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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年08月25日

bird's-eye view PLAY FESTIVAL『36000秒』(初日)08/20-28王子小劇場

 公演当日の朝9:30の時点から創作をはじめて10時間後に作品を発表、その創作過程もすべて公開する企画です。
 fringe blogにも記事をアップしました。fringeTOPIC(2005/8/22)にも取り上げられていますね。

 私が伺ったのは劇作家スペシャルDAYの初日。それがすっごく面白かったので翌日の有名パフォーマーDAYにもお邪魔しました。両日とも本番しか観られなかったのが本当に残念。この企画は朝の9:30からみっちり参加するのが一番楽しめます(断言しちゃう!)。今週末(8/26, 27, 28)もありますので、ぜひぜひ参加しちゃってください!

 この企画のまとめはこちら(2005/10/05追記)。

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 初日の参加者は杉井邦彦さん(ブラジル)、高多康一郎さん(RONNIE ROCKET)、夏井孝裕さん(reset-N)、楢原拓さん(チャリT企画)、西森英行さん(InnocentSphere)、西山聡さん(クロム舎)、ハセガワアユムさん(AAA)、長谷川寧さん(冨士山アネット)の8名。う~んスバラシイ!!このツワモノ面子はbird's-eye view主宰の内藤達也さんの人選だそうです(他の日もすべて)。

 ストーリーは「踊る芝居好きのダメ人間日記」にアップされています。そう、さすが作家さんたちということで、あの王子小劇場の空間を「密室」の設定にし、物語として最後に結末をつける所まで描ききったことが凄い。※終演してますので(今後上演も不可能ですし・・・笑)ここからネタバレします。

 私は一番はじめの西山聡さんの携帯電話トークと、次に現れたハセガワアユムさんと西山さんとの2人の会話シーンの時点で「これは面白い!!」って思ってしまったんですよ。西山さんは伏線を張ることになるキーワードを無理なく言葉にしていましたし、ハセガワさんは“ナースおたくの若者”というキャラクターを自然に作り上げられていました。

 早稲田大学系の楢原拓さんと杉井邦彦さんはやはりエチュードには慣れたもので、本番の舞台上で完全に楽しんでいるご様子でした。杉井さんは夏井さんと西森さんと同じく「最近は舞台に立ってない」メンバーに入っていましたが、そもそも東京オレンジ出身だもの(笑)、即興芝居はお手の物。堂々と仕切ってましたね。

 中盤で出演者全員がダンスをするんです。“作家”がダンス!しかもこのメンバー!こんなシーンもう二度と観られないよ!!ってことで私は妙な興奮状態になりました(笑)。きちんと顛末のついたストーリーものであるだけでなく、視覚的に楽しめるシーンが作られていることに感心しました。
 スモークがちゃんと焚かれてて黄色い照明がきれいだったな~。それにしてもダンス・タイムのリーダーだった長谷川寧さんのダンスはキレがあって個性的でしたねぇ(笑)。卑猥な発言・行動が多いし客席の女の子を舞台に上げちゃったり、出演者の中で一番冒険(危険?)していましたが、役者さんとして魅力があったので問題にはなりませんでした。

 高多康一郎さんは姿を見せずにキャットウォークからマイクでしゃべる内容が面白かった。舞台にいる人たちをいじめるような雰囲気がグッド(笑)。登場シーンもどうやら本番仕様のアドリブだったようで出演者はめちゃ戸惑ってましたねぇ。
 西森英行さんは目立たない感じでしたが、実は「目立たない」という存在感は演技がうまいからだったんだと、ダンス・シーンを観てからわかりました。長谷川寧さんのダンスを真似るのですが、その場で本気で真似をしているように見えたんです(実際は「真似をする」という演技だったのですが)。そして言葉にヘンな力が入ってないからセリフがすんなり入ってくるんですよね。
 そして夏井孝裕さんはツッコミが絶妙!!言葉選びのセンスも素晴らしいし、間や声の出し方が気持ちいいです。

