椿組の夏恒例の花園神社野外ステージはなんと20周年だそうです。気になる役者さんがたくさん出演されているので今年も観に行くことにしました。
お目当ての一人(というか目玉)だった山本亨さんが、19日(火)の本番中に骨折されたために降板されていました。かなりショック・・・でしたが、突然に主役級の役者が降板したことなど全く想像させない、素晴らしい出来でした。
傷ついて戦場から帰還した男たち、飢えに耐えて待っていた女、子供、老人ら日本人が、敗戦直後の何もない焼け野原からどうやって立ち直り、生き延びていったか。活気溢れる闇市を舞台に、少しずつ復興していく新宿が描かれます。
大勢の役者さん(計38人)が土の舞台を走り回り、大きな声で元気いっぱい演技されます。夏祭りの熱気に似ていました。でも、舞台と客席には夜の涼風がすーすーと吹き込むので暑苦しいということはなく、野外ステージならではの楽しみを満喫させていただきました。
ここからネタバレします。
シーンが変わる度に前シーンの数年後の闇市へと時間が移り、ずんずんと未来へ進んでいきます。登場するのはめし屋の家族、洋服仕立て屋、酒屋、医者、絵描き、キャバレーの踊り子、歌手(のたまご)、娼婦、ヤクザ(野田組とブクロ組)、復員兵、進駐軍、警察官など盛りだくさん。
演出は離風霊船(りぶれせん)の伊東由美子さんです。恥ずかしながら離風霊船の作品は観たことがありませんが、この作品の演出はとっても良かったです。まず、活気溢れる闇市の喧騒が非常にうまく作られていました。ヤクザ同士のケンカなど立ち回りも多々あり、汗だくで土にまみれながら役者がからみあうのは見ごたえがあります。
軍服姿で鬼の面を被った、赤紙(あかがみ〕と呼ばれる死神が登場するシーンでは、死体がゆっくりと起き上がり、死神に誘われて退場するのですが、生きている人々も同じく舞台上にいるので「生」と「死」の対比があらわになり、うすら恐ろしい空気が流れました。
登場人物それぞれのバックグラウンドが、少ないセリフと演技でしっかりと表現されていました。酒屋の店主の金本(深貝大輔)が、大阪の鶴橋から出てきた朝鮮人だったというエピソードが特に簡潔で良かったです。
「チョコレートを腹いっぱい食べるのが一生の夢だ」という少年のセリフや、崩れ落ちた闇市を見ながら女が叫ぶ「もともと何にもないところからやってきたんだから、私たちは大丈夫!」というセリフなど、素直にまっすぐ発せられるセリフが胸に響きました。※セリフは正確ではありません。
大詰めで屋台崩しがあって、さらにラストシーンで新宿ゴールデン街のネオンが現れるのが嬉しかったです。装置作るの大変そう・・・。
山本さんが演じるはずだったのは、日本刀で人を切るヤクザの渡会(ワタライ)役。代役の方は稽古場にもいらした方だそうです(お名前はわからず)。お芝居が終わってから「山本さんは一体どの役だったんだろう?」と考えてもわからなかったぐらい、その代役の方はお芝居に溶け込んでいらっしゃいました。昨日の今日で、素晴らしいですよね。でも山本さんの立ち回りも観たかったな・・・・。
★代役の方、わかりました。小林裕忠さん(離風霊船)です。小林さんのもともとの役は松本さんとおっしゃる方が演じられたそうです。詳細はこちら→つばきのつぼみ ※2007/07/21追記
仕込み風景によると、緞帳の絵はゲネプロ直前に即興で描かれたようです。青と赤の地に白い線と黒い文字(Tokyo JAPAN 1947)が効いている、おしゃれな抽象画でした(画=黒田征太郎)。
出演=山本亨(tpt)/若杉宏二(流山児★事務所)/恒松敦巳/円城寺あや/鳥居しのぶ/仁藤優子(ホリプロ)/伴美奈子(扉座)/田淵正博/木下藤次郎/犬飼淳治(扉座)/井上カオリ/長嶺安奈/深貝大輔/沖田乱/小林裕忠(離風霊船)/橋本直樹(離風霊船)/江頭一晃(離風霊船)/東虎之丞/佐藤滋(KAKUTA)/濱田龍司(ペテカン)/李峰仙/中村歩/岡村多加江/なみえ(オフィス★怪人社)/倉林恵美(離風霊船)/西口真生/瀬山江里子/冨樫舞/伊藤新(ダミアン) /林栄次 /平塚真介/真田幹也/宮本翔太/鳥越勇作/よこやまよしひろ/沢りつお(テアトルエコー)/宮島健/外波山文明
作=鈴木哲也 演出=伊東由美子 照明=沖野隆一(RYU CONNECTION) 美術=加藤ちか 音響=青蔭佳代(音スタ) 衣裳=出川淳子 振付=伊藤多恵 演出助手=城田美樹 アクション監督=山田一善(ZEN) テント設計=大塚聡 テント設営=東弘英 舞台監督=吉田均 制作事務=佐野寿衛子 宣伝美術=黒田征太郎 長友啓典 上浦智宏+K2 企画制作=椿組 プロデューサー=外波山文明 主催=椿組
前売り開始:6/1(水)木戸銭:前売3800円 当日4000円(中・高校生2500円) 毎夜7時開演 10ステージ
椿組:http://copain-web.com/shinobu/tubaki/top.html
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