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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年03月18日

パルコ+サードステージPresents『お父さんの恋』03/10-27パルコ劇場

 サードステージshow caseシリーズの中谷まゆみさん(脚本)&板垣恭一さん(演出)コンビがパルコ劇場に進出。NHK大河ドラマ『新撰組!』の山南敬助役で人気爆発の堺雅人さんが出演されています。堺さんは『ビューティフル・サンデイ(初演)』に出演されていましたので、中谷&板垣コンビの作品には2度目の参加ですね。
 →公開舞台稽古(舞台写真あり)

 幕が開く時の演出がとてもよかったです。まず優しいピアノの曲が流れます。パルコ劇場の赤い緞帳に柔らかい照明が当たり、しばらく音楽の時間。そしてゆっくりと音楽にあわせて暗転して、開演。show caseシリーズの温かみを思い出しましたね。渋谷の喧騒からFamily Taleの世界へと丁寧に連れて行ってくれました。

 舞台は真新しい一軒家の広々としたリビング。本物の介護ベッドがどかーんと陣取っている。初老の男(前田吟)がそのベッドに横になっている。どうやら寝たきりらしい。若くて可愛らしい介護ヘルパーの女の子(星野真里)が、彼をかいがいしく世話している。

 これだけでも~私、ダメでした。涙がぼろぼろ、ぼろぼろ・・・。介護ベッド、流動食の点滴、パジャマの着替え、車イスへの移動・・・。家族介護経験者の私にはリアル過ぎました。全然笑えない。楽しむスタンスになれない。
 老人介護は実質的に高齢化社会となった日本において非常に重大でめちゃくちゃ身近なトピックです。そして、とてもつらいことです。介護をする家族を真正面から描く脚本に、まず敬意を表したいと思いました(あらすじはこちら)。

 前半が1時間20分、休憩を挟んで後半が1時間10分というかなり長いお芝居です。でも長さは全然感じませんでした。話がポンポン進みますし、適度な刺激と笑いもあり、観客は何も考えずに舞台で起こるリアルで深刻な出来事をただ眺めているだけでも、充分な充実感を得られます。自分なりに共感したり、思わす涙してしまったりもできます。
 テレビのドラマに似ている気がしました。中谷さんは実際に「ぽっかぽか」や「ウォーターボーイズ」などの人気ドラマを書かれた脚本家ですから、そういうツボをしっかり押さえた作品を書かれているのでしょう。

 設定や登場人物のバックグラウンドが非常にリアルなのに対し、舞台で起こる出来事がうまく行き過ぎだったため、私には全体のリアリティが感じづらかったです。遠くから物語を眺める位置のまま、終演を迎えてしまいました。客席全体では鼻をすする音がいくつも聞こえていましたけどね、暗転中は特に。
 暗転といえば、私には最初の暗転がツボでした。堺さんが介護ヘルパーを見て「誰?」って言った直後の暗転のタイミングが良かった。思えばあの暗転までが面白かったのかも。

 実力の有る舞台俳優が常に揃っていた中谷&板垣コンビのshow caseシリーズのファンとしては、「演技がおぼつかない役者さんがやれる役じゃないよなぁ」と冷めた目で見るしかないところがあり、それは単純に残念でした。プロデュース公演だから仕方ないのかも。

 あと、人気スターが出演する舞台は平日マチネに行くもんじゃないな~と思いました(苦笑)。お行儀の悪いお客様が多く、上演中におしゃべりするし、飴のつつみ紙をカチャカチャ鳴らし続けるし、カーテンコールで「おつかれさまーっ!!」と叫ぶ女性客までいました。「お疲れ様」て、あなたスタッフじゃないんだから(笑)。もしかして毎ステージ通っているような堺正人さんファンかしら??

《東京、福岡、山口、長野、新潟、仙台、名古屋、大阪》
作:中谷まゆみ 演出:板垣恭一
出演:堺雅人 星野真里 七瀬なつみ 菊池麻衣子 池田成志 前田吟
音楽:北村紀子 美術:小松信雄 照明:倉本泰史 音響:堀江潤 衣裳:森永幸徳 ヘアメイク:西川直子 インテリア:采澤聰 演出助手:松倉良子 舞台監督:瀬崎将孝 宣伝美術:鈴木成一デザイン室 宣伝写真:平間至 プロデューサー:佐藤玄+中嶋隆裕 制作:高石由紀子+高田雅士 制作補:森田友規子 企画・製作:パルコ+サードステージ
公式サイト:http://www.parco-play.com/web/play/otousannokoi/
堺雅人インタビュー(ぴあ):http://t.pia.co.jp/play-p/otosan/otosan.jsp
堺雅人インタビュー(イープラス):http://eee.eplus.co.jp/s/family_tale/

Posted by shinobu at 00:27 | TrackBack