1980年、加藤健一さんはこの作品を上演するために加藤健一事務所を設立したという、伝説の2時間半モノローグ芝居。第17回紀伊國屋演劇賞個人賞、平成6年度文化庁芸術祭賞、第29回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞しています。私は初見。
劇場の壁に張り出してあるインタビュー記事で、加藤さんが「また上演(出演)できるとしてもあと一回かな」とおっしゃっています。なるほど、観終わって納得です。観てる方もめちゃくちゃしんどかったです。
≪あらすじ~チラシよりそのまま引用。≫
第二次世界大戦中、ドイツ軍の捕虜となった元ロシア兵、アンドレイ・ヴァホフ。水も食料も光も無い地下室に、仲間六人と共に閉じ込められた壮絶な60日。生存者は二人。そのうち正気であった彼が軍事法廷の証言台に立つ。彼が生きて在ることの罪とは一体何なのか。審判をくだすために、私たちは最後まで、彼の証言に耳を傾けなければならない。
≪ここまで≫
2時間半。本当に加藤さんだけです。ずっと一人でしゃべり続けるということはもちろん凄いのですが、その内容の凄さにまず打ちのめされます。2時間半・・・私が集中して加藤さん=ヴァホフの証言を聞くことができたのはその内の何時間かしら。
特定のある場所で胸をわしづかみにされ、涙が搾り出されました。でもところどころ心に響かなかったところもありました。「一緒に2時間半を体験すること」「この戯曲を知ること」だけでヨシとしたいところです。加藤さん、忘れられない空間をありがとうございます。
ここからネタバレします。
水も食料も無い地下室に60日間監禁された。だけど生存者がいた・・・つまり、人肉を食らう話なのです。苦しいです。また、軍服を剥ぎ取られて7人ともが全裸だったということも、話の中盤以降に気づいて胸が傷みました。
身包み剥がれて地下室に閉じ込められ、11日後に「くじ引きで食料になる者を選ぶ」とリーダーが提案し、一人目の崇高な犠牲者が出る。そしてその地獄の中に残るのがたった2人になるまでを、加藤さん演じるヴァホフ以外の人物の姿がくっきりと想像できるぐらいリアルに、言葉で綴っていきます。何が起こったのかという事実よりも、その牢にいた人間たちの心の変容をきめ細やかに表現しているのが心を打ちます。
生きているということと、死んでいるということの差異が具体的に感じられました。
牢から脱出できた後は、「人肉を食らったバケモノ」「仲間を殺した殺人者」というレッテルを貼られ、決して本当の意味での自由を得られなかったヴァホフ。「精神を病んでしまった仲間(もう一人の生存者)のことを介護していきたい。できればまた兵士になり、戦場に戻りたい」という希望を述べて終幕します。これは・・・あまり理解できませんでした。というのは、私はもう疲れ果てていて、地下室から出てきたところ以降は思考停止状態でした。ごめんなさい。
"Judgement" by Barry Collins
出演=加藤健一
作=バリー・コリンズ 訳=青井陽治 演出=星充 照明=黒尾芳昭 音響操作=音スタ 舞台監督=片山晃也
全席指定 前売¥5,000 当日¥5,500 高校生割引¥2,500
加藤健一事務所内=http://homepage2.nifty.com/katoken/61-index.htm
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