしたけどね(笑)。

 そして二人が必死で作り上げた最悪のショーの幕は開いたのですが、その後どうなったか・・・ネタバレします。

 ≪あらすじ3≫ 
 そして初日の夜。突拍子もない物語の演出、俳優たちの怪演に始めは唖然としていた観客たちが、ニ幕からは爆笑に次ぐ爆笑、拍手喝さいのカーテンコールまで始める始末。翌朝、各新聞に出た劇評も絶賛の嵐で、劇場はチケットを求める人々に取り巻かれた。
 大番狂わせにおろおろする二人に、さらなる不運が追い討ちをかけて・・・。
 ≪引用ここまで≫

 成功してしまうだろうな~とは思っていましたが、まさか二重帳簿がばれて投獄される方向に堕ちるとは予想できなかったな~。投獄されたマックスがそれまでの流れを1曲にまとめて歌うのは圧巻でした。
 意外に早くに出所できた二人がブロードウェイに舞い戻り、どんどんと新作を作って大ヒットを飛ばしていったというハッピーエンドになるんですが、その新作っていうのがまたスゴイ。例えば『セールスマンの死 on Ice』とかね(笑)。

 それにしてもやんちゃな作品だったな~。「そんなことしていいの!?ダメだよね!?」って思うようなことの連発ですから。チケット代が高いのが難点ですが、まあ観て損はないと思います。8月にジャニーズのいのっちが出る『プロデューサーズ』もありますが、中身は全然違うでしょうしね。

"THE PRODUCERS" the new MEL BROOKS musical
出演=Bob Amaral(ボブ・アマラル)/Andy Taylor(アンディー・テイラー)/Rich Affannato(リッチ・アファナート)/Ida Leigh Curtis(アイダ・リー・カーティス)/Stuart Marland(ステュアート・マーランド)/Bill Nolte(ビル・ノルティ)/ほか
脚本・作詞・作曲・プロデューサー=メル・ブルックス 脚本=トーマス・ハーマン 演出・振付=スーザン・ストローマン
S席13000円 A席11000円 B席9000円
主催=TBS/ホリプロ/キョードー東京/朝日新聞社
公式:http://www.theproducers.jp/

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。

メルマガを発行しております。過去ログはこちら
 毎月1日にお薦めお芝居10本をご紹介し、面白い作品に出会った時には号外も発行いたします。
 ぜひご登録ください♪
 『今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台』(ID:0000134861)

↓↓↓メールアドレスを入力してボタンを押すと登録・解除できます。


登録フォーム






解除フォーム




まぐまぐ


『まぐまぐ!』から発行しています。

Posted by shinobu at 2005年07月07日 01:06 | TrackBack (0)