二兎社(にとしゃ)は日本を代表する劇作家・演出家のお一人である永井愛さんの作品を上演する団体です。戸田恵子さん主演の5人芝居ということで、いやおうなしに期待が高まります。メルマガ8月号、10月号でも「お薦めお芝居」としてお知らせしておりました。
今日は満員で通路席もいっぱい。まだ空席のある日もありますので(残席状況はこちらで確認できます)、どうぞお見逃しなく!年齢層ははば広いです。10代から高齢者まで文句なく楽しめるコメディーです。
※記事は執筆途中です(2005/10/10)。 ※記事をアップしました(2005/10/31)。
★詳しいレビューはこちらにも⇒芝居遊歴控
≪あらすじ≫
シャンソン歌手から都立高校の音楽講師になったばかりの仲ミチル(戸田恵子)は、卒業式での初めてのピアノ伴奏に、朝から緊張しっぱなし。校長(大谷亮介)はミチルのことをものすごく気にかけている。というのも、国歌斉唱の際の伴奏に粗相(そそう)があっては困るからだ。実は去年、卒業式で「君が代」斉唱の時に規律せず、歌も歌わない教師や生徒が多く居たため、新聞沙汰になっていた。
≪ここまで≫
都立高校の卒業式当日を舞台にした教師たちの七転八倒。爆笑しつつ、涙もホロリ、山ほど考えさせられ、劇場を出る時には哲学者のようにもんもんと歩く自分がいました。く~っ、これだから永井さんはスゴイ!
君が代斉唱時に規律をしない教師の拝島(近藤芳正)は、学校中の問題教師になっています。彼はミチルと同じく名古屋出身でミチルとはかなり仲良しなのですが、ミチルが君が代のピアノ伴奏をすることを知って、急に態度を変えます。この拝島のジレンマが可愛らしかった。でも近藤さんの演技はまだまだ、もっともっと良くなるだろうなと思いました。怒っている時、ちょっとナーバスすぎてコントロールできていないように見えて、戸田さんとコミュニケーションできてなかったように感じたので。
君が代という日本国歌、および日の丸という日本の国旗についての私の考えを述べることはここでは控えますが、少なくとも教育現場のものすごく細かいところまで国の監視が行き届いており、教師の言論の自由がおびやかされていることはわかりました。教育委員会からの指導に反発した教師には、本人だけでなくその学校の教師全体への罰則があるなんて、ゾっとしました。スパイみたい。
★公立の学校の教師の待遇について、「百ます計算」で有名な陰山英男先生のインタビューがこちらで読めます。
1993年までは「君が代斉唱・国旗掲揚の強制に反対する」という主張を持っていた校長はすっかり人が変わってしまって、今では現状維持に命を懸ける、牙を抜かれたライオンのようになっています。彼が屋上で本音とみせかけたパフォーマンスをするのですが(私にはそう見えました)、問題をどんどんとすり替えて、あとは「意気込み」とか「命がけ」という口だけのアピールでごまかして、人を誘導していく姿に見えました。日本の政治家の演説にそっくり。汗だくで大声でハッスルする校長(大谷亮介)の滑稽さが物悲しくて、胸がしめつけられました。
保健室の先生(小山萌子)と英語の若い教師(中上雅巳)がイマドキの若者像を担っています。小山さんは残念ながら型を演じようとされていて、うそ臭い演技でした。素敵なコメディエンヌなんですが、開幕したてでしたから慣れてなかったのでしょうね。
中上さんは予想していたよりもずっと良かったです。浅はかなくせにまことしやかに朗々と語る嘘っぱちに、爆笑させていただきました。かなり皮肉屋なのかな、私。
戸田恵子さん。シャンソン歌手として生きていく道をあきらめて「食べていくために」必死になっているミチルの姿は、私達の誰もが逃れることの出来ない厳しい現実を表しています。ちょっぴりの同情と大きな共感を持って彼女に見入りました。
戸田さんのことは舞台で何度か拝見させていただいていますが、正直で一生懸命で男気があって、ユーモアのセンスに長けていてサービス精神に溢れている、めちゃくちゃ素敵な女優さんだと思います。そういう意味で私は戸田さんにお会いできるだけで満足できるのですが、ただ、今回のこのミハル役は、あまりにハマリ役すぎて物足りなかったですね。できれば「この芝居だけでしか見られない戸田恵子」が見たかったです。
私は母親と一緒に観に行きました。おそらく校長先生役と世代が被ってるんですよね。感じ入るところが多いらしく、母は上演中は涙を流しっぱなしでした。私は・・・ずっとずっと考えていましたね~・・・。あまりに身近で重大な問題をつきつけられるので、冷静にならざるを得なかったのでしょう。それもまた演劇、です。永井さんやこのお芝居を作っている方々に感謝します。
≪東京、長野、滋賀、大阪、岐阜、茨城、神奈川(橋本)、愛知、新潟、東京江東区、宮城、神奈川(湘南台)≫
出演=戸田恵子/大谷亮介/小山萌子/中上雅巳/近藤芳正
作・演出=永井愛 美術=大田創 照明=中川隆一 音響=市来邦比古 衣裳=竹原典子 舞台監督=菅野将機 宣伝美術=マッチアンドカンパニー 宣伝写真=ノニータ 宣伝ヘアメイク=武井優子 ウェブ担当=板澤一樹 票券担当=津田はつ恵 制作担当=弘雅美・安藤ゆか
(税込み・全席指定)一般5,000円 学割3,000円◎要学生証提示、二兎社・チケットぴあ店舗(コンビニ以外)にて取扱
イープラス特集:http://eee.eplus.co.jp/s/nitosha/
ニ兎社内=http://www.nitosha.net/stage/index.htm
公演ブログ=http://blog.eplus.co.jp/nitosha/
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