鈴木瑞穂さんを拝見したかったのもありますが、俳優座ホームページの「※この公演はハーフチケットはございません。」という文章を見て、「これは人気作品なのかしら」と思い、チケットを買いました。
初演が1991年で今回がもう7演目だそうです。客席は通路席も最後列も満員でした。
1912年の春を舞台にしたJ.B.プリーストリィの原作(1945年初演)を、1950年代のお話に翻案したのが内村直也版で、その内村直也版を1940年(昭和15年)を舞台に書き変えたのが今作だそうです。
≪あらすじ≫
昭和15年の日本。工場経営者で資産家の倉持幸之助(鈴木瑞穂)邸のリビング。娘(藤本喜久子)の婚約を祝うために家族でホームパーティーをしていたところ、影山と名乗る警部(外山誠二)が突然訪れる。「今日、一人の女が自殺した」と話し始め、家族の一人一人に尋問を始めるが・・・。
≪ここまで≫
セリフが進むごとに謎が解けていく推理劇で、人間の滑稽さを見せる演技で笑わせてくれて、作品を通じて一つの主張もある、普通の上品な演劇、と言えばいいのでしょうか。リラックスしながら楽に観ることができました。私には少々退屈だったとも言えます。
「人間は一人では生きていけない。ひとつの家族だけでは生きていけないんです。ときには傷つけ合い、苦しめ合い、殺し合って・・・。だから、人間はほかの人間全部に責任があるんです。」(配布されたリーフレットより引用)
このセリフが全てを語っていると思います。
鈴木瑞穂さんのガンコ親父演技は至宝ですね。後半のはしゃぎっぷりがとってもお茶目で、「なんて上手いんだろう」とほれぼれしつつ笑わせていただきました。
ここからネタバレします。
警部が尋問を進めていくに連れて、部屋に居合わせた全員がその女の自殺に関係していたことが明かされていきます。上流階級の彼等が下層階級の女を見下して、自分の権力や財力を利用して彼女を貶め、自殺するしかないところまで追いやったのです。ここまでの推理ゲームも面白いですが、この後の家族の対話シーンからが本当のみどころです。
女から職を失わせた娘は責任を感じて反省し、女を妊娠させていた息子(古川悦史)も苦しみます。でも父親、母親(稲野和子)、娘の婚約者(川井康弘)の3人は自分達の非を認めるどころか、警部と名のった影山のあら捜しをしたり、何もなかったことにしようと息の合った責任逃れトークを繰り広げます。これがとても滑稽で、笑えるシーンになっているのが素敵ですね。
住み込み(であろう)女中役の菅原チネ子さんは、出番が少ないながらもセリフの一言一言に重みがあり、最後に「(警部を)お通ししてもよろしいですね?」と念を押すように強く語ったところが良かったです。女中もまた倉持家の人々を良くは思っていないのが伝わってきました。
≪ツアーあり。詳細不明≫
from "An Inspector Calls" by John Boynton Priestley
出演=鈴木瑞穂(オフィスODA)/稲野和子(文学座)/藤本喜久子(無名塾)/古川悦史(文学座)/川井康弘(俳優座)/菅原チネ子(朋友)/外山誠二(文学座)
作=J・B・プリーストリィ/訳=内村直也/脚本=八木柊一郎 演出=西川信廣 美術=石井強司 照明=森脇清治 音楽=萩京子 音響=望月勲 衣裳=山田靖子 舞台監督=上村利幸 舞台統括=荒木眞人 宣伝写真=玉川豊 宣伝美術=勝木雄ニ 企画制作=俳優座劇場
一般5200円 グリーンチケット(要学生証提示)2600円
夜の来訪者:http://www.haiyuzagekijou.co.jp/produce/0827yorurai.html
俳優座劇場:http://www.haiyuzagekijou.co.jp/
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