林灰二さんが作・演出されるOi-SCALE(オイスケール)の初のTHEATER/TOPS進出公演。前回の『モデルガン』に続く灰色3部作の第2段です。
死刑囚が収監されている地下室の恐ろしいお話でした。
Oi-SCALEというと、若者のバイオレンスを題材に、センスのいいギャグやポエティックで切ないセリフが散りばめつつ、出口のない恐怖やごく普通の人々の秘められた狂気を、ファンタジーとして描く作風がとても味わい深い、若手の劇団です。
しかしながら今回は、厳しさと同居するふんわりとした明るさが全くなく、どん底のように暗くて、私自身が世界の底の奥深くに閉じ込められたように感じました。ちょっと驚きましたね。
≪あらすじ≫
ある刑務所の地下に、5つの独房が集められた密室がある。収監されているのはいずれもただ死を待つのみの死刑囚たち。彼等を監視する部屋は密閉された地下室で人目につかないため、看守たちの溜まり場にもなっている。
ある日、囚人たちが独房から出た形跡が発見される。鉄格子のドアの鍵があらかじめ壊されていたのだ。
≪ここまで≫
劇場に入るなり、舞台装置が既に怖かったです。青い照明が薄く照らされた暗闇の中に鉄の格子戸が5つそびえています。戸の上にそれぞれ赤いランプが付いており(点灯していたかは不明)、照明の青とその赤、そして暗闇の黒とのコントラストがぎらぎらしているのです。その全体がプロジェクターで明るく照らされていたのですが、何が映っていたのかはわかりませんでした。
音楽も全体的に暗い感じでした。たまに明るいリズムの音楽もありましたが、基本的にドーンと落ち込んでいく方向です。真っ暗闇にコツ、コツ、と響いてくる足音、鍵のチャリンチャリン揺れる音など、効果音もなんだかホラー映画のようで、ちょっと効き過ぎの感があった劇場の空調がさらに涼しく感じられました。
お話を少しはみ出るぐらいのポップなギャグも、ホっとするような会話も、今回は最小限に押さえられたようです。場面転換やシーン数などはいつもよりかなり少なくなっており、意図的なくりかえしや、シンプルにしたためにギュっと凝縮された会話が多かったように思います。
つまり、ガツンとストレートに何かを発信していたような・・・しかしながらそれが一体何だったのかを私はしっかりと噛み締めることができませんでした。散りばめられたヒントを頼りにそれに近づこうとしたのですが、感じ取ることが出来たのはおそらく複数あるテーマのごく一部でしたね。
鍵のない独房から出られない死刑囚とは、つまりこの社会で自由に生きている私達のことを表していたと思います。自分の力で何かを起こしたり、変化を生んだりできるのに(鍵は開いているのに)、「こんな世の中は嫌いだ」「今の私は本当の私じゃない」などと不満を言いながら、何もせずにじっとしている(牢屋に入っている)わけです。また、日本のこの現代社会こそ、実は不自由な牢獄かもしれないという意味もありますね。
まだまだ他にもたくさんメタファがあるのですが、残念ながらきちんと言葉にできるほど追いつけませんでした。う~ん、残念無念。
わかりづらかった原因は、スライド映写や暗転のタイミング、転換時の物の移動などのスタッフワークがおぼつかない印象だったことと(初日だったからかもしれません)、出演者のスタンスのバラつき等でしょうか。
今までなら眼をつぶっていられたことが、今回はどうしても気になりましたね。描くものを絞り込んでいくと、それを成功させるためには何に対しても高いレベルが要求されるのだと思います。
次回公演のカラーチラシと、出演者募集(ワークショップオーディション)の申込書が既に折り込まれていました。第3段の最終章に期待したいと思います。
出演=星耕介/林灰二/清水慎太郎/太田恭輔(ブラボーカンパニー)/吉河童夢/人見英伸(iOJO!)/トモヒカン/大政知己(サモ・アリナンズ)/川崎賢一/須永祥之(アミューズ)
作・演出=林灰二 舞台監督=ego-eco 美術=仁平祐也 照明=中山仁(ライトスタッフ)音響=田島誠治(サウンドギミック) 演出助手=中村太陽 小道具=/中島香奈子 衣装=森光あきこ 宣伝美術・WEB=清水慎太郎 写真=ボクダ茂 制作=高橋唯子 制作協力=ぷれいす 企画・製作=Oi-SCALE
前売り3300円 当日3500円 (全席指定)
ミチガエレセカイ:http://www.oi-scale.com/oiweb/mitiseka/mitiseka_if.html
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