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REVIEW

2005年11月07日

三島由紀夫全戯曲上演プロジェクト『サド侯爵夫人』11/05-13東京国立博物館(特別第5展示室)

 三島由紀夫全戯曲上演プロジェクトの第一回公演です。ぜひぜひ継続して全作品を上演してもらいたいですね。

 豪華キャストなのに演劇関係ではチラシや宣伝を見かけませんでしたし、公式サイトにはタイムテーブルも掲載されていません(イープラスぴあでチェックしてくださいね)。婦人画報が特別協賛していますので、もしかするとあまりオープンされていない公演なのかしら。でも当日券はありました。

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 上野の東京国立博物館は演劇を上演する場所としてすっかり定着した感があります(Ort-d.d『四谷怪談』、ク・ナウカ『マハーバーラタ』&『マクベス』など)。
 開演前と1回目の休憩時間に博物館の外で照明&プロジェクター画像(石井幹子)と音楽(三枝成彰)のインスタレーションがありました。夜の闇に赤く、青く、浮かびがる洋館と木々が、幻想的でなかなか楽しかったです(写真は2005/12/04にアップ)。本館裏では『マクベス』が上演中のはずなんですが、音は大丈夫だったのかしら・・・。※Club Silencioにも写真がアップされています。

light up at ueno(sade).bmp
ライトアップされた博物館。館内は赤い照明です。表慶館も木々の後ろで美しい。


 『サド侯爵夫人』は新国立劇場で鐘下辰男さん演出のもの を拝見いたしました。今回とにかく衣装がスゴイ、です。コシノジュンコさんデザインで、まさに「コシノジュンコッ!!!」感覚炸裂です(コシノさんのブログはこちら)。女優さんは大変なんじゃないかしら・・・なにせあの“かつら”が!頭の上にもうひとつ頭が乗せられてるみたいな巨大なオブジェ!重いでしょうし、その、イメージが・・・(笑)。新妻さんのかつらはアサヒアートスクエアの黄色いきん斗雲(きんとうん)みたいだゾっ!(笑)。
 衣装もコンセプチュアル宇宙人ドレス、というか、生地がビニールとかプラスティックだし、靴は透明か黒のピンヒールだし。あぁ、舞台写真がネットにアップされて欲しい・・・!

 ちょっと面白おかしく書いてしまいましたが、官能的でゾクっと来る瞬間もある、見ごたえのある3時間(休憩2回を含む)でした。

 ここからネタバレします。作品解説は新国立劇場のページに詳しいです。

 第1幕はまだ温まってないな~という空気でした。でも衣装やメイクの奇抜さに目が点になり、スタイルの良い女優さんの奇天烈な格好に心奪われたまま、気持ちよく過ぎました(笑)。
 第2幕で、悪徳の女・サン・フォン侯爵夫人(椿真由美)の羊の血の儀式の話からグっと盛り上がります。地味~な変化だけだった照明も大胆に暗く、赤くなって迫力満点。
 その盛り上がりに沿って、サド侯爵夫人・ルネ(新妻聖子)とルネの母親(剣幸)との激しい言葉の戦いが素晴らしかった!とにかく新妻さんの、あの血の色が見えて来そうな演技の高まりには目も心も奪われました。三島由紀夫の残酷だけど美しい日本語を、一語たりとも力を抜かず、きれいな声で伝えてくださいました。新妻さん、すごく賢い方なんじゃないかな。ミュージカルだけじゃなくて演劇にも出てもらいたいです。
 第3幕は、第2幕の盛り上がりを超えられなかったですね。ちょっぴりがっかりしましたが、最後だけムービングライトを使用して、青い空間が足元から白んでくる演出はかっこ良かったです。

 石井幹子さんの照明を初めて拝見したのですが、とっても上品ですね。舞台全体のライトアップというか、徹底的に静かに変化していって、ハっと気づいた時には世界全体が完全に変化している、という感じ。好きでした。

 肝心の物語についてあまり書きませんでしたが、この戯曲『サド侯爵夫人』は傑作だと思います。ご覧になったことのない方は、ぜひこの機会に。演じるのに高い技術が必要ですから、そんなに簡単には上演できないと思います。
 ただ、衣装については免疫が必要かも(笑)。「とにかくコシノジュンコだ」と思って観に行ってください。

 新妻聖子さん。サド侯爵夫人・ルネ役。光と闇が紙一重の“貞淑”を体当たりで表現してくださいました。めちゃかっこえー!でも闇、すなわち背徳の方が深く、説得力がありましたね。第2幕の母親とのケンカでものすごい色気を出してくださり、私は新妻さんにホレました(笑)。でも、第3幕でも同じ雰囲気になってしまったのは残念。
 剣幸さん。ルネの母親・モントルイユ夫人役。第3幕の笑いを誘う開き直りが面白く、16年の月日が経ったことがよく伝わってくる演技も良かったです。でも、ちょっと几帳面すぎかなぁと思いました。
 佐古真弓さん。ルネの妹・アンヌ役。残念ながら佐古さんが空気を壊すことが多かったような・・・。まだ緊張してらっしゃるのかしら。単に他の女優さんに追いついていないのかもしれません。
 椿真由美さん。背徳・悪徳のサン・フォン伯爵夫人。言葉が正確・丁寧で、しっかり計画通りに演じられている印象でした。観ていてとても安心です。でも“背徳”の面では、新妻さんの方がリアリティがありました。

三幕・婦人画報創刊100周年記念/三島由紀夫全戯曲上演プロジェクト第1作
【出演】ルネ(サド侯爵夫人)=新妻聖子 モントルイユ夫人(ルネの母親)=剣幸 アンヌ(ルネの妹)=佐古真弓 シミアーヌ男爵夫人=福井裕子 サン・フォン伯爵夫人=椿真由美 シャルロット=米山奈穂
原作=澁澤龍彦「サド侯爵の生涯」に拠る 作=三島由紀夫 演出=岸田良二 装置=秋山正 照明=石井幹子 衣装=コシノジュンコ ヘアアーティスト=伊藤五郎 顔の美術=鈴木寅二啓之 舞台監督=山本圭太 光と音のインスタレーション(照明・画像演出=石井幹子 音楽=三枝成彰) 演出助手=大野愛子 企画アドバイザー=和久田誠男 制作=宮前日出夫/西尾聡/寺田航 エグゼクティブプロデューサー=西尾榮男 主催=日本テレビ放送網(株) 特別協賛=(株)アシェット婦人画報社 制作協力=(株)ソーゴー東京 協力=(株)電通テック 企画・制作=三島由紀夫全戯曲上演プロジェクト
全席指定¥6,000
公式=http://mishimayukio-project.com/index.html
イープラス=http://mars.eplus.co.jp/ss/kougyou/syosai.asp?kc=013591&ks=01
ぴあ=http://www.pia.co.jp/cgi-bin/w/w.cgi?id=014324

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Posted by shinobu at 2005年11月07日 14:34 | TrackBack (2)