 ラストシーンが美しかった・・・。和菓子(ワカコ)というキャバクラ嬢を取り合っていた男達が、治験という名目で密室に閉じ込められていたという筋書きだったのですが、最後は毒ガスでみな殺されてしまいます。床に転がった死体の間を、帽子を深く被った、おそらく和菓子であろう女がしずかに歩いていく・・・黒幕だった医師の助手(佐藤春平)がつぶやきます、「これでよかったんだよな、和菓子・・・」。テレビのモニターが砂嵐状態でばちばちと光って、白い照明が和菓子と死体を照らす中、音楽が盛り上がって、暗転。かっこよかったよー・・・。
 和菓子役は金崎敬江さんでした。もちろん観客として行ったのに突然出演依頼されたそうです(笑)。

 結果、1時間強の上演時間は長すぎたし、ダラダラしちゃったところもありました。でも何もないところから10時間で作り上げたんですから、全く不満はありませんでした。「ガンバレー!!」って思いながら観てたし(笑)。

 終演後一番に頭に浮かんだのは、スタッフワークのレベルが非常に高いのではないか?ということ。18時過ぎから仕込みが始まって(観客は劇場の外に出ます)、19時30分に開演しますので正味の仕込み時間はおそらく1時間しかないはずです。その間に照明、音響、マイク、小道具(キャットウォークから物が落ちてきました)を本番仕様に準備するんですから、よっぽど作品のことをわかっているスタッフさんでないと無理でしょう。
 そうそう、音響の佐藤春平さんはラストに医師の助手役としてマイク語りのみの出演もされてました。照明さんが「フェーダーを持ちながらセリフをしゃべって、自分のセリフ終わりごろから音を上げていく音響オペなんて初めて見た(笑)」とおっしゃっていました(笑)。

 終演後5分の休憩をはさんで毎回ポストパフォーマンストークがあるのですが、これがこの企画の目玉でしょう。観客はほぼ全員残っています(これってすごいことですよ)。出演者の生々しい感想でもって上演作品を振り返るのは面白いに決まってますし、創作から観ていた観客にとってはさらに感慨深いものがあるでしょう。朝から観ていたお客様の意見がものすごく貴重で、「○○は残念だった」とか「○○はどういう意図だったんですか?」とか、率直なコミュニケーションが成されるのは感動的。

 トークで語られた内容からすると、スムーズに進まなかった原因は「段取りを重視しすぎた」「他の出演者に気を使って余分なことをした」「予想外の事件が起こった」など。ゲネプロができれば解決できたことが多いでしょうが、なにしろ10時間(36000秒)という制限がありますからね。それを出演者も観客も一緒に味わって楽しめて、最後には対話もできるという、新しい演劇体験だと思います。

 ※出演者による感想が読めます↓
 ・脚本家・演出家 ブラジリィー・アン・山田の活動日記「汁だし」(2005/8/21
 ・そして、今夜もガサガサしてる(2005/8/21
 ・プライベートは日の丸(2005/8/20)(2005/8/21)(2005/8/22
 ・劇団ポータル系インターネット放送局818STAGE!!内「劇団生活No.00011」(2005/08/23の日記)

 ※観客から出されたお題は全部で4つ。「恐怖」「キャバクラ」「和菓子」「プラトニック・ラブ」。その全てを盛り込んだストーリーだったんですが、私が出した「プラトニック・ラブ」はどこに反映されていたんだろう・・・キャバクラ嬢とは肉体関係がなかったのかな?最初の方で夏井さんと長谷川さんがじゃれてたのがソレだったのでしょうか(笑)。

・上演期間=8/20(土)~22(月)、26(金)~28(日) ※出演者は日替り。
・当日朝9:30の時点から創作をはじめて10時間後に発表するという企画。
総合監督=内藤達也 照明=榊美香(I's) 音響=佐藤春平 ヨシモトシンヤ(SoundCube) 制作=眞覚香那子 提携=王子小劇場
bird's-eye view:http://www.b-ev.net/
公式ページ=http://www.lucy.ne.jp/~bev/2005_07/36000.htm

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Posted by shinobu at 2005年08月25日 11:08 | TrackBack (0)