チラシのビジュアルがあまりに・・・なのですが、主役の島田清次郎役の上杉祥三さんは一見の価値あり!というか、こういうのをハマリ役・当たり役と言うのだと思います。こりゃ1日2ステージは不可能ですね。
地人会の作品とは思えない、熱く、激しく、荒々しい、生の演技がありました。10/26(水)までです。イープラスの得チケあり!
大正時代に『地上』という大ベストセラー小説を書いた島田清次郎という人物の半生記です。活躍したのは20歳から25歳までのたったの5年間で、なんと31歳で亡くなっているんですね。あらすじはコチラでご覧ください。
タイトルといいあらすじといい見るからに暗いお話で、休憩を挟んで2時間30分以上ありましたが、暗いながらも小気味良い笑いが会話の中にちりばめられており、軽いテンポに乗って楽しく拝見いたしました。
とにかく島清(しませい)に尽きますね。なんとみっともなくて、魅力的な男だったことか!「天才だけど、性格が悪かった」って、書いてみれば陳腐なのですが、それってすごく悲しいことです。島清役の上杉祥三さんは、極貧の中で育った無鉄砲な正義漢が、自分のペン一本で財を築いて天狗になって、純粋さゆえのわがままと不道徳によって身を持ち崩していく様を、体当たりの迫真の演技で魅せ切ってくださいました。
それにしても女を口説く演技や、人にものを頼み込むシーンは絶品でしたね。「なぜそこで腰を下げて、足をそんなに開くの!?」「どうしてそこで女の背後に回るんだ!?」「土下座の前にそんなジャンプしなくても!」と、頭にハテナマーク続出、そして吹き出し笑いの連続(笑)。長いセリフでも、怒ったり、叫んだり、悔しがったり、笑ったり、ものすごく変化に富んでいて目が離せませんでした。
でも、作品全体としてはいわゆる正統派の演出でちょっと退屈することもありました。なにかと丁寧にやりすぎというか、説明的な場面が多いのかな。わかりやすいんですが、平凡。私個人としてはもっともっと冒険が観たかったです。
上杉祥三さん以外の役者さんが全員2役やっていたのは良かったですね(森尾舞さんは3役)。島清以外の登場人物が彼をとりまく多くの人々として相対化されて、島清ただひとりが社会の中で飛びぬけて出世し、そして今度は疎外されて堕ちて行くのが強調されました。
島清役の上杉祥三さん・・・私はトレランスの旗揚げ公演『神経衰弱』以来2度目なんですが、やっと本物の上杉さんにお会いできた気がしました。劇団 夢の遊眠社で長い間、主役をやってこられた方だということが、心から腑に落ちました。
浅野雅博さん。島清を助けるボンボンの息子役と、冷徹な弁護士役。私はそもそも浅野さん目当てでこの公演に伺ったのですが、期待どおりの清らかなお姿。りりしいし、可愛いし、声がきれい。特に弁護士役は高慢なエリートを知的に清潔に、そしていやみに演じてらっしゃってかっこ良かったです。
占部房子さん。肺病の女郎役と海軍将校の娘・芳江(よしえ)役。女郎役のあの貧相さから一転、華やかな令嬢に変身されて素敵。島清に強引に言い寄られている時の芳江役が凄かった・・・。あれは、本気ですよねぇ。
出演=上杉祥三/倉野章子/有川博/鴨川てんし/浅野雅博/塩山誠司/助川嘉隆/森尾舞/占部房子
作=松田章一 演出=高瀬久男 装置=松井るみ 照明=奥畑康夫 衣裳=宮本宣子 効果=藤田赤目 演出助手=森さゆ里 舞台監督=井川学 制作担当=和泉将朗 制作総括=渡辺江美
一般5,500円 学生3,800円(25歳以下、要学生証、劇団扱いのみ)
公式=http://www1.biz.biglobe.ne.jp/~CJK/ftr_99.htm
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