『十六夜~いざよい~』で第一回近松賞優秀賞受賞した宮森さつきさんの新作です。前作同様に演出は東京デスロック主宰で青年団演出部所属、そして動物電気の役者さんでもある多田淳之介さん。宮森さんの戯曲も多田さんの演出も初見なのですっごく楽しみにしていました。
チラシや公式サイトの文章を読んだ印象と全然違う作品でしたね。ある会社の会議室を舞台にした静かで軽やかな、でもとても悲しい人間ドラマ。面白かったです。
レビューはこちらにも ⇒ 踊る芝居好きのダメ人間日記
この2週間ほどの間に面白い演劇に出会いまくってる気が、します。それらはみな20代から30代という若い世代が創作の主要な部分に携わっている作品。この『地球の片隅で』も然りです。
青年団っぽい、まんべんなく厭世的な空気が漂っている空間はあまり私の好みではないのですが、まわりくどいようで実は直球勝負している脚本は、潔くてかっこいいと思います。演出は、細かい心理描写を心がけつつ、ぴょいっと飛び出すような面白い瞬間を散りばめる若々しさもあり、ストレートすぎてちょっと青いかなとも思えるメッセージも心に柔らかく沁み込んできました。
≪あらすじ≫
不動産管理会社ライフ・レントの会議室。ワンマン社長のわがままに振り回される社員たちが、社員旅行の宴会芸を考えるために休日出勤する。新人の中島(鈴木智香子)は、仲良しの女3人組(通称ツボネーズ)の内の2人(木崎友紀子&村井まどか)の爆裂トークにおどおど気味。しかし待てども待てども3人組の内の1人が来ない。
≪ここまで≫
わめいた者、さわいだ者が勝つ。正直者がバカを見る。いい人が損をする。がめつい者が勝ち、心優しい者が負ける。毎日顔を合わせ、そばに居るけれど、笑い合ってすごく仲良くしているけれど、実のところは全く知らない他人同士の同僚たち。誰も信じられない、誰にも頼れない、砂漠のような毎日。
企業の中で起こっている人間関係の実情をきれいに暴露していると思います。それは企業の中だけに留まらず、今の日本社会全体を描いているとも言えます。
映画「バグダッド・カフェ」のジャスミンのように手品がうまくなりたい、と手品を練習する中島(鈴木智香子)が、はじめてそれを片山(村田牧子)披露し、初対面の2人の間に本物の微笑みが生まれます。“calling you”(音が鳴ります)を思い浮かべながら、静かにぽつりぽつりと零れ落ちる、わずかに本当の気持ちが入った言葉たちに耳を澄ましました。
「地球はもはや青くない」というメッセージにはドキリとしました。皆が勝手に青いと信じているだけで、それは嘘かもしれない。その通りですね。
島田曜蔵さん。会社のムードメイカー、高崎部長役。体格を生かした完璧な道化役に、苦笑とともに尊敬の念が沸きました。
出演=秋山建一/木崎友紀子/島田曜蔵/鈴木智香子/村井まどか/村田牧子
作=宮森さつき 演出=多田淳之介 照明=岩城保 照明オペレーション=たむらみずほ 舞台美術=鈴木健介 宣伝美術・音響=多田淳之介 総合プロデューサー=平田オリザ
予約・当日共=1800円(日時指定・全席指定席・整理番号付)※平日マチネ割引有り<25、26日の15:30の回は予約のみ1,500円>
公式=http://www.komaba-agora.com/line_up/2005_10/wakatejishu25.html
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