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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年09月24日

Studio Life『白夜行 第1部』09/14-10/01紀伊國屋ホール

 東野圭吾さんのミステリー小説『白夜行(びゃくやこう)』を男優集団スタジオ・ライフが舞台化。今回は第1部で、第2部は12月に上演されます。記者会見の写真はこちらぴあイープラスも特集あり。

 私はいつもどおり原作等の前知識ゼロで伺いました。次々と犯罪が重ねられていく約10年間を、進むままに追いかけ続けた3時間(休憩を含む)。終わった時に「あ、結末は次回に持ち越しなのね」と気づいて、ちょっとガッカリ(笑)。
 何も知らずに観るには単純に面白いですが、原作を知っている人には物足りないかもしれません。

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 ≪あらすじ・解説≫ bk1の内容説明よりそのまま引用。(役者名)を追加。
 1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々に浮かぶが、結局、事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司(笠原浩夫)と、「容疑者」の娘・西本雪穂(舟見和利)―暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別々の道を歩んで行く。二人の周囲に見え隠れする、幾つもの恐るべき犯罪。だが、何も「証拠」はない。そして十九年…。息詰まる精緻な構成と、叙事詩的スケール。心を失った人間の悲劇を描く、傑作ミステリー長篇。
 ≪ここまで≫

白夜行
白夜行
posted with 簡単リンクくん at 2005. 9.23
東野 圭吾著
集英社 (2002.5)
通常24時間以内に発送します。

 大人気の推理小説だそうですから、ストーリーを追っていく分にはすごく面白いんです。さらに舞台ならではの味わいが欲しいところなのですが、残念ながらその意味で物足りない演出でした。

 盗み、殺人、ヤクザ、逃亡・・・と、出口がないとわかっている暗い迷路を、這いずり回る主人公およびその周辺の人々。必死でそこから脱出しようともがいたり、そんな中でもささやかな喜びを見出そうとしたり、忘れるためにつかの間の夢を見たり・・・そんな生々しい人間の性(さが)をもっと感じたかったですね。ストーリーやセリフにはそれを想像させる匂いがあると思うのですが、実際にグっと心に響いたシーンは少なかったです。

 平たいパネルを重ね合わせて組み立てられたシンプルな舞台美術に、『歓びの娘 ~鑑定医シャルル』のように、時と場所を示す文字スライドを映し出し、さらに実写映像および写真で場面転換します。次々と起こる事件をシーン分けして描きますので、とてもわかりやすいです。
 舞台で話題に上っている人物が、その説明のためだけにスポットライトの下に現れることが多かったです。親切だとは思うのですが、話題に上った時にその人にスポットが当たり、話が終わった途端に明かりが消えて、人がそそくさと退場するので、「説明のためだけに登場している」感がありすぎでした。

 つまり第1部は状況説明だけになったような感じですね。第2部にドラマもクライマックスも、何もかも全てが凝縮されるのでしょう。第1部を観ずに第2部だけを観ても難しくて意味がよくわからないでしょうから、第1部と第2部がセットになって一つのお芝居だと思うのが正解だと思います。

 ここからネタバレします。

 第1部は1970年代から1980年代にかけての大阪が舞台でした。自分が大阪育ちなものですから、大阪弁や知っている駅名などが出てくる度に懐かしい気持ちになり、想像が立体的に膨らみました。

 卑猥なシーンはあまりスタジオ・ライフでは観たくないので、そういうところは息苦しくなりました。きっと原作ではセリフもストーリーももっと強烈なのでしょうね(予想の範疇を超えませんが)。でも、具体的な言葉を使わなくても、ささくれだった雰囲気とか、後味の悪さとか、演出と演技でもっと描けるものがあるのではないでしょうか。

 桐原の仲間の園村友彦(楢原秀佳)と元銀行員の西口奈美江(林勇輔)のラブシーンは、2人がそうなる前から色気がムンムンしてまして(笑)、「さすがは楢原さんと林さん!」とファンとしては感心しましたが、本来なら徐々に二人の心が盛り上がってくるのが自然ですよね。
 このシーンで生まれたような、舞台だからこそ味わえる空気や肌触りを、第2部ではもっと増やしてもらいたいです。

 舞台美術は単調でつまらないですねぇ・・・。映像を映すパネルは四角くなくてもいいのではないでしょうか。もっと尖ったり、ギザギザしたり、質感を出しても良いと思います。あと、シンメトリー(左右対称)にしない方がいいんじゃないかな。

 笠原浩夫さん。桐原亮司役。うーん・・・なんだか普通でした。普通ってことが良いんだと思いますけど。もうちょっと刺激が欲しかったです。
 舟見和利さん。西本雪穂役。美女役ということで、開幕してすぐはさすがに「ちょっと無理があるような・・・」と思ったんですが(男優ですしね)、徐々に女にしか見えてこなくなりました。私は舟見さんの女役、すごくしっとりしていて好きなんです。冷酷な犯罪をおかしておきながら、にっこりと天使のような微笑みをたたえるのが恐ろしい。
 林勇輔さん。西口奈美江役はいうまでもなく絶品。女子ダンス部員役でも笑いを生んでくださいました。

【宵(ショウ)バージョン】出演=笠原浩夫/舟見和利/山﨑康一/藤原啓児/石飛幸治/末松一仁/甲斐政彦/倉本徹/楢原秀佳/深山洋貴/林勇輔/曽世海児/高根研一/前田倫良/船戸慎士/寺岡哲/奥田努/小野健太郎/牧島進一/篠田仁志/下井顕太郎/大沼亮吉/宗村蔵人/荒木健太郎/関戸博一/三上俊/松本慎也/吉田隆太/重松収
東京公演はA、Bのダブルキャスト公演。大阪公演はB、Cのダブルキャスト公演。キャスト詳細については劇団サイト参照。
原作=東野圭吾(小学館刊) 脚本・演出=倉田淳 美術=松野潤 照明=森田三郎 舞台監督=北条孝 土門眞哉(ニケステージワークス) 音響=竹下亮(OFFICE my on) ヘアメイク=角田和子 衣裳=竹原典子 殺陣指導=渥美博 美術助手=渡辺景子 演出助手=平河夏 宣伝美術=河合恭誌 菅原可奈(VIA BO, RINK) 宣伝写真=薮田修身 宣伝ヘアメイク=小口あずさ 長谷川亮介(Nanan) デスク=釣沢一衣 岡村和宏 揖斐圭子 制作=稲田佳雄 中川月人 赤城由美子 CUBE STAFF:プロデューサー=北牧裕幸・高橋典子 宣伝=米田律子 制作=北里美織子 制作協力=東容子 縄志津絵 宮澤有美 小泉裕子 八木美穂子 中原愛 大田香織 SPECIAL THANKS=小山岩雄 佐藤綾子(切り絵指導・製作) 主催=日本テレビ放送網(東京公演) 読売テレビ 梅田芸術劇場 CUBE(大阪公演) 制作協力=リコモーション(大阪公演)協力=集英社 M.M.P 舞台屋 制作プロデュース=CUBE 企画・制作=Studio Life
≪東京、大阪≫
公式=http://www.studio-life.com/

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Posted by shinobu at 2005年09月24日 00:13 | TrackBack (1)