市村正親さんが一人で歌って踊って語る、イプセンの詩劇『ペール・ギュントの旅』。サントリーホール主催の演劇公演で、小ホールをこんなに長期で借りた公演は初だそうです。
音楽と歌詞にムリがあって聞きづらいなぁと思いながらの2時間強(休憩20分を含む)。でも最後にはやっぱり満足させてくださいました。市村さんバンザイ!
グリーグ(Edvard Grieg)作曲の“ペールギュント組曲”の「朝」なども演奏されました。
≪あらすじ≫
若いホラ吹きペール・ギュントがノルウェーの森の中の家を出て、波乱万丈に異国を旅して50年。70歳になって故郷に戻ってきたら・・・(幕にそったあらすじはこちら。でも今作品とは少々違いがあります)
≪ここまで≫
小ホールはおそらく何もない四角い空間。そこに凸型のステージ。奥にはズラリと生演奏の方々。市村さんはキャットウォークのように出っ張ったステージを自由に動き回ります。観客席はコの字にステージを囲んでいて、私は舞台に向かって左側の席でした。
とにかくね、市村さんが近い!!!最前列なんて思いっきり「小ホールで、君と握手!」状態だよ!私は残念ながら最前列じゃなかったのですが、それでも帝国劇場の遠さを思えばね、ドッキドキの近さです。
音楽はほとんどシャルル・アズナブールのシャンソンで、グリーグの“ペールギュント組曲”からも数曲使われていました。アズナブールの曲はこう、ねっとりセクシーな感じで素敵なんですが、このお話には合ってなかった気がします。
ほぼ何も無いと言える舞台で市村さんが一人でがんばって・・・という内容でしたので、歌(歌詞と音楽)が良くないとじっと集中してるのは難しいんですよね。なので少々眠くなったりもしました。横の席だったのもつらかったかな。遠くても正面から観たかった。
『ペール・ギュントの旅』は『人形の家』でも有名な劇作家イプセンの詩劇です。かなりわかりやすく、カジュアルな演出でしたが、最後のメッセージには感動しました。物語の中に色んな隠喩(メタファ)があるようです(イプセンですもんね)。
ここからネタバレします。
ソルヴェイグに一目ぼれをしたけれど、金に目がくらんで他の女と結婚したペール。(中略)旅にでて奴隷貿易などで大儲けしたペールだが、船が難破して財産をすべて失った。70歳になって故郷に帰ると、なんとソルヴェイグはずっとペールの帰りを待っていた。
謎めいたボタン作り(の男)が、帰ってきた老人ペールに言います。
「お前を待っていたんだ。お前は自分を殺したことがない。だからお前の魂を溶かしてボタンをつくるのさ」「そしてお前はお前だったことがない」
ペールは戸惑います。
「自分を殺すって一体なんだ?」「俺が俺だったことがない?だったら俺はいったい何なんだ?」
そしてソルヴェイグがペールに向かって言います。
「大丈夫。あなたは、私の信仰、私の希望、私の愛に包まれていた。」
「自分を殺す」というのはつまり「誰かを愛する」ということだと思います。ソルヴェイグは自分を殺し、ペールを愛していた。ペールは自分の心に蓋をして、地位や名声、金におぼれていた。でもソルヴェイグの愛を知って、ペールは愛されていた自分を知り、そこに自分自身を見出します。
このソルヴェイグからペールへの愛を、市村さんは自分から観客への愛としても表現してくれるんです。なんて素敵な人なんだ!以下、市村さんのカーテンコールでのお言葉です。
「『デモクラシー』、『モーツァルト!』と続いたので、半年間はつかまっていて、久しぶりに9月が休みのはずだったんですけど・・・(会場で笑いが起きました)。でもね、何かやれば、誰か(あなた)と会える。そう思っていつもやってしまうんです(笑)。」
"Peer Gynt"
出演=市村正親 演奏=城所潔(Pf)他 クインテット
構成台本・演出=鈴木理雄 台本協力=市村正親 美術=石井みつる 照明=原田保 衣装=小峰リリー 音楽=城所潔 音響=実吉英一 振付・ステージング=司このみ 舞台監督=小笠原響 制作=神林克樹(サントリーホール)/片野由利子(サントリー(株)) 主催=サントリーホール 協力=(株)ホリプロ
10000円(指定席) 一般発売日 6月19日(日) 12ステージ
公式=http://www.horipro.co.jp/ticket/kouen.cgi?Detail=59
サントリーホール内=http://www.suntory.co.jp/suntoryhall/perform/2005/0915.html
ぴあ=http://t.pia.co.jp/promo/play/i_masachika.jsp
「ペール・ギュント」市村正親が一人芝居=http://www.asahi.com/culture/theater/TKY200509150239.html
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