行く予定だった日が仕事でNGになって観るのをあきらめかけていたところ、「これは観た方がいい」というWeb上の噂が目に入り、必死で予定を組みなおして伺いました。
現時点でfringeの東京小劇場観測速報に登録されている7サイトの内、6人が観に行ったようです。
ある落語家が4人の弟子の中から自分の後継者を決めることになり、取材に来た出版者のライター2人の同席のもと、師匠とマンツーマンの試験を執り行っていきます。果たして後継者は誰に?? ※公演が終了していますので、これからネタバレします。
始まってから試験シーンになるまでに観る気力が減退してしまいました。師匠と出版社の2人が落語の演目「らくだ」について話す最初の方のシーンで、「私達、セリフを読んでます!」と明らかにわかるような状態だったのです。セリフに次ぐセリフが全て段取りに見えてしまいました。そしてたまに役者さんが自分の得意技(独特の仕草など)を披露するような・・・わざとらしい演技でした。
出版社の2人のやりとりは、観客の立場を代弁しているのかもしれませんが、こう・・・説明じみ過ぎているというか、古いのか、ダサイのか、観ていて困りました。また、いい年をした男性が自分よりも目下(部下)の女性の頭をパンパン叩くのは見苦しかったです。これは私個人のスタンスですが、暴力反対、です。
試験が始まってからは、4人の弟子それぞれの性格の違いが表現され、落語自体の楽しみもありました。脚本に書かれていた内容が知識として面白かったです。東大法学部卒の弟子と師匠との数遊び(「五人囃子とは?」「六歌仙とは?」など)はめっちゃくちゃ楽しかったですね。
弟子の名前が三国志に登場する人物名(劉備、関羽、孔明、跳飛)になっています。三国志の知識がゼロに近い私は残念ながら三国志ネタはわからなかったのですが、知っている人はすごく面白かったんじゃないでしょうか。
ただ、やはり試験シーンでも演技の問題が・・・。観客に向かって全員で語りかける群読シーン、師匠や出版社の人々、そして師匠の娘と一緒に「一人の弟子」として会話するシーン、そして客席に向かって本気で落語をやってみせるシーンなど、役者さんが瞬時に色んな立場に変化しなければいけない、難しい演出(脚本?)だったんですね。
普通の会話であるべきなのに段取りが決まった問答のように角ばっていたり、落語なのに観客に向かって話さずに、ただセリフを読み上げるだけになっていたり。残念ながら観ていられなかったり、聞きたくないと思うことが何度もありました。
ただ、4番目の弟子が師匠の十八番「らくだ」をやるシーンでは、落語自体にすごく聞き入りましたし、「落語に政治色を出したくない」という弟子と、出版社の男性との議論が非常に面白かったです。あのやりとりには本気が見えました。弟子役の役者さん(佐々木庸二さん)が上手だったように思います。
美術については、小さな舞台でのシンプルながらもダイナミックな転換に感心しました。縁側のような台が4~5台あり、弟子の一人一人の試験ごとにそれらをさまざまな配置に変化させます。次に起こることを期待させてくれました。
師匠の娘が実は養女で、師匠の子を身ごもっていたという落ちに、坂口安吾の堕落論とつながっている部分を感じました。
出演=中原和宏/吉田テツタ/段丈てつを/嶋村太一/佐々木庸二/桑名しのぶ/川本貴浩/井上美穂
作=北村想 演出=大西一郎 美術=加藤ちか 照明=阿部康子 音響=青木タクヘイ 舞台監督=小野八着 美術助手=甫木扶美 宣伝美術=外山もと 宣伝写真=染谷育子 制作=富永恵久子・有馬実歩
前売¥3,000 当日¥3,300 平日マチネ¥2,500 学生¥2,000
モンキー・ロード:http://www2.odn.ne.jp/monkeyroad/
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