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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年07月08日

雷電『雷電披露宴』07/06-13駅前劇場

 雷電は「隣り合った三つの部屋で、同時刻におこった出来事を描く三話構成(=ザッピングシステム)」という独自のスタイルで公演を行う演劇ユニットです。演出はプラチナペーパーズの堤泰之さん。脚本は上演順に、桜丘社中の塩塚晃平さん、散歩道楽の太田善也さん、KAKUTAの桑原裕子さんです。

 第一回公演『雷電支度部屋』の舞台は舞台裏(楽屋)でしたが、今回はド田舎のイケてない結婚式場の控え室でした。

 【第一話】来賓控え室で噂の的になるのは新郎の兄の満夫(塩塚晃平)。みんな満夫から金を借りているらしい。村の様子(常識)について語られる。
 【第二話】新郎(横山真二)は3人兄弟の末っ子。新郎の性格や3兄弟のおいたちが、ある人物によって明らかにされる。
 【第三話】新婦(中村早千水)は4人姉妹の三女。マリッジブルー気味になっているが、誰も気にかけてくれない。性格の全然違う姉妹と気の弱い父親のドタバタ。

 芸達者な役者さんが揃っているけれど、なんとな~く間が悪くて笑えなかったり、面白いキャラクターを作っているんだけど、周りとうまく溶け込めずに浮いてたり、ストーリーの大切な一言を含むセリフなのに、早口で聞こえなかったり。「こんなはずじゃないんだけど・・・」という空気が流れているように感じました。公演の後半になってきたら面白くなるかもしれませんね。

 お話自体はほんわかしてそうでいて、実はかなりブラックな要素が多いです。私はあまり楽しめなかったので、個々の役者さんの演技や持ち味を楽しむ方向に気持ちを切り替えました。

 【第一話】来賓控え室(脚本=塩塚晃平) 
 
 全体的に「うまく運んでいない」状態だったのですが、司会役の若狭勝也さん(KAKUTA)が出てきて救われました。
 「ボールなしのボーリングをする」のは明らかに無理なことなので、それを受け入れさせるパワーとか勢いが欲しかったです。

 【第二話】新郎控え室(脚本=太田善也) 

 黒づくめの服の女役の高山奈央子さんと、市長の息子役の川本裕之さん(お二人ともKAKUTAの役者さん)がすっごく面白かったです。次男の満夫役の塩塚晃平さん(桜丘社中)も柔軟で良かった。
 謎のおばあさん役の麻生美代子さんは麻生さんご自身がすごく魅力的で見とれました。声もステキ。

 【第三話】新婦控え室(脚本=桑原裕子) 

 ウェディングドレス姿の新婦役の中村早千水さん(bird's-eye view)が美しかった!そして新婦の昔の恋人役の成清正紀さん(KAKUTA)がエッチで、二人のラブシーンが良かったな~。ビバ!美男美女。最後に成清さんが立ち去る時の、「結婚おめでとう」と言うまでの長い間がすごくセクシーでした。
 次女の夫で犬のように扱われている越後役の本間剛さん。変わり身の早さとやらし~演技に苦笑させてもらいました。
 新婦の父親役の鈴置洋孝さんがじっくりと長いセリフを語られましたが、やっぱりこう、NHKの朝のドラマみたいっていうか、私は苦手ですね。

出演=【第一話】大谷典之/太田善也/川原万季/照屋実/前田こうしん/若狭勝也/和田太美夫 【第二話】麻生美代子/川原安紀子/川本裕之/塩塚晃平/高山奈央子/田中完/谷中田善規/横山真二 【第三話】臼井静/四條久美子/鈴置洋孝/中村早千水/成清正紀/原扶貴子/藤本樹子/本間剛/弓納持京子
演出=堤泰之(プラチナペーパーズ) 脚本=【第一話】塩塚晃平(桜丘社中) 【第二話】太田善也(散歩道楽) 【第三話】桑原裕子(KAKUTA)  演出助手=田村友佳・松田昌樹 照明=久賀和浩 音響=高塩顕 美術=田中敏恵 舞台監督=横尾友広 衣装=渡辺まり・ワタナベユカ・野澤爽子 宣伝美術=川本裕之 スチール撮影=相川博昭 表紙モデル=臼井静 WEB制作=ngvaiiton.com 制作=五十嵐正至+制作集団Quarter Note[茂木尚美 杉山葉 鵜殿有正] 票券=藤野和美[オフィスREN] 企画・製作=成清正紀 後援=TBS RADIO & COMMUNICATIONS
前売り開始:5/30(月) 指定席/前売・当日共¥3,500 自由席/前売・当日共¥3,000 計10ステージ
雷電:http://www.raidenet.com

