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しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年11月28日

ブラジル『おしっこのはなし』11/25-12/04サンモールスタジオ

 ブラジリィー・アン・山田さんが作・演出されるブラジルは私の大好きな企画ユニットです。所属俳優は辰巳智秋さんお一人だけ。今回の出演者の写真はこちらです。
 初のロングラン公演ということですが、fringeの東京小劇場観劇速報には早々とレビューがアップされて来ています。私は初日に拝見いたしましたが、たぶんステージを重ねるごとに面白くなっていく作品だと思います。

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 《あらすじ》
 美月(近藤美月)は余命3ヶ月と宣告されて入院している。見舞いに訪れるバイト先の友人(山中郁・吉田久代)、先輩(諌山幸治)、恋人(辰巳智秋)、そして母(松岡洋子)。美月に小説の執筆を依頼する編集者(ハセガワアユム)も現れた。
 美月の病室のひとつ上の階には、交通事故にあって記憶喪失になった男・中川(中川智明)が入院していて、そこにも見舞客(異儀田夏葉)が訪れる。
 《ここまで》

 主演女優の最初の言葉(一連のセリフ)を聞いた瞬間、「これはお稽古のしすぎかな」と思いました。言葉のひとつひとつに細かい演出がついていて、役者がそれを守ろうと必死になっているように見えたのです。「稽古のしすぎ」ってヘンな言い方ですよね。稽古はやらないよりもやる方がいいのに。でもそう感じたんですよね~。稽古、稽古、稽古としっかり続ける内に本番が来てしまい、役者が誰か(演じる人物)になって舞台上に居るということが、おろそかになっているような。

 ブラジルは前回の『偽装辻褄』において、計算された言葉と演技によって積み上げられる、緊張に満ちた二人芝居を発表されました。明らかにそれまで(2003年11月2004年2月9月12月)とは違う方向性を示されたばかりですから、この作品は新生ブラジル誕生までの過渡期にあたるのかもしれません。
 役者さんはとても達者な方が揃っていますので、今公演中にどんどん進化していくことと思います。

 ここからネタバレします。

 客席に2方向から対面式に挟まれた白いステージ。片側に病院のベッド、もう片側には病室の出入り口のドアがあります。5階の美月の部屋として始まりますが、暗転の後にベッドに中川が寝ていると、そこは6階の中川の部屋になります。中川が美月の部屋に来ることもあるので、観客は「今、この部屋はどこなんだろう?」と考えながら観ることになります。また、美月が本当に余命3ヶ月なのかどうか、中川が本当に記憶を無くしているのかどうかを最後まで謎のままひっぱりますから、それに集中しながら観続けるのがとても面白いです。

 美月と彼女が心を寄せる先輩(諌山幸治)とのオープニングの会話(美月の想像の中?)、記憶喪失の中川とその主治医(そして妻)である女医(黒岩三佳)の終幕間際の会話が良かったです。言葉もしっかり選ばれているし、二人の間に戦いがありました。
 武藤心平さん(クロム舎)がブラジルの見所でもある“舞台で何が起こるかわからない”ハプニング性を担っていらっしゃいました。いわゆる飛びキャラってことで目立ってらっしゃいましたし、役割もきちんと果たしていらっしゃいました。
 この緊張に満ちた二人芝居とハプニング性がせめぎ合って爆発するのが観たいですね。

 松岡洋子さん(風琴工房)。美月の義理の母役。風琴工房でドラマティックな演技を拝見してきましたが、今回はめちゃ面白ろキャラ!!コロコロ変わる感情を、深みをなくさずにきちんと演じてくださいました。時々見せてくれるだらしない笑顔がセクシー。
 ハセガワアユムさん(AAA)。美月に官能小説を書かせようとする編集者役。ひょうひょうとしていて、だけど熱い時は本気だから怖さが引き立ちました。

出演=辰巳智秋/近藤美月(bird's-eye view)/諌山幸治/吉田久代(ククルカン)/ハセガワアユム(AAA)/葛木英(メタリック農家)/山中郁(bird's-eye view)/黒岩三佳(あひるなんちゃら)/中川智明/武藤心平(クロム舎)/異儀田夏葉/友松栄/松岡洋子(風琴工房)
作・演出=ブラジリィー・アン・山田 照明=シバタユキエ 音響=佐藤春平(SoundCube) 宣伝美術=川本裕之 写真=427FOTO 制作補=池田智哉(ギリギリエリンギ) 堀島圭介(VARNA) 制作=恒川稔英・ブラジル事務局
前売2600円 当日2800円 その他割引あり
ブラジル=http://www.medianetjapan.com/10/drama_art/brazil/

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Posted by shinobu at 2005年11月28日 16:26 | TrackBack (1)