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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年07月31日

ホチキス『殺し文句』07/29-31新宿シアターモリエール

 少年社中の役者さんが客演するのと音響が佐藤春平さん(元・少年社中)なのが気になっていたホチキス。愛知の劇団が東京に移動してきたそうです。すごいですね。
 チラシも大きなもので目立ってましたし、劇場が新宿シアターモリエールだったので伺ってみました。

 ≪あらすじ≫
 空間移動装置(?)を発明した初老の科学者が、発明品の完成記者発表の時に忽然と消えた。ある女性キャスターがその事件の謎に迫ろうとするが、なぜか上司にも止められ、挙句の果てには5歳の息子を誘拐される。どうやら科学者の失踪事件の背後には、警察や政府までもが絡んでいるらしい。
 野川家の家族構成は、根っから主婦の母親、人生あきらめてるっぽいOLの姉、ギャンブルで身を持ち崩している兄、学生服を着たまま引きこもっている弟、そしてオス猫のシリアス。父親はなぜかいない。家族団らんなど遠い昔のことで、今は完全に家庭崩壊している。オレオレ詐欺に騙されそうになった母親は、その詐欺師らに自ら頼み込んで誘拐されることにした。あることを実現したかったからだ。
 消えた科学者、女性キャスターと彼女を手助けする刑事、そして野川家の面々の世界が絡み合いながら、家族の秘密が徐々に明かされていく。
 ≪ここまで≫

 前説で猫役の役者さんが猫の姿で「今回のテーマは家族です」と言われた次点でめちゃ引きました。チラシのビジュアルといいタイトルといい、これで家族がテーマなんて・・・期待できないなぁと思いました。しかしながらオープニングが素晴らしかったので「あれ、これはもしかすると・・・?」と気持ちを切り替えられたのですが、残念ながら設定や展開を受け入れられず、楽しめずじまいでした。

 装置はかなり建て込んで作ってあり2階部分も上手く使っていましたが、空間全体が埋まってませんでした。役者さんの演技がおぼつかないのもありますが、場面転換がものすごく多く、その処理がうまく行っていないのも原因だと思います。

 いろんな種類のギャグがありました。アイデアや意図はとても面白いと思いましたし、チャレンジ精神も感じられましたが、私はお話自体に疑問を感じ続けていたので笑えませんでした。ギターを弾きながらマイクを通してアイドルみたいににこやかに歌いあげる男は面白かったですね。歌も上手いし。あとはネタバレになるので後ほど。

 女性キャスター役の方(残念ながらお名前は分かりません)が魅力的でした。背が高くてスタイル良くて、正面切ってはっきりとセリフを言われるのがかっこ良かった。声もいいですね。
 客演されていた少年社中の堀池直毅さんとロリータ男爵の丹野晶子さんは、お二人ともそれぞれの持ち味を生かして演じきってらっしゃって、観ていて楽しかったです。

 ここからネタバレします。

 面白いと思ったのは、空間移動装置で次元の隙間に行ってしまった父親が、母親を救うために遠眼鏡を投げるシーン。宇宙から地球、そして母親が居る工場へと遠眼鏡がぐんぐん飛んでいく映像が流れたのが可笑しかったです。

 ストーリーで特に私が受け入れづらかったことを一部書いておきます。愛嬌になる無理と、単に破綻してるだけの無理があるとすると、後者の無理が多すぎました。それにテーマが家族ですしね。
 ・母親は家出して誘拐されに行くが、その目的が「テレビに出て、自分の気持ちをはっきりと言うこと」だった。テレビに出たい理由は「子供達は自分の言うことを全く聞かず、テレビの言うことは真に受けるから」。
 ・事件が解決しても女性キャスターの子供は見つからず誘拐されたまま。しかしなぜか彼女はそれほど深刻ではなく、手伝ってくれた刑事のプロポーズを受けたり超能天気だった。
 ・タイトルの「殺し文句」は「お父さんはいらない」という母親の言葉だった。父親はショックながらもそれを受け入れ、現実世界に戻れる一度だけのチャンスを、誘拐された女性キャスターの子供を助けることに使う。(人間はそんなに簡単に自分の死を受け入れられないと思います)

出演=小玉久仁子/加藤敦/橋本哲臣/船戸健太郎/山崎雅志/堀池直毅 (少年社中) /濱松竜一朗/広瀬愛子/中川智咲子/村上直子/齋藤美和子/丹野晶子(ロリータ男爵)/大畑祐貴/江本和広/山本洋輔/内藤瑛亮/金田恵/星野祐介/米山和仁
作・演出=米山和仁 舞台監督=棚瀬巧 照明=柳田充(Lighting terrace Lepus) 音響=佐藤春平(Sound Cube) 衣裳=有藤加奈子 カバーイラスト=小玉久仁子 美術=ホチキス  宣伝美術=大澤悟郎 制作=山崎雅志/広瀬愛子 制作協力=聖澤毅 企画・製作=ホチキス
前売り開始6/11(土)全席自由 前売2,800円/当日3,000円 ※学割2,300円 計5ステージ
劇団:http://www.hotchkiss.jp/

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Posted by shinobu at 2005年07月31日 00:58 | TrackBack (0)