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Posted by shinobu at 23:34 | TrackBack

燐光群『上演されなかった『三人姉妹』』07/06-17紀伊國屋ホール

 燐光群の坂手洋二さんの新作です。紀伊國屋ホールの劇場内全部が舞台の、濃ゆ~い2時間10分でした。
 チェーホフの『三人姉妹』を知っていれば面白み倍増!ご存知ない方は戯曲を読んでから観に行かれると良いと思います(知らないと楽しめない可能性もあります)。

 最初からかなりブっ飛んだ(奇抜な)演出なので、正直なところとっつきにくかったです。でも、セリフのシャワーの中に身を投じ、集中して言葉を身体の中に入れるようにしたら、意外に早くその世界に入って行けました。
 強い主張を含んだ複雑な構造の脚本です。誰にでもお薦めできる手軽なエンタテインメントではありません。でも、やっぱり坂手さんの作品は見逃せないと思いました。

 客席のほぼ半分も舞台として使われており、通路も演技スペースになります。あぁ何から書いてもネタバレに・・・(冷汗)。でも読んでから観に行かれても、演劇ならではのディープな世界を味わえることには変わりありません。

 ≪あらすじ≫
 『上演されなかった『三人姉妹』』という戯曲を上演中の劇場が、テロリストに占拠された。彼等の要求は、彼等の母国からこの国の軍隊の撤退させること。それが受け入れられなければ、劇場の観客を全員射殺して自分達も自殺するという。
 それでも舞台に居た女優3人は演技を止めようとしない。劇場関係者やテロリスト、観客をも巻き込んで、『三人姉妹』と極限状態の劇場の現実が入り混じっていく。

 お芝居がはじまる前に、途中で非常ベルが鳴ることや武装組織に占拠されるエピソードがあることなど、この作品の構造と流れがきちんと説明されます。劇場の外の世界と、劇中(劇場内)の現実と、『上演されなかった『三人姉妹』』と、『三人姉妹』原作という多重構造を、頭をフル回転させながら楽しむ、大人向けの作品だと思います。

 ここからネタバレします。

 『三人姉妹』のストーリーを最初から最後まできちんと辿っていきますので、テロリストに拘束されている“現実”と『三人姉妹』の内容とが重ねられていく過程で、“現実”にどうしてもムリが出てきます。それを「上手いこと組み込んであるな~」とすんなり見届けられるかどうかは人それぞれだと思います。私は「そこまでしなくてもいいのになぁ」と思いました(例えば、イリーナを取り合う軍人2人の決闘など)。

 最後は、機動隊が劇場に突入してテロリストは全員射殺され、観客も100人以上が死ぬという結果になります。観客の死因のほとんどが毒ガスによるものだとも。ロシア学校人質事件(2004年9月)を思い出しました。イラク戦争を直接想起させる場面も多数。

 ≪言及ブログ≫
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≪東京、神戸≫
出演=立石凉子/神野三鈴/中山マリ/川中健次郎/鴨川てんし/猪熊恒和/大西孝洋/下総源太朗/JOHN OGLEVEE/江口敦子/樋尾麻衣子/宇賀神範子/内海常葉/向井孝成/裴優宇/小金井篤/杉山英之/久保島隆/桐畑理佳/工藤清美/塚田菜津子
作・演出=坂手洋二 照明=竹林功(龍前正夫舞台照明研究所) 音響=島猛(ステージオフィス) 舞台監督=森下紀彦 美術=じょん万次郎 衣裳=宮本宣子 演出助手=吉田智久・清水弥生 文芸助手=久保志乃ぶ・宮島千栄・圓岡めぐみ 写真=酒井文彦 宣伝意匠=高崎勝也 制作=古元道広・近藤順子
一般発売日 5/29(日) 前売券¥4,000 当日券¥4,300 ほか各種割引あり 休演日=7/12(火)計12ステージ 
劇団内:http://www.alles.or.jp/~rinkogun/sanninshimai.html

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Posted by shinobu at 16:27 | TrackBack