今井一隆さんの書き下ろしを青年座の伊藤大さんが演出されます。文化庁がお金を出しているプロデュース公演なのかな。青年座劇場に青年座の座員以外の俳優がたくさん出られています。
最近、自分の感覚が変わってきている気がしていたのですが、この作品で確信しました。舞台上でコミュニケーションをしている役者さんが好きですね、私は。それ以外の役者さんのことは、目に入りづらくなりました。
≪あらすじ≫ チラシより部分抜粋。(役者名)を追加。
とある地方の一軒家。猛暑。居間のエアコンが壊れている。修理の電気屋を待つ内田シゲル(五十嵐明)と義兄 宮本マサヤ(岸博之)。入院している父の見舞いから帰って来る母 内田アキコ(大崎由利子)と姉 宮本ミドリ(入江純)。シゲルの高校時代の友人で、同じ天文部に所属していたヤグチ(石井揮之)。ワケアリで東京の大学から帰省した、シゲルたちの従姉妹サキ(森脇由紀)。そして、父の本妻の娘 森リエコ(藤野節子)・・・。
≪ここまで≫
ある家族のお話、なのですが、ものすごく複雑な家族構成でした。しかもセリフ説明が非常に少ないため、聞き逃すとすぐに意味がわからなくなります。でも、「あ、もしかして彼女は・・・」「いつからあの関係なのかしら・・・」等と頭をぐるぐる動かしながら観るのはなかなか面白かったです。
ただ、ググっと引き込まれる対話もあれば、一方通行にセリフが発せられて言葉が流れ去ってしまうこともあり、その差が激しかったですね。もっともっと面白くなるんじゃないかと思うシーンが多かったです。
舞台中央に10畳(8畳?)ぐらいの和室があり、部屋をかこむ障子には和紙が全く貼っていないため、木の枠だけで壁がない状態です。部屋の周りには具体的なものは何も置いておらず、黒い床に白いチョークのような線で、玄関や靴箱、石畳、植木などが描かれています。チョークの線から子供の頃の遊びや『ドッグヴィル』を思い出し、面白いなぁとおもいました。
照明と音響は・・・好みの問題だと思うのですが、私はわざとらしいシリアスさを感じてしまいました。特にキメの瞬間に母親のアキコ(大崎由利子)に当てるサス(スポットライト)は、やらない方がいい気がしました。
先述しましたが、最近、自分の感覚がすごく変わってきた気がしていまして、この作品を観てそれがはっきりしました。昔だったら魅力的だとか、上手いとか思っていた役者さんが、今では下手に見えることが多いのです。
舞台の上で、本当に感情が動いているか。話している相手や同じ空間に居る人のことを感じているか。自分以外の人の言葉を本当に聞いているか・・・など、役者さんがその役柄としてお芝居の中で生きているのかどうかが、最重要ポイントになりました。
特にこの作品は、一言のセリフで多くの意味や感情を伝える必要があったため、舞台に居る役者さんの存在の仕方によって空間の重みが大きく左右されました。
一緒に観劇した人が終演後に「(舞台の上で役者がちゃんと生きていないと)メッセージが届かない」とおっしゃって、私もその通りだと思いました。その意味では、この作品の中でその役を生きていた人というと、入院中の父親の本妻の娘・リエコ役の藤野節子さんだけだったのではないかと思います。母親アキコ役の大崎由利子さんも藤野さんと一緒に居るシーンはすごく良かったのですが、他の、特にあのスポットライトが当たるところはわざとらしかったです。あれは演出のせいかもしれませんが。
ここからネタバレします。
≪あらすじ 続き≫
内田家は父、母、姉、弟の4人家族だったが、子供達が幼い頃に父親が死んでしまった。そして父親の友人だった男が転がり込んできて、いつのまにか新しい父親として住みつくようになった。それから数十年(?)経って、父親が入院。姉のミドリは宮本マサヤのもとに嫁に行き、今は妊娠5ヵ月で実家に帰ってきている。しかしマサヤはミドリが妊娠した頃から失業中。弟のシゲルは不動産屋で働いており、隣りに建つ分譲マンションの営業担当だが、近所でそのマンションの建設反対運動があったため内田家はプチ村八分状態。
母の姪(つまりミドリとシゲルのいとこ)のサキが、年の離れた男性と関係を持っていることがわかり、大学を退学してむりやり実家に連れ戻されたらしい。サキは実の母親とうまくやっていけず、叔母のアキコがしばらく預かることになった。
平和で平凡な家に見えて、実は簡単には解決できない問題が溢れかえっている内田家。そこに、父親の本妻の娘リエコが訪ねてきた。父親が死んだ時のことを相談するために。リエコは自分の父親の内縁の妻アキコに向かって、強い調子で言い放った。「父の持ち物はすべて返してください。お葬式にも出ないで欲しい」と。
≪ここまで≫
比較的淡々と会話が交わされますが、あぶり出されてくる事実がかなり厳しい、しかし面白いものの連続なので、一言一言を聞き漏らすまいと頑張って見ていました。でも、役者さんがそこに生きていないとそのセリフも聞こえてきません。それがつらかった。
本妻の娘リエコ(藤野節子)が石田家の隣りだとは知らずにマンションを購入しようとして、不動産屋のシゲル(五十嵐明)と出会っており、その二人の間にどうやら恋のようなものが生まれた、かも・・・?という前振りがありました。それ、めちゃくちゃ複雑ですよね、観客としてはぜひとも起こってもらいたいトラブルです(笑)。だって面白そう!・・・しかしながらシゲル役の五十嵐明さんがずっと“心ここに在らず”という演技だったため、リエコ(藤野節子)との間にはそんな艶っぽい雰囲気は全く生まれませんでした。
五十嵐明さんって青年座の中でもかなり重要な、中心的な役柄を演じられることが多いですよね。だけどこの作品の中で一番コミュニケーションができてなくて、言葉が紋切り型で、嘘っぽかったような気がしたんですが・・・どうしてなのかしら。ま、私の感じ方がものすごく変化したのは間違いないんですけど。これからゆっくり考えます。
出演=五十嵐明/川上英四郎/森脇由紀/石井揮之(青年座映画放送)/岸博之((株)大沢事務所)/大崎由利子((有)レトル)/藤野節子(フリー)/入江純(演劇集団円)
作=今井一隆 演出=伊藤大 装置=伊藤雅子 照明=中川隆一 音楽=後藤浩明 音響=高橋巖 衣裳=竹原典子
宣伝美術=早田二郎 舞台監督=今村智宏 制作=佐々木聡一 主催=(社)日本劇団協議会/創作劇奨励公演 制作=劇団青年座
一般 3,800円 学生 3,000円
公式=http://www.seinenza.com/performance/bunkacho/2005.html#2005-1
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