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しのぶの演劇レビュー
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2005年11月04日

DULL-COLORED POP 『東京都第七ゴミ処理施設場 ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』11/03-06荻窪アールコリン

 DULL-COLORED POP(ダルカラード・ポップ)は谷賢一さんが作・演出する劇団です。これが旗揚げ公演ということで荻窪まで行ってきました。谷さんは先々月の明大文化プロジェクト『マクベス』で演出をされた現役明大生です。
 ちょっと暗い目ですが、学生真っ盛りって感じでした。中盤以降のストーリー展開が面白かったので、前売り1,000円なら納得、というところです。

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 ≪あらすじ≫ 
 東京のどこかのゴミ処理施設。ゴミに埋もれた仕事場で、労働者たちには仕事がない。なぜかゴミが運ばれてこないからだ。元ひきこもりの鏑木(岩藤一成)は少し疑問に思いつつも、先輩の島本(上野庸平)と北原(堀奈津美)、そして10年以上ここで働いている知的障害者の理子(高橋絵梨佳)と一緒に、時間から時間まで何もせずに暇をつぶすだけの日々を過ごしていた。
 ある日、ゴミの中の壊れた冷蔵庫の中に、小学校低学年ぐらいの女の子(清水那保)が眠っているのが見つかった。こんな不祥事がバレると役所の審査が入り、書類改ざんやワイロのことが世間に知れてしまう。必死で隠そうとする北原らだったが・・・。
 ≪ここまで≫

 役者さんの演技が下手で、最初は見ていて非常に困りました。舞台上でおどおどと迷っているように感じましたし、セリフの途中で素に戻っていたりもしましたから。
 でも、長いおしゃべりの中に少しずつ仕込まれていた前振りが、中盤に入ってから徐々につながって、様々な秘密や企みが明らかにされるようになり、その辺りから役者さんの集中力も上がってきたので、楽しく拝見できました。

 演出は良かったところもありましたが、まだまだ荒削りで意図がしっかりと実現できていないようでした。セリフは細かい薀蓄(うんちく)を披露して、それを嘲笑やあきれ笑いに持って行くのが多かったです。セリフの意味自体はとても面白いのですが、役者さんが伝えられていなかったですね。

 旗揚げ公演の初日でしたから緊張もすごかったのでしょうけれど、役者さんには最初から自信を持って役割を果たしてもらいたいです。でないともったいないですよね。

 ここからネタバレします。

 鏑木たちは、もえに音楽を聴かせるため、および暇をつぶすためにゴミの中から楽器を集めてバンド演奏の練習をしはじめます。すると、なぜかゴミ処理場を訪れた大手音楽プロデューサー・漆原(佐藤弘樹)からスカウトされて、ユニフォーム姿のまま音楽TV番組に出演することになります。天地がひっくり返ってもありえない出来事が起こったので、このままストーリーが破綻するのではないかと冷や冷やしました。でも、ちゃんと裏があったのでホっとしました。

 ゴミ処理場の赤字を補填するために、上司の成島(遠藤恵一)は個人で借金を重ねていました。音楽プロデューサーの漆原は、ある歌手のプロモーション・ビデオの撮影にゴミ処理場を使おうと見学に訪れたところ、偶然に鏑木たちの存在とゴミ処理場がかかえた問題を知り、成島と組んで一儲けしようと考えたのです。漆原は「ゴミ問題についてまじめに考えるゴミ処理員の若者が、ゴミの中から拾ってきた楽器でメッセージ・ソングを歌う。しかもそれは、ゴミ処理場で発見された捨て子のもえの両親を見つけるためでもあった」というバック・ストーリーを捏造します。楽器は成島が買いそろえて、ゴミの中にあらかじめ用意していました。

 それにしても、まさか本当にバンドの生演奏があるとは・・・最初はちょっと引きました。でもオリジナルの歌(2曲)がけっこういい曲だったし、ヴォーカルの女の子(理子=高橋絵梨佳)も下手ではなかったので、結局は楽しく聴けて良かったです。ヴォーカルのマイクの音量がもうちょっと大きい方がいいんじゃないかしら。たぶんメッセージが強く反映された歌詞だったと思うのですが、ギターやドラムの音に消されてほとんど聞こえませんでした。
 照明を手動で前後に動かし、ライブシーンらしい演出を見せてくれたのは嬉しかったです。こういう手作り感覚、大切ですよね。

 知的障害者の理子が上司の成島(遠藤恵一)と肉体関係を持っていた、というのはなんとなく気づいていました。でも、冷蔵庫の中に捨てられていた女の子・もえ(清水那保)が理子と成島の子供だった、というのには驚きましたね。番組の生放送の時に真実が暴かれるのは緊迫感があって良かったです。でも、もっと上手くできて欲しいですね。何かとあたふたしているようでした。

 納得が行かなかったのは、成島(遠藤恵一)と一緒に汚染度の数値を改ざんしていた北原(堀奈津美)の、子供に対する態度です。もえを発見した時、「子供なんてウザイ、バカだ、お荷物だ、なかったことにしよう」と思っているような態度だったのですが、数日後にはもえを家に泊めてやろうとしたり、最後はもえを養子に取るまでになります。そもそも北原は離婚して親権を取られて子供を失っている母親なのですから、冷蔵庫に閉じこもっている小学生を見つけた途端、なんとかして保護しようとか、助けようと思うのが筋ではないでしょうか。そうでないなら明らかに北原の中で何らかの変化が起きたわけですから、演技やセリフでそれがわかるようにして欲しかったです。

 チラシに「チケットのご予約はお電話・メール・ホームページ,またはお近くの関係者に直接お尋ねください。」とありました。なるほど、お友達に渡すことを目的で作られたチラシなんですね。もともと内輪向けに披露する予定だったのかもしれませんが、あんまり感心しないですね。公式ホームページがオープンしていて誰でもチケットが予約できる時点で、もう内輪ではありません。次回公演が3月にあるそうですので、その時は改善されているといいなと思います。

出演=岩藤一成/上野庸平/遠藤恵一/佐藤弘樹/清水那保/高橋絵梨佳/谷賢一/堀奈津美
作・演出=谷賢一 舞台監督=鮫島あゆ 照明=海老沼佑貴 音響=宮袋充弘(みつひろ企画) 音楽監修・作曲=新戸崇史(melico) 舞台美術=カニクリームおじさん 衣装=磯貝朝海 メイク=TSU-BASA 小道具=新井宏美 宣伝美術=岩藤一成 制作=立入梓
前売り1000円/当日1500円※11月4日(金)の昼の回(14:00~)は、前売り・当日ともに500円引
公式=http://www.dcpop.org/

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Posted by shinobu at 2005年11月04日 00:32 | TrackBack (1)