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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年09月05日

ウォーキング・スタッフプロデュース『Dog-Eat-Dog』09/03-11THEATER/TOPS

 和田憲明さんが脚本・演出を手がけるウォーキング・スタッフプロデュース。今回は渋い男5人と美女1人が事実を探り合う、刑事たちのお話でした。
 ※舞台写真あり⇒YOMIURI ONLINE 緊張感途切れさせぬ展開

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 上演時間は2時間休憩なし。いつも通り緊張しましたし、熱い演技に引き込まれましたし、事態が一転二転する生々しい尋問に釘付けでした。スプラッター・ホラーや驚くことがとっても苦手だという方にはお薦めしづらいですが、迫真の演技で次々と繰り広げられる対話劇は見ごたえありです。

 ≪あらすじ≫
 ある塗装工場の社長が殺された。犯人は雇われていた知的障害者の津田(津田健次郎)。津田が犯行を自白しているので、担当の飯田刑事(飯田基祐)も伊達刑事(伊達暁)もひと安心。しかし班長の鈴木刑事(鈴木省吾)が尋問と捜査の甘さを指摘する。津田は障害者なので「社会性についての障害があり、殺意はなかった」と弁護されると、無罪になりかねない。そこで再びその事件を洗い出すことになったが・・・。
 ≪ここまで≫

 舞台は警察署の一室。その部屋の奥の大きなガラス窓の向こうに見えるのは尋問室。その窓は実はマジック・ミラーで、こちらから尋問室は透けて見えますが、尋問室からこちらは見えません。また、こちらでは尋問室の音声も聴こえる仕組みになっています。
 THEATER/TOPSの舞台面積いっぱいいっぱいの回り舞台で、シーンごとにくるりと回転して尋問室とその隣室が交互に手前に現れます。マジックミラーは本物なので、尋問室が前面に来た時、客席からは奥の部屋が見えません。この効果がたくみに利用されます。

 対話の中で、予想外の出来事が矢継ぎ早に起こります。何が原因なのか、何が真実なのか、何を悲しめば、もしくは喜べばいいのか。判断不能な展開にう~んとうなりながら、そのスリルとリアリティを満喫しました。
 また、一口に“刑事”と言っても色んな刑事さんが居るんですよね。登場人物一人一人の性格が、セリフや演技から少しずつわかっていくこと自体に、推理劇のような楽しみがありました。

 ここからネタバレします。★これから観に行かれる方は絶対にお読みにならないでください。

 当日パンフレットに掲載されている作・演出の和田憲明さんの文章によると、2001年の「レッサーパンダ帽の男による女子短大生殺害事件」や、映画「L.A.コンフィデンシャル」、映画「アンダー・サスピション」、横山秀夫さんの警察小説などがモチーフになっているそうです。

 一番初めのシーンで、夫を殺された妻(野村真美)が涙を流しながら「(犯人の津田は)もう二度と、一生笑わないで欲しい。主人はもう笑えないし、私も笑おうと思っても笑えないのだから」と、犯人に対する激しい怒りをぶちまけます。それはもう可哀想な女性に見えたんですよ。なのに次のシーンで鈴木がその妻について調査した内容(娘が夫との間の子供ではない等)を話し出すと、「可哀想」な印象が突然薄れて、嘘つきで冷淡で卑怯な、ずる賢い女というイメージが出てきます。また、犯人や被害者と同様に刑事達についても、シーンを重ねるごとに見え方が変わってきます。
 
 数々の尋問の結果、夫に殺意を抱いていた妻が、自分と肉体関係を持っていた知的障害者の津田に、夫を殺した罪を計画的になすりつけていたという事実があぶりだされます。でも真相があばかれてからも、事態が白へ黒へとどんどん転がるのです。やっぱり一筋縄ではいかないんですよね、和田さんの脚本は(笑)。観ている方がいやがおうにも想像力をフルに活用させたくなっちゃう。

 妻は自白を鈴木に録音されたので、きっと有罪になるでしょう。津田は社長殺人について無実が認められても、中村刑事殺しの現行犯で有罪ですよね。たとえ刃先を向けた動機が純粋な愛だったとしても。このことはレッサーパンダ男の罪に重なると思います。 

 津田健次郎さん。知的障害者の津田役。円・演劇研究所出身の俳優さんなんですね。障害者の演技がとても自然に受け入れられました。「演技している」という違和感が少なかったです。

 中村俊太さん。にへらにへら笑ってた「刑事に向かない」若手刑事役。常に人をバカにしたような薄ら笑いを浮かべ、可愛らしい顔をしながら心の中は真っ黒、みたいな役でした。テレビでご活躍の方なんですね。意外な配役だったのではないでしょうか(笑)。こういう人いるよなーって思えました。
 それにしても最後、なぜ彼は津田に刺されて血まみれになっているのに、再び尋問室に戻ってきたのでしょう。助けを求めて逃げればいいのにね。いやこれはね、ちょっとカッコ良かったんですよ。あの若手刑事がやはりタダモノ(普通の人)じゃなかったってことがあの一瞬でわかりました。

出演=中村俊太/飯田基祐/伊達暁/津田健次郎/鈴木省吾/野村真美/もう一人、男優さんが出演されていましたがお名前は不明。
作・演出=和田憲明 照明=佐藤公穂 音響=早川毅(ステージオフィス) 音響プラン=長柄篤弘(ステージオフィス) 音響オペレーション=上野知里(ステージオフィス) 舞台美術=塚本祐介 舞台監督=八重樫慎一 演出助手=小川いさら 演出部=上岡一路 芳賀信吉 衣装=戸門由佳 始沢尚子 特殊効果=Vanity Factory 宣伝美術=ラヴ&ピース川津 宣伝写真:アライテツヤ 宣伝ヘアメイク=野澤典子(POPPER) 宣伝スタイリスト=沢木祐子(スタイリストオフィス・バース) 宣伝写真モデル=佐伯花恵 制作=石井久美子 制作協力=石井光三オフィス 企画製作=ウォーキング・スタッフ
前売・当日共 3800円 (全席指定)
公式=http://www.ishii-mitsuzo.com/

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Posted by shinobu at 2005年09月05日 23:54 | TrackBack (